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OncoLog 2016年3月号◆埋め込み型心臓センサー

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OncoLog 2016年3月号◆埋め込み型心臓センサー

MDアンダーソン OncoLog 2016年3月号(Volume 61 / Issue 3)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

埋め込み型心臓センサー

心臓センサーが、がんサバイバーと化学療法中の患者に有用

がんサバイバーは、がん による以上に心疾患で死亡する可能性が高いため、がん治療中および治療後の心臓障害を綿密にモニタリングする必要がある。新たな埋め込み型心臓センサーにより心臓の継続的なモニタリングが可能である。

 

心臓モニタリングの必要性は、化学療法中のがん患者の推定心不全発症率により確認されており、その推定値は使用した薬剤により3~50%である。また、心疾患リスクは治療終了後も長く続く。「がんサバイバーのケアでは、以前受けた化学療法が原因の心房細動や心不全に対する脆弱性を認識し、これらの心臓障害をモニタリングすることが重要です」とテキサス大学MDアンダーソンがんセンター心臓学准教授Jean-Bernard Durand医師は述べた。

 

治療関連心臓障害

化学療法および放射線治療により、重度の高血圧、心筋症、虚血、心房細動、うっ血性心不全などの心臓障害のリスクが増大する可能性がある。慢性心毒性は治療後数週間以内のものから最長20年後まで起こることがある。

 

全身投与薬剤による心臓の副作用はさまざまに異なっている。ドキソルビシン(および他のアントラサイクリン系薬剤)などの細胞傷害性化学療法薬剤は累積的に心筋を弱める。トラスツズマブなどの生物学的薬剤も治療中に心筋を弱めることがあるが、トラスツズマブ関連心筋症は内科的治療で回復することが多い。

 

タキサン系薬剤やその他の化学療法薬剤は、一部の患者で治療中に不整脈が発現することがある。また、血管新生抑制剤では、血圧が急上昇し、血栓形成および心不全のリスクが増大することがある。放射線治療では、心臓が偶発的に放射線に曝露すると、長期にわたって影響を及ぼすことがある。これらの長期的な影響には、冠動脈疾患、心臓弁および心臓伝導系の損傷、心筋の硬直、炎症などがある。

 

埋め込み型センサー

CardioMEMSシステムやReveal LINQシステムなどの埋め込み型心臓センサーによって、医師が患者を常時遠隔からモニタリングし、心臓事象が重症になる前に検出できるような診断情報の提供が可能である。

 

不整脈を検出し、原因不明の失神をモニタリングするReveal LINQシステムは、外来で胸部の皮膚直下に埋め込まれ、その所要時間は5分未満である。患者は、心臓のデータを収集し、それを中央データベースと埋め込み担当医師のスマートフォンに直接送信するベッドサイド機器も受け取る。患者が心臓の症状に気付いたら、ベッドサイド機器のボタンを押して、データベースに即座にデータを送信できる。医師はデータダウンロードの頻度、データベースセンサーによる医師と患者への通知が必要な不整脈の範囲などのパラメータを設定し、機器をプログラミングできる。

 

Durand医師はReveal LINQシステムを用いて世界中の患者をモニタリングしている。ドバイの患者が動悸を起こしたときは、Durand医師は患者に連絡し、症状について相談することができた。患者はβ遮断薬を服用し、救急科を受診するために移動せずにすんだ。「たとえ地球の反対側であっても、患者を常時モニタリングしてケアしています。私の患者は心臓が常にモニタリングされていて、私がいつどんな時 にもそこにいるとわかり、安心していられます」と Durand医師は述べた。

 

また、医師はこのシステムによって、患者の感じ方と心臓事象を記録するデータを関連付けて捉えることができる。「心臓に異常がみられ、データベースサービスから連絡があると患者は驚くことが多いのです」とDurand医師は説明した。埋め込み可能な心臓センサーでは、患者は心拍数の上昇を必ずしも認識していないことがわかる。

 

Reveal LINQデバイスは最大3年間データを収集できるが、大半の患者では心臓の状態はがん治療後60日間のモニタリングによって診断できるとDurand医師は述べた。「デバイスはセーフティネットのようなものであるので、ほとんどの患者は電池が切れるまでデバイスを使用し続けたいのです」とDurand医師は言う。

 

Reveal LINQデバイスとは異なり、CardioMEMSシステムは電池を使用せず、生涯にわたって動脈圧と心拍数のモニタリングが可能である。CardioMEMSデバイスはペーパークリップほどの大きさで、右心カテーテル術中に肺動脈に永久に埋め込まれる。デバイスは肺動脈圧をモニタリングし、データを無線で外部電子システムに送信し、医師に直接伝達される。「患者を携帯電話上でモニタリングできます。患者の動脈圧が10%上昇したことに気付いたことも一度ありました。患者に電話し、利尿剤を服用するよう指示しました。問題を迅速に察知し、救急科受診を回避しました」とDurand医師は語った。

 

埋め込み型心臓モニタリングデバイスは従来の外部モニタリングデバイスと比べていくつかの利点がある。埋め込み型デバイスは何年間も継続的にデータを記録するが、一方、外部デバイスは短期的な(1~30日間)データ収集に用いられる。埋め込み型デバイスでは、患者が記録用パッドやワイヤーに煩わされない。また、埋め込み型デバイスは医師が心臓事象の発現前、発現中、発現後のデータを分析し、経時的にパターン変化を追跡することが可能である。

 

進行中の研究

Durand医師と研究チームは現在、がん患者用の埋め込み型心モニタリングデバイスに関する2件の研究を実施している。後ろ向き研究の中で研究チームは、埋め込み型心モニタリングデバイスの適用となる患者で、医師からデバイス使用の可能性に関する説明を受けたことのある人数を調査している。

 

間もなく登録開始を行う臨床試験の中で研究チームは、Reveal LINQデバイスを使用することで心房細動を有するがん患者に対し化学療法の継続が可能となるかについて研究を行う予定である。もしデバイスが早期に潜在的な心疾患を検出して疾患に対処すれば、化学療法の一時中断という現在の標準的な対応を行うことなく、救命治療の継続が可能になると思われる。

 

Durand医師は、原因が不明で失神や動悸の発生、もしくは心不全の徴候のため入院を繰り返す症状を有するがん患者やがんサバイバーは、心疾患の診断および治療法の一環として心モニタリングデバイスの適用となるであろうと語った。同医師は「こうしたデバイスを使うことで患者の化学療法が継続できるようになり、またがんサバイバーが緊急治療室に搬送される事態を回避することが可能となります。入院すると血栓や肺炎、薬剤耐性菌による感染症の発生に対してさらに脆弱になるため、これは重要なことなのです」と語った。

 

2種類の埋め込み型心臓センサーで医師は遠隔でリアルタイムでの患者のモニタリングが可能になる。不整脈を検出するReveal LINQ(上)、および心拍数および動脈圧をモニタリングするCardioMEMS。画像はJean-Bernard Durand医師提供。

 

MDアンダーソンがんセンターは、がん患者のための心臓用デバイスのプログラムを完全に統合した、世界で唯一のがんセンターである。研究チームにはDurand医師の他に、世界でも数少ない専門の腫瘍電気生理学者の1人であるKaveh Karimzad医師(心臓学准教授)、埋め込み型デバイス使用中の患者に対する画像診断および放射線治療の研究を行っているMarc Rozner医学博士(麻酔・周術期学および心臓学教授)、および心肺センター所属の心デバイス専門家Darla Labasse認定看護師が在籍している。

 

For more information, contact Dr. Jean-Bernard Durand at 713-792-6239.

 

【画像キャプション訳】
2種類の埋め込み型心臓センサーで医師は遠隔でリアルタイムでの患者のモニタリングが可能になる。
不整脈を検出するReveal LINQ(上)、および心拍数および動脈圧をモニタリングするCardioMEMS。
画像はJean-Bernard Durand医師提供。

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳吉田加奈子、渋谷武道

監修辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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