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XMRVの起源解明、ヒト疾患との関連が否定される

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XMRVの起源解明、ヒト疾患との関連が否定される

NCIニュース

実験用マウスの遺伝子由来で、XMRVとして知られるレトロウイルスの起源が明らかとなった。このウイルスはこれまで、ヒトの前立腺癌あるいは慢性疲労症候群(CFS)の原因であると広く公表されてきたが、その可能性はどちらも低いことが示唆されている。XMRVは2種類のマウスウイルスの遺伝子組換えが起こったことにより発生し、その後、実験素材にこのウイルスが感染したために、そもそもヒト疾患との関連があると考えられたのだ。

Science誌に、米国国立衛生研究所の一部門である米国国立癌研究所(NCI)のVinay Pathak博士と研究チームは、他の研究者らと共同で、XMRVがいつどのように発生したかが理解でき、当初なぜ誤って関連づけられたかを説明する実験を報告した。 XMRVは、Xenotropic murine leukemia virus-related virus(異種指向性マウス白血病ウイルス関連ウイルス)をあらわす。

Science誌の同じ号に、XMRVに関する別の研究(Knoxら)として、2009年の研究と同群のCFS患者においても、ウイルスと疾患の関連はないと確認されたことが報告されている。「これらの結果を考えあわせ、実質的にXMRVがヒトの疾患の原因であることは否定された」。Pathak博士の論文の共著者であり、NCI研究所所長の特別顧問、Tufts大学医学部教授のJohn Coffin博士は述べている。

マウス白血病ウイルス類は、マウスの癌および他の疾患の原因となるレトロウイルスである。このウイルスはいくつかのクラスに分類され、そのうち一つがXenotropic murine leukemia virus(異種指向性マウス白血病ウイルス)である。このクラスのウイルスは、ほとんどのマウス細胞内で増殖したり、マウス細胞に感染することはないが、実験室において、ヒト等のマウス以外の細胞に感染する場合がある。

XMRVは、2006年にヒト前立腺癌の検体ではじめて報告され、これまでにヒト前立腺癌の6%~27%に存在することが報告されてきた。その後の研究では、CFSの血液検体の67%でXMRVが報告された。

XMRVがヒト間で感染するという仮説に対しては、前立腺癌またはCFS、および健常対照の様々なヒト検体群からXMRVが検出されなかったという数例の研究が反論してきた。

XMRVとヒト疾患がどの程度関連しているかを解明しようと、NCIのウイルス突然変異セクションにおける研究を率いるPathak博士、Coffin博士、および研究チームは、XMRVを含むヒト前立腺癌細胞、ならびに癌(マウスに移植された後に、この癌から前述の前立腺細胞検体が採取された)を研究した。ヒトの癌をマウスに移植する方法は異種移植と呼ばれ、疾患を研究する際に新しい治療や方法をヒトで試験する安全性が不確かな場合に、一般的に用いられる。

新しく始めたこの研究で注意深く実験を行った結果、前立腺癌の異種移植片は、移植前にはXMRVを含まなかったが、後にその移植片から由来する癌にはXMRVが含まれていることが判り、以前考えられていたようにヒト癌に初めからXMRVが含まれているわけではないことが実証された。そうではなくて、このウイルスは、マウス体内で癌細胞に感染したと思われる。さらに、前立腺癌の異種移植に使用されたマウスは、以前には述べられなかった2種のウイルス、PreXMRV‐1およびPreXMRV‐2を含んでいた。これらのウイルスはそれぞれDNA基本構成要素である3,200塩基対の遺伝子をもち、それはXMRVと1塩基対が異なるだけでほぼ同一であった。

PreXMRV‐1およびPreXMRV‐2の配列の遺伝子学的比較により、それぞれXMRVとほぼ同一の重複しない遺伝子をもつことが判明した。Pathak博士、Coffin博士、および研究チームは、1993年から1996年の間に、ヒト細胞がマウス体内で増殖する間にこれらのウイルスの組換えが起こって細胞中にXMRVが発生し、前立腺癌細胞に感染したと仮定した。2種類以上のウイルスに感染した細胞内でのウイルスゲノム間の組換えは一般的である。

この遺伝子分析に基づき、研究者たちは、XMRVは当初の前立腺癌検体には存在せず、マウスに移植した後にはじめて発生したと結論した。同じ組換えが独自に起こる可能性は約1兆分の1で、XMRVが別の起源から発生する可能性は極めて低い。研究者たちは、組換えが起こったウイルスが検体に混入したためにXMRVとヒト疾患が関連づけられたと結論した。

「ヒト前立腺癌でXMRVが報告され、その後CFSでXMRVが報告されて以降、世界中のレトロウイルス学者は、ヒトへの感染および疾患への役割の探索に沸き立った。今日発表された結果は期待していたものと異なるが、NCI、NIHやその他の研究者たちがこのウイルスを理解するために費やした時間とリソースを考えると、今後は、これらの疾患の本当の原因の研究に集中できる」とPathak博士は述べた。

 

参照: Paprotka et al.  Recombinant Origin of the Retrovirus XMRV.  Online Science.  May 31, 2011.

Knox et al. No Evidence of Murine-like Gammaretroviruses in CFS Patients Previously Identified as XMRV-infected. Online Science.  May 31, 2011.

For a Q&A on XMRV, please go to http://www.cancer.gov/newscenter/qa/2011/xmrv_qa.

 

 

原文掲載日

翻訳石岡 優子

監修大淵 俊朗(呼吸器内科/福岡大学 呼吸器・乳腺内分泌・小児外科)

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