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早期肺癌患者の生存に対する手術、放射線療法、初の有益性比較

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早期肺癌患者の生存に対する手術、放射線療法、初の有益性比較

早期肺癌患者の生存に対する各種治療法の有益性をはじめて比較した研究

MDアンダーソンがんセンターニュースリリース

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターで実施した研究の結果から、早期肺癌患者において肺全葉切除術は、肺部分切除術と比較して全生存を改善する可能性があり、また一部の患者において定位放射線療法(stereotactic ablative radiotherapy:SABR)は生存に対して肺葉切除術と同様の有益性をもたらす可能性がある。

 

本研究は、早期肺癌患者に対する現行治療法を評価する、地域住民を対象とした大規模研究であり、JAMA Surgery誌に発表される。

 

アメリカ癌協会(American Cancer Society:ACS)によると、2014年に米国で224,210人が肺癌と診断され、159,260人以上が肺癌により死亡すると予測されている。しかし、ベビーブーム世代が高齢化し、また肺癌の検診法として低線量スパイラルCTが広く使用されるようになれば、肺癌診断例は劇的に増加すると予測される、とアリゾナ州Banner MDアンダーソンがんセンターの放射線腫瘍医で、MDアンダーソンがんセンターの非常勤教授であるShervin M. Shirvani医師は述べる。

 

肺癌は通常、高齢者に発生する癌である。また、肺癌は喫煙と関連するため肺癌患者は慢性閉塞性肺疾患(COPD)、冠動脈疾患、腎障害などの合併症を有していることが多い。

 

早期肺癌患者に対して3つの治療法が広く行われている。すなわち、1)肺葉切除術(肺全葉切除術)、2)区域切除術(sublobar resection)(腫瘍が発生した肺葉の部分切除術)、3)SABR(3~5回に分割して精確に照射を行う方法)である。

 

「現在、肺癌は罹患率および死亡率が高い癌の一つであり、近い将来に、米国が直面する重要な健康上の問題の一つとなるでしょう。しかし、肺癌、特に早期に診断された肺癌に対する最良の治療法に関して、確固たるエビデンスに裏打ちされたガイドラインはありません」と、本研究の筆頭著者であるShirvani医師は述べる。

 

この3つの治療法を比較するランダム化試験がいくつか試みられているが、患者の登録率が低いことや、患者や医師の参加が不十分であることにより、上手く進んでいない、とShirvani医師は説明する。

 

「臨床試験で結果が出ていないことから、大規模データベースの観察データを解析し、この3つの治療法を比較することが重要でした。われわれは、標準治療法と広く認識されている肺葉切除術と、より小規模の手術および手術リスクのないSABRとを比較し、さまざまな合併症を有する高齢患者に対する最良の治療法を明らかにしようと試みました」。

 

この地域住民を対象とした後ろ向き研究において、Surveillance, Epidemiology and End Results(SEER)メディケア・データベースを解析し、2003~2009年に治療した非小細胞肺癌(NSCLC)患者を特定した。合計9,093人を特定した。全例が3つの治療法のうち1つを受けており、内訳は肺葉切除術7,215人(79.3%)、区域切除術1,496人(16.5%)、SABR 382人(4.2%)であった。特記事項として、本研究を実施した時期からみて、SABR施行例は本治療法の適用初期の患者である、とShirvani医師は述べる。

 

患者特性、腫瘍特性、経済的因子、およびその他の共変量を補正した結果、区域切除術と比較し、肺葉切除術は全生存率および肺癌特異的生存率(肺癌で死亡していない患者の割合)の改善と関連した。この結果は研究者を驚かせるものであった。

 

「多くの合併症を有する高齢患者では、肺全葉切除術よりも手術合併症が少ない小規模手術の方が良好な治療成績が得られると予測されていました。しかし、一般的な手術(小規模手術より切除範囲の広い手術)により癌を取りきる方が、手術合併症のリスクを低減するよりも重要なようです」とShirvani医師は説明する。

 

ベースライン特性が同様の患者で肺葉切除術とSABRとを比較したところ、全生存率および肺癌特異的生存率はこの2つの治療法で同程度であった。この結果から、超高齢患者や複数の合併症を有する患者(肺癌患者でよく認められる特性)において、SABRは手術の代替治療法としてきわめて有望であることが示唆される。

 

MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍科准教授であるBenjamin Smith医師は、今回の観察研究の結果を受けて、超高齢患者や複数の合併症を有する患者には小規模手術が適しているとの認識に対して、医師が慎重になるよう期待する。

 

「今後数年で早期肺癌の診断例が劇的に増加することは明らかであり、患者の適切な治療法、すなわち高齢患者に対する有効性と危険性のバランスの取れた治療法を確立する必要があります」と本研究の連絡責任著者であるSmith医師は述べる。

 

「今回のような観察研究は、実施すべき適切な治療法に関する知見をもたらすとともに、前向きの臨床試験を遂行する価値があると医師や患者を後押しすると期待されます」とSmith医師は続ける。

 

本研究に参加した研究者は、Shirvani医師とSmith医師の他に、以下の通り。
From MD Anderson: Thomas A. Buchholz, M.D., Executive Vice President and Physician-In-Chief; Stephen G. Swisher, M.D., professor and Division Head, Surgery; Joe Y. Chang, M.D., Ph.D., professor, and James Welsh, M.D., associate professor, both with Radiation Oncology; and Jing Jiang, Health Services Research. From Banner MD Anderson, Anna Likhacheva, M.D., Department of Radiation Oncology, is also an author.

 

以下の著者は利益相反状態を開示している。Welsh医師は、Reflexion Medical社の顧問を務めている。Likahacheva医師は、Elekta Incorporated社から研究費を受領した。Swisher医師は、GlaxoSmithKline社の顧問を務めている。

原文掲載日

翻訳永瀬祐子

監修後藤 悌 (呼吸器内科/国立がん研究センター中央病院)

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