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OncoLog 2016年2月号◆頭頸部がん患者のための嚥下療法

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OncoLog 2016年2月号◆頭頸部がん患者のための嚥下療法

MDアンダーソン OncoLog 2016年2月号(Volume 61 / Issue 2)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

頭頸部がん患者のための嚥下療法

嚥下療法でがん治療中および治療後の機能を改善

頭頸部がん患者は、放射線治療、手術、またはがんそのものにより嚥下機能が失われ、健康状態不良や生活の質(QOL)の低下につながることがある。テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでは、言語聴覚士の指導による個別化嚥下療法プログラムで、治療中および治療後に患者が嚥下機能を維持または回復できるように支援を行っている。

 

頭頸部がん治療関連の嚥下障害患者での嚥下機能の綿密な評価および嚥下機能を維持または回復させるために個別化訓練法を使用することが最近の研究で裏づけられている。これらの研究の一部で放射線治療の影響を評価した。「放射線関連の嚥下障害は、主に食道の狭窄の問題であると誤解されていることが多いです」と頭頸部外科准教授で言語病理学・聴覚学研究科副所長のKate Hutcheson博士は述べた。「しかし、何千人もの患者のメタアナリシスで狭窄が発現するのは、頭頸部がんのために放射線治療を受けた患者の10%未満であることが示されています。したがって、必ずしも食道拡張が嚥下障害の解決方法になるというわけではなく、患者の10人中9人には嚥下困難の原因を確定するためにさらに完全な精密検査が必要です」。

 

頭頸部がん患者の嚥下機能についてのもう一つの研究では、電気刺激療法の幅広い適用に対する疑問が提起された。実際、最近発表された多施設ランダム化臨床試験結果では、治療後に嚥下障害のある頭頸部がん患者の嚥下訓練に神経筋電気刺激治療を追加してもベネフィットはないことが示された。

 

MDアンダーソンでは、個別化嚥下療法プログラムが急速に進展し、頭頸部がん患者の嚥下機能およびQOLを改善している。これらのプログラムは通常、腫瘍の手術を受ける患者はその直後から、放射線治療を受ける患者では予防策として治療前から開始する。

 

予防療法

「予防的嚥下療法は頭頸部に放射線治療を受ける患者にとって最良の方法であると多くのエビデンスで示唆されています」とHutcheson博士は述べた。「MDアンダーソンでの集学的精査の後、頭部または頸部に放射線治療を受ける予定の患者は、診断時に嚥下に問題がなくても、積極的な予防的嚥下療法プログラムに登録されます」。

 

予防的嚥下療法プログラムは、通常ビデオX線透視検査 (修正バリウム嚥下検査ともいう)などの治療前評価から始まる。「ビデオX線透視検査によって嚥下の物理的及び機能的パラメータ、つまり、患者がどのくらい安全で効率的に口腔および咽頭で飲食物を通過させているかを知ることができます」とHutcheson博士は述べた。「ベースライン時の評価で潜在的な嚥下困難が明らかになることが非常に多いです。これを知ることで、放射線治療中にどのようなものをどうやって摂取するか患者に具体的な指示をし、誤嚥して肺に吸い込まれ、肺炎を引き起こすような食物を嚥下するのを避けることができます」。

 

予防的嚥下療法プログラムに登録している患者は放射線治療開始前に嚥下訓練にも参加する。この訓練は言語聴覚士が実施しており、彼らの多くは、米国言語聴覚士協会による嚥下障害における認定を受けている。

 

治療標的外の放射線を受ける筋活動を維持するため、患者は個別化された咽頭・喉頭の訓練を受ける。1日のスケジュールには6~8回の訓練が含まれ、所要時間は15分程度である。頸部の両側に放射線治療を受ける患者は放射線関連の嚥下障害のリスクが高いため、予防的嚥下療法が特に重要であるとHutcheson博士は述べた。

 

この訓練法は放射線治療中に患者が行う2つのタスクのうちの1つであり、もう1つは規則正しい食事である。「大半の患者は頭頸部への放射線治療中は、食物が不味く感じられたり飲み込むのに苦痛を伴うため、固形物を摂取しなくなります。しかし、正常な筋機能をなるべく維持するためになんとか食事を続けるよう患者に促します」とHutcheson博士は説明した。

 

頭頸部への放射線治療中に、50%~60%の患者は栄養チューブの留置を必要とするが、その結果筋肉系を使わないでいると、嚥下機能がさらに悪化することがある。しかし、患者の多くは個別化支持療法を受けることで栄養チューブを回避できる。

 

「放射線治療中に嚥下系を使い続ける患者は、治療後に意義のある嚥下能力を回復する可能性が高くなることがわかっています。われわれは『 使わなければ失われる』と考えています」とHutcheson博士は述べた。

 

予防的嚥下療法プログラムに参加する患者は、放射線治療中と治療終了時に再び言語聴覚士と訓練を行い、必要に応じて追加の訓練を受ける。患者は自宅での訓練法を放射線治療終了後半年以上続けるよう勧められる。「治療後の訓練期間および頻度については十分なエビデンスがありません。しかし、もし自分なら、これまでの知見に基づいて、おそらく週に1回か2回生涯にわたり維持療法を続けるでしょう、と患者に伝えています」とHutcheson博士は述べた。

 

持続性嚥下障害の集中治療

頭頸部がんに対する外科手術または放射線治療の実施後、自宅での訓練法を実践した患者の大半は支障のないレベルまで嚥下能力が回復する。しかし、15%~20%の患者は嚥下困難が持続する。持続的嚥下困難は臨床上の大きな問題で、自宅での訓練は効果がないことが多い。

 

Hutcheson博士らは、MDアンダーソンでがん治療を行った患者か否かを問わず、持続性嚥下障害の患者のために「ブートキャンプ嚥下療法」と呼ぶプログラムを開発した。これは患者が言語聴覚士と約3週間毎日取り組む集中的プログラムだ。

 

毎日のセッションにおいて、言語聴覚士は漸増抵抗訓練と併せて機能的な嚥下課題を課し、患者が嚥下訓練の強度を高められるようにする。患者の回復度合いは表面筋電計やマノメトリー(食道内圧測定法)などのバイオフィードバックによりモニタリング可能である。食塊が主体の訓練は、水で食物を流し込むといったような「松葉杖」に相当するものを食習慣から取り去るのに役立ち、次第に難しい食物を食べることができるようになる。

 

Hutcheson博士によると、嚥下療法には数多くの種類があるため、特定の患者に対して最良の方法を選択するのは言語聴覚士にとっても難しいという。「MDアンダーソンではさまざまな治療選択肢に取り組むためのアルゴリズムがあり、各個人の問題にぴったり合うと思われる治療法を選択します」とHutcheson博士は述べた。

 

ブートキャンプ嚥下療法プログラムは目覚ましい結果を残している。患者の約70%で機能状態の改善が見られている。「この集中的プログラムはMDアンダーソン独自のものです」とHutcheson博士は話す。「非常に重篤な嚥下障害や長く続いている嚥下障害の患者でも成功を収めています」。

 

生活の質を改善

MDアンダーソンの研究者らは現在の嚥下療法プログラムの奏効率に満足することなく、現時点で治療法がない嚥下の問題への取り組みを続けている。「われわれにはまだ慢性誤嚥に対する治療法が必要です。頭頸部がんサバイバーの慢性誤嚥を回復させる実績ある治療法がまだありません」とHutcheson博士は話している。また、MDアンダーソンの言語病理学・聴覚学部門が助成金を受けた研究で、頭頸部がん患者の呼息筋を強化する訓練に関する研究を行っていると付け加えた。このような訓練法は、パーキンソン病患者など神経変性性の嚥下障害患者の誤嚥減少に期待が持てる結果が得られており、Hutcheson博士は頭頸部がん患者にも同様に役立つだろうと期待しているという。

 

「嚥下は生活の質にとって大きな問題です。嚥下機能の改善には早期かつ個別化した治療が鍵になります」とHutcheson博士は述べた。「MDアンダーソンであれ、それ以外の施設であれ、嚥下障害に特化した言語聴覚士こそが、患者の転帰を最大限よくすることができます」。

 

詳細についてはKate Hutcheson医師まで(713-792-6513)。嚥下治療について詳しく知りたい方は、MDアンダーソンの頭頸部サバイバーシップクリニック、もしくは米国言語聴覚士協会の嚥下・嚥下障害部門まで。

 

—– Bryan Tutt

 

画像はこちら】
キャプション訳: 舌基底部における局所進行がんと新規診断された患者の治療前に行われたビデオX線透視検査の静止画像。嚥下のピーク時においては完全喉頭閉鎖により適切に気道が保護される(左)が、腫瘍による嚥下効率低下のため嚥下後の咽頭残留をともなっている(右)。

 

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吉田加奈子/橋本 仁 訳
榎本  裕(泌尿器科/三井記念病院)監修
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原文

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳吉田加奈子、橋本 仁 

監修榎本  裕(泌尿器科/三井記念病院)

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