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最も多いリンパ腫に高精度医療を用いたイブルチニブ治療が有望との研究結果

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最も多いリンパ腫に高精度医療を用いたイブルチニブ治療が有望との研究結果

米国国立がん研究所(NCI)プレスリリース

原文掲載日:2015年7月20日

 

びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)において特定の遺伝子発現パターンを有する患者は、他の発現パターンの患者よりもイブルチニブ(商品名Imbruvica)によく反応するということが臨床試験で示された。本研究はNature Medicine誌電子版に2015年7月20日掲載された。

 

この第2相臨床試験において、活性化B細胞様(ABC)タイプのびまん性大細胞性B細胞リンパ腫患者は、濾胞中心B細胞様(GCB)タイプの患者よりイブルチニブに反応する可能性が高いことが示された。本試験は米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国国立がん研究所(NCI)とPharmacyclics社が共同で実施した。

 

リンパ腫は白血球の異常な増殖によって起こる病気で、どの年齢でも発生する。びまん性大細胞性B細胞リンパ腫は中悪性度リンパ腫の一種で、増殖のスピードは速いが治癒する可能性がある。びまん性大細胞性B細胞リンパ腫は米国で新規にリンパ腫と診断された患者の約30%を占めている。

 

数年前、NCIの研究者らはリンパ腫の細胞内における遺伝子活性の特徴に基づいてびまん性大細胞性B細胞リンパ腫の主要なサブタイプ2種を同定した。これらのサブタイプ分類の発見により、遺伝子発現タイプごとの標的治療の開発が可能となることが示唆された。

 

標的治療の開発のため、本臨床試験は再発または前回治療に反応しなかったびまん性大細胞性B細胞リンパ腫患者80人を登録して実施した。患者全員にイブルチニブを投与した。患者の25%で腫瘍に反応が認められ、8人が完全寛解、12人が部分寛解となった。

 

臨床試験の参加者全体をみると、中央値11.5カ月の追跡期間中における無進行生存期間の中央値は1.6カ月、全生存期間の中央値は6.4カ月であった。

 

びまん性大細胞性B細胞リンパ腫のサブタイプごとに解析した場合、ABCタイプでイブルチニブによる完全寛解または部分寛解に達した患者は37%(38人中14人)であったのに対し、GCBタイプでは5%(20人中1人)に過ぎなかった。これらの結果を受け、今後イブルチニブの臨床試験を行うにあたっては、同薬が有効であると予想される患者の同定にABCタイプびまん性大細胞性B細胞リンパ腫を示す遺伝子特性を活かすことが可能であると研究者らは結論づけている。

 

びまん性大細胞性B細胞リンパ腫はB細胞に由来する。B細胞は身体の免疫応答において非常に重要な惑割を担っている。イブルチニブが標的とするブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)と いう酵素はB細胞受容体のシグナル伝達の鍵となる成分である。今回の新研究では、GCBタイプでなくABCタイプでのみ異常なB細胞受容体のシグナルが発せられ、BTKの活性化により腫瘍細胞が生存し、結果としてABCタイプがイブルチニブ感受性をもつ、ということの臨床学的エビデンスが初めて得られた。

 

「基礎的な分子レベルの発見を効果的な治療法につなげていくには、今回のような臨床試験が欠かせません」。NCIのがんゲノム科学センター所属で本研究の共同研究者としてABCタイプびまん性大細胞性B細胞リンパ腫におけるB細胞受容体シグナルの役割を発見したLouis Staudt医学博士はこのように話している。同じく共同研究者でNCIがん研究センターのWyndham Wilson医学博士は、「今回の臨床試験はリンパ腫における高精度治療(precision medicine)の重要性を初めて示しました」と述べている。

 

本研究結果をもとに、GCBタイプを除くびまん性大細胞性B細胞リンパ腫患者を対象に、標準化学療法にイブルチニブを併用する群と非併用群を比較する国際的第3相臨床試験が、Janssen Pharmaceuticals社とWilson氏およびStaudt氏の共同で現在進められている(ClinicalTrials.gov NCT01855750)。びまん性大細胞性B細胞リンパ腫における特定の遺伝子発現パターンを有する患者のみを選択的に参加させる第3相臨床試験というのは今回が初めてである。本試験の目的は、標準化学療法にイブルチニブを併用することによりABCタイプびまん性大細胞性B細胞リンパ腫患者の治癒率が上昇するかを確かめることにある。

 

イブルチニブは、マントル細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、ワルデンストローム型マクログロブリン血症など、他のがんの特定の患者に対する治療薬として米国医薬食品局(FDA)の承認を受けている。

 

画像訳:イブルチニブ治療前、イブルチニブによる治療第8週
イブルチニブによる完全寛解の継続> 4.5年

 

原文

翻訳橋本仁 

監修佐々木裕哉(血液内科、血液病理/久留米大学病院)

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