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卵巣がんに対するAAV9遺伝子治療が動物実験で有望

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卵巣がんに対するAAV9遺伝子治療が動物実験で有望

米国国立がん研究所

米国国立がん研究所

原文掲載日:2015年8月14日

遺伝子治療であるウイルスベクターの単回投与は、再発性卵巣がん患者から移植したマウスの腫瘍増殖を阻害するタンパク質濃度を持続させ、効果的であるという新たな研究が、Proceedings of the National Academy of Sciences誌の7月27日号で発表された。

ミュラー管抑制因子(MIS)は、初期の発達段階に男性の精巣で産生されるタンパク質である。男性胎児の発達中に、女性の卵管、子宮、子宮頸部および腟になるとされる前駆細胞でMISに対する受容体が発現し、これらの組織の退行を誘発する。

「卵巣がん細胞がMISへの受容体を発現していることから、それらの細胞を標的として胎児での退行を誘発するホルモンを使用すべきではないか、という仮説をたてました」と、本研究の主著者であるマサチューセッツ総合病院のDavid Pépin博士は問いかける。「がん細胞はしばしば、初期の発達段階にある多くの細胞のようにふるまうことがある」。

MISについては、研究者らが数十年もの間、抗がん剤になる可能性があるとして興味を持ち続けてきた。しかしながら、前臨床試験でこの仮説の十分な検証さえできず、研究室でMISを製剤化するのは特に困難であることがわかっていた、と本研究の統括著者であるマサチューセッツ総合病院のPatricia Donahoe医師は説明した。ところが、2013年にDonahoe博士およびPépin博士は、よりよく生成でき、生物活性もより十分である、MISの若干の改変を加えたものを開発できたという研究を発表した。

新たな研究では、研究者らはまず再発卵巣がん患者の細胞株で生成されたMISを検証した。肯定的な反応がみられたため、共通の標的細胞を誘導できタンパク質(すなわちウイルスベクター)を産生するウイルスの中に、改変したMISを移植した。AAV9とよばれるウイルスベクターは、本研究の共著者でマサチューセッツ大学の遺伝子治療プログラムのディレクターであるGuangping Gao博士が開発し、マウス組織の中に改変したMISの遺伝子を注入し、その結果治療用タンパク質を産生することができるようにした。

「AAV9は腫瘍を直撃するわけではない」とDonahoe博士は説明する。「筋肉や他の臓器に発現した後に、患者自身がMISの産生のための生物反応体となり、そのMISが腫瘍に作用するのである」。

再発卵巣がん患者から移植した腫瘍を持つ5匹のマウスで検証が行われ、うち3匹で明らかにMISにより腫瘍の増殖が阻害された。

この結果は、特に卵巣がんの高死亡率および現在の治療選択肢の欠如に対する改善を促すものであるとPépin博士は述べる。「その大部分に対し、過去20年間同じ化学療法が行われてきた」。

Pépin博士は、最終的に化学療法と合わせて遺伝子治療を行うことを想定している。MISは卵巣がん細胞の増殖を阻害し、他の研究でも特にがん幹細胞を阻害する好結果がみられたと博士は言う。

「化学療法が腫瘍の膨張に対して効果的である一方、がん幹細胞を助けたり、刺激したりするが、MISは非常によく反応する細胞であり、相乗効果の機序を示唆している」。

遺伝子治療の優位性は、「他の方法では注入したタンパク質の到達が難しいとされてきたレベルからすると、治療用タンパク質の永続的な発現が得られる」という事実が物語るとPépin博士は言う。副作用を来した様子もなかったと博士はつけ加えた。さらに、AAV9ベクターは宿主の遺伝子に取り込まれることはないため、宿主の遺伝子を破壊したりがんを引き起こしたりするリスクがないと博士は説明する。

「既存の遺伝子治療のウイルスよりはるかに安全だ」と博士は言う。

Donahoe博士およびPépin博士は、現在臨床試験で検証しAAV9遺伝子治療を確立するために融資してくれるパートナーを探している。

(16倍拡大画像)GFP(緑色蛍光タンパク質)がマウスの腹膜腔の壁に発現しているが、これはコントロールAAV9ウイルス・ベクター[N1] による腹腔内の感染によるものを観察している。

画像:マサチューセッツ総合病院David Pépin博士
 

原文掲載日

翻訳太田奈津美 

監修喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院) 

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