セディラニブ+オラパリブ併用療法は、プラチナ感受性再発卵巣癌の無増悪生存期間を顕著に改善するも毒性は高まる

キャンサーコンサルタンツ

プラチナ感受性再発卵巣癌の女性患者に対して、血管新生阻害剤セディラニブ[cediranib]とPARP阻害剤オラパリブ[olaparib]を併用すると、無増悪生存期間が改善する。この研究結果がこのほど Lancet Oncology誌で報告された。

毎年米国では、約22,000人の女性が卵巣癌と診断され、15,000人以上が死亡している。通常、卵巣癌の治療として手術と化学療法の併用もしくは、どちらかを実施する。標準のプラチナ製剤ベース化学療法レジメンを受けて6カ月後に癌の進行がみられた女性は、プラチナ感受性の癌であると考えられる。研究者らは、すべての卵巣癌患者の予後を改善するための新たなアプローチを研究し続けている。

現在、卵巣癌治療に対する新しい薬剤がいくつか開発されている。セディラニブは3種類の血管内皮成長因子(VEGF)受容体(VEGFR-1,-2,-3)チロシンキナーゼすべてに結合し、阻害することによって、VEGFシグナル伝達、血管新生、腫瘍細胞増殖を阻害する。VEGFは血管新生に重要な役割を担っているため、VEGFを阻害することでセディラニブは癌から栄養と酸素を奪い、その成長を阻害する。

本臨床試験は、米国内の9施設で行われ、プラチナ感受性再発卵巣癌患者90人を評価の対象とした。患者をセディラニブ+オラパリブ併用療法もしくはオラパリブ単独療法に割り付け、直接比較した。

約17カ月間の患者追跡調査後の報告時点では、併用療法が生存期間を有意に改善した。無増悪生存期間はオラパリブ単独療法群の9カ月に対し、併用療法群では17.7カ月であった。

治療による副作用は、併用療法群でより多く認められた。セディラニブ併用療法群はオラパリブ単独療法群と比較すると、高血圧、疲労、下痢、悪心、頭痛が増加した。セディラニブは、有望な経口投与用抗癌化学療法剤としてアストラゼネカ社が開発しており、現時点では臨床試験でのみ使用可能となっている。

参考文献:

Liu J, Barry W, Birrer M, et al. Combination cediranib and olaparib versus olaparib alone for women with recurrent platinum-sensitive ovarian cancer: a randomised phase 2 study. The Lancet Oncology, Volume 15, Issue 11, Pages 1207 – 1214, October 2014.


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翻訳担当者 米川恵理子

監修 原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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