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多くの肺がん検体を用いたBRAF遺伝子の網羅的プロファイリング

更新日

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多くの肺がん検体を用いたBRAF遺伝子の網羅的プロファイリング

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) プレスリリース

 

BRAF変異は3タイプの肺がんで生じるのに対し、小細胞肺がんでは発生しない

日時:2015年9月28日
トピック:トランスレーショナル研究/肺がんおよび他の胸部がん

3000人を超える肺がん治療継続患者の臨床診療過程で採取した腫瘍検体を用いた大規模ゲノム診断によって、BRAF変異は、肺腺がん(LADCA)および扁平上皮がん以外の非小細胞肺がん(NSCLC)に生じるが、小細胞肺がん(SCLC)には発生せず、また扁平上皮肺がん(SCC)ではきわめてまれにしか発生しないことが明らかになった。

 

オーストリアのウィーンで開催された欧州がん会議(ECC2015、会期:2015年9月25~29日)で報告された結果から、肺がんのタイプ別に、存在するBRAF遺伝子変異の種類が明らかになった。BRAF遺伝子変異がどの種類かによって、治療に対する反応性が変わる可能性がある。

 

検出されたBRAF遺伝子の発がん性変異は、肺腺がん患者の検体では6.1%、非扁平NSCLC検体では3.2%、SCC検体では0.8%であった。サンプルサイズが最小であったSCLC患者の検体201例からはBRAF遺伝子変異は検出されなかった。

 

Clinical Development, Foundation Medicine, Inc.社(所在地:米国ケンブリッジ)のSiraj Ali医学博士は、2015年9月28日の「肺がん部会」一般演題で研究成果を発表した。

 

Ali氏は、先行報告の推定ではNSCLC患者の約2~3%にBRAFV600E変異が認められると解説した。このようなドライバー遺伝子変異は一般に、他の発がん性ドライバー遺伝子変異に対し相互排他的特性を示す。さらに、特定の融合などの他のBRAF遺伝子変異も、キナーゼ領域または下流標的のいずれかを活性化するため、がんを誘発する可能性がある。

 

この研究の目的は、4タイプの肺がんにおけるBRAFV600E変異および他のBRAF変異の発生率を明らかにすることであった。

 

肺がんでのBRAF変異割合およびこのような遺伝子変異の発がん活性の程度を完全に明らかにする目的で、研究者らは、臨床治療中の肺がん治療継続例3300例を対象に、網羅的ゲノム・プロファイリング(CGP)を用いて、BRAF活性化に関与するとされる遺伝子変異のレビューを実施した。解析対象とした全検体の内訳は、肺腺がんが2179例、非扁平NSCLCが535例、SCCが385例、SCLCが201例であった。

 

研究者らは、肺がん症例から採取した40ミクロンのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)切片からDNAを抽出した。がんに関連する315の遺伝子と、がん細胞では頻繁に変異があることが知られている28の遺伝子から選択されたイントロンのエクソン3769個に対し、デプス(読み深度)500倍超の平均カバレッジで、hybridisation-captured, adaptor ligation based librariesにCGPを実施した。

 

全種類の遺伝子変異(GA)に対し、その結果の評価を行った。臨床的に重要な遺伝子変異(CRGA)の定義は、承認済み薬剤またはがんの生物学的メカニズムを標的とした臨床試験で現在審査中の薬剤に対する反応性に関与する遺伝子変異とした。

 

本研究では、各種論文報告よりも高い頻度でBRAF変異が検出される

 

V600変異は発生頻度が最も高く、肺腺がん検体の2.5%および非扁平上皮性NSCLC検体の0.4%で検出された。このほか、高頻度で検出された変異は、肺腺がん対非扁平NSCLCの順にそれぞれ、G469が0.8%対1.3%、G466が0.5%対0.6%、D594が0.6%対0.0%であった。

 

BRAFのG469変異およびD594変異は、SCC検体では0.3%に検出された。0.5%未満で発生していた変異には、G464、N581、K601があった。

 

肺腺がんの2検体は、これまで知られていなかった融合遺伝子DOCK4-BRAFとPTPN13-BRAFを有していた。このうち、患者1人はベムラフェニブに対する耐性を獲得していたが、エベロリムス併用により同剤への反応性が回復した。

 

結論

同研究の著者らは、CGPを問題なく用い、変異頻度が約5%に達するNSCLCのBRAF変異全種類を同定することができると結論付けた。BRAF変異の中でのそれぞれの変異の率は、組織学的観点から分類したサブタイプ間で異なっており、肺腺がんではV600E変異を約50%有しているのに対し、非扁平上皮性NSCLCではV600Eはわずか12.5%であるが、中間活性型BRAF変異は87.5%有していた。

 

SCC検体385例のうち、BRAF変異を有していたのは3例(1%未満)のみであり、またSCLC検体ではBRAF変異が認められなかったことから、SCLC、あるいはSCCに対するBRAF変異診断の実施は、限定的ではあるものの有益である可能性が示唆される。

 

著者らは、現在行われているNSCLCを対象としたBRAFV600E阻害剤の臨床試験に触れ、他の活性型BRAF変異を有するNSCLC患者も同治療薬の効果を得られる可能性があるとの考えを示した。

 

リファレンス

3007 網羅的ゲノム・プロファイリングによる肺がんのBRAF融合など非V600E活性型BRAF変異の特性解明

 

原文掲載日

翻訳菊池明美

監修後藤 悌(呼吸器内科/国立がん研究センター)

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