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OncoLog 2015年10月号◆リンチ症候群の患者の化学予防薬にナプロキセンが有望な可能性

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OncoLog 2015年10月号◆リンチ症候群の患者の化学予防薬にナプロキセンが有望な可能性

MDアンダーソン OncoLog 2015年10月号(Volume 60 / Number10)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

リンチ症候群の患者の化学予防薬にナプロキセンが有望な可能性

リンチ症候群を有する人は、大腸がんを発症するリスクが高い。しかし研究者らは、市販薬を毎日服用することでリスクを下げる可能性があると考えている。

 

リンチ症候群に対する化学予防薬

大腸がんの5%程度までは、DNAミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異が認められるリンチ症候群が原因で発生する。リンチ症候群だと大腸がんになるリスクが5%から、50%-80%まで高まる。研究者らは、高用量のアスピリンを毎日服用することでリンチ症候群に関連するがんリスクが低減することを発見した。しかし長期的な高用量のアスピリン服用は、消化管出血などの問題を生じる可能性があることから、医師はこうした治療を積極的に進めない場合もある。

 

リンチ症候群のマウス・モデルで、ナプロキセンがアスピリンよりも効果的な化学予防薬剤であることが示され、高用量アスピリンにかわる薬剤として使える可能性がでてきた。化学予防薬として、ナプロキセンは比較的低用量でも効果をあらわした。こうした結果に基づき、米国国立がん研究所は、リンチ症候群の人を対象とするナプロキセンの第1相二重盲検プラセボ対照試験の実施を、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの臨床がん予防部門助教授のEduardo Vilar Sanchez医学博士に働きかけた。同医師と研究チームの研究者らは、本試験でナプロキセンの安全性および、ナプロキセンが正常な大腸粘膜に及ぼす分子の変化を調べる。

 

臨床試験

進行中の本臨床試験において、試験参加者は1日あたり440mgあるいは220mgのナプロキセンか、プラセボのいずれかを服用する。ナプロキセンの用量は、市販の推奨量と同等である(220mg錠剤を1錠あるいは2錠)。

 

参加者は治療前および、治療6カ月後に大腸内視鏡検査を受ける。研究者は参加者の血液、尿、組織サンプルからプロスタグランジンE2レベルおよびその他のタンパク質を測定し、ナプロキセンの長期服用が組織やメッセンジャーRNA、マイクロRNAシグネチャーに与える影響を見きわめる。また組織サンプルを使い、ナプロキセンの化学予防薬が最も有効な対象者の特定に役立つバイオマーカーを分析する。さらに潰瘍、心臓発作、腎障害など副作用の可能性についても調べる。

 

本試験はMDアンダーソンをはじめとする施設から30人の患者を集めた。これまでのところナプロキセンの認容性は良く、安全性に関する予備結果は7月のESMO世界消化器がん学会で報告された。本試験は二盲検試験であるため、有効性に関する結果は試験終了後に発表となる。

 

「同学会では、稀な遺伝子変異を持つ健康な試験参加者を臨床試験にリクルートする実現可能性についても示すことができました」と、Vilar Sanchez医師は述べた。「以前は、まれな遺伝子変異を持つ人を対象とする臨床試験を実施、完了することは困難でした」。MDアンダーソンではリンチ症候群を持つ人に、年一度の結腸内視鏡検査で、本試験への参加を呼びかけることで募集に成功した。「本試験はリンチ症候群を持つ人に、スクリーニングや大腸内視鏡検査を超えて、積極的にがんを予防する研究に参加する機会を与えました」と、同医師は述べた。

 

本試験は、60人の参加者を得ることを目標に、現在も患者の登録を続けている。第1相試験は2016年12月に終了する。Vilar Sanchez医師は、がん予防を目的としたナプロキセンの安全用量を調べるための第2相試験を2017年から実施する計画である。

 

For more information, contact Dr. Eduardo Vilar Sanchez at 713-745-4929. To learn more about the ongoing clinical trial of naproxen for chemoprevention in people with Lynch syndrome, visit www.clinicaltrials.org and select study No. 2013-0698.

リンチ症候群の遺伝子カウンセリングとケア

リンチ症候群は、DNAミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6、またはPMS2のいずれか)の生殖細胞系列変異が認められる常染色体優性疾患である。このため、リンチ症候群の患者の子供は、50%の割合で同じ変異を受け継ぐ。
ほとんどのガイドラインで、家族に50歳以下で大腸がんまたは子宮体がんを発症した人が一人か二人いる場合は遺伝子カウンセリングを受け、遺伝子検査を考慮するよう推奨している。さらにEGAPP(診療・予防における遺伝学を応用した評価)の作業部会は、家族がリスクの可能性を知ることができるよう、大腸がん診断を受けたすべての患者がリンチ症候群のスクリーニングを受けることを勧めている。
リンチ症候群の患者とその家族には、特別なケアが必要であるとVilar Sanchez医師は強調する。リンチ症候群の患者は、毎年、大腸がんやその他の発症リスクが高いがんの検査をすべきだと話している。
リンチ症候群およびその他の遺伝的な高発がん性症候群についての詳細は、http://bit.ly/1hUJ0bmを参照のこと。

 

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳片瀬ケイ

監修高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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