ニボルマブの効果を裏づける最新の試験結果-第16回世界肺がん学会

キャンサーコンサルタンツ

治療歴を有する扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対するニボルマブ(オプジーボ)の効果を評価する臨床試験CheckMate 017ならびにCheckMate 063の結果が、本日、第16回世界肺がん学会(アブストラクト736)で発表され、双方の試験で持続的な生存延長が示された。両試験で示された18カ月時点の推定全生存率は、27%(CheckMate 063)および28%(CheckMate 017)であった。

肺がんは、依然として世界中でがん関連死因の第一位である。米国では、肺がん全体の75~80%をNSCLCが占める。近年、治療成績は改善しているものの、進行期の肺がん患者のほとんどは肺がんで死亡している。そのため、新たな治療法の必要性が極めて高い。

ニボルマブは、免疫機構ががんを認識して攻撃する能力を増大させることで大きな話題を呼んでいるPD-1阻害剤であり、新しい種類のがん高精度医療のための薬剤の1つである。PD-1は、ある種の免疫反応を抑制するタンパク質である。そのため、PD-1を阻害する薬剤を用いれば、がんと戦うための免疫能が増強されると考えられる。ニボルマブは、PD-1を阻害することにより効果を発揮する。PD-1阻害剤は、現在、30を超えるがん種に対して臨床試験が実施されており、メラノーマに対する初期の臨床試験では有望な結果が示された。

CheckMate 063は、プラチナ製剤を含む薬物治療を受け、これに加えて全身療法レジメンを少なくとも1度実施された後に進行をきたした転移性扁平上皮NSCLC患者を対象とする単群の非盲検試験である。同試験でニボルマブがもたらした18カ月時点の推定全生存率は27%であった。主要評価項目である同時点での奏効率は15%であった。全生存期間中央値は8.1カ月で、ニボルマブの忍容性は高かった。

CheckMate 017で得られた1年時点での全生存率は、既に報告されているように、ニボルマブ群が42%、ドセタキセル群が24%で、ニボルムマブ群が有意に優れていた。CheckMate 063における1年時点での推定生存率は、39%であった。

がんの高精度医療とは、特定のがんを標的とした治療をより正確に行うために最新のゲノム情報を活用する、進化した肺がん治療法である。高精度医療は、がんをその発生部位によって大まかに分類するのではなく、特定のがんを引き起こしているゲノム変異を決めることが求められる。

ゲノム検査は、がんにみられる異常なあるいは正常に働いていない特定の遺伝子を見つけるために用いられる。ゲノム検査は、本質的には特定のがんにおける遺伝的な特徴や情報を決定する検査に類似している。しかし、ゲノム検査は遺伝検査とは異なる。遺伝検査は、通常、健康な個人ががんの発生しやすい遺伝形質(遺伝子)を持つかどうかを判定する目的で行われる。ゲノム診断は、すでにがんと診断された患者から採取した患部組織試料に存在する遺伝子を評価するために実施される。このため、ゲノム診断では、遺伝したと考えられる異常遺伝子以外に、後天的に突然変異して機能異常をきたした遺伝子も特定される。

肺がんの大半あるいはすべてが、異常な遺伝子や遺伝子調節から生じる。遺伝子や遺伝子調節の変化は、環境的要因、自然発生的要因、遺伝的要因によって生じると考えられている。患者のゲノム変異を特定してどの遺伝子が変異したかが解明されれば、変異した遺伝子(あるいはその遺伝子変異が引き起こす結果)を特異的に攻撃するがん治療薬を用いてがんを攻撃することが可能となり、化学療法によって生じる全身の副作用の発生も防止することができる。

近年、NSCLCに対して、高精度で、標的化され、より個別化された治療が現実のものとなっている。治療歴のない4期のNSCLC患者を対象として、ALK阻害剤を評価する複数の研究では、同阻害剤の有効性を示す結果が相次いで報告されており、また、抗PD-1抗体を用いる免疫療法を検討した初期の研究では、高い奏効率とがん進行の遅延が示されている。このところ、肺がん治療に関するさまざまな進展が報告されているが、今回の試験結果も、肺がん治療の新情報として報告されるであろう。


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翻訳担当者 重森玲子

監修 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)

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