非小細胞肺癌摘出後のMAGE-A3癌免疫補助療法剤は無病生存期間(DFS)を延長しない | 海外がん医療情報リファレンス

非小細胞肺癌摘出後のMAGE-A3癌免疫補助療法剤は無病生存期間(DFS)を延長しない

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非小細胞肺癌摘出後のMAGE-A3癌免疫補助療法剤は無病生存期間(DFS)を延長しない

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) プレスリリース

 

第3相二重盲検ランダム化プラセボ対照試験MAGRITの結果報告

 議題: 肺などの胸部腫瘍/癌免疫学

癌を摘出したMAGE-A3陽性非小細胞肺癌(NSCLC)患者の術後補助療法として、AS15アジュバント添加遺伝子組み換えMAGE-A3癌免疫療法剤は有効であるかどうかが、国際共同試験MAGRITによって評価された。本試験では、術後化学補助療法を受けなかった集団を含め全対象集団において、MAGE-A3癌免疫療法群にプラセボ群を上回る無病生存期間(DFS)の延長はみられなかった。この試験結果は、2014年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会(スペイン、マドリードで開催)の主催者シンポジウム1で、ベルギー、ルーベンにあるルーベン大学ガストゥイスベルク大学病院(University Hospitals Leuven-Campus Gasthuisberg)の呼吸器腫瘍部門のJohann Vansteenkiste教授によって報告された。

 

術後補助化学療法は病期2、3A、ハイリスク1BのNSCLC患者の標準療法であるが、5年無病生存(DFS)率は不良(35~50%)のままで、約半数の患者はさまざまな理由で術後補助化学療法を受けない。シスプラチンに基づく術後補助化学療法における忍容性は充分とはいえない。

 

MAGE-A3は腫瘍特異的抗原であり、NSCLCなどいくつかの癌で発現している。MAGE-A3癌免疫療法剤は免疫賦活剤と結合した遺伝子組み換えタンパク質として投与される。

 

転移性メラノーマに対するMAGE-A3免疫療法剤の効果は認められていた。癌を完全切除した病期1B~2のMAGE-A3陽性NSCLC患者を対象とした第2相二重盲検プラセボ対照試験では、追跡調査44カ月で、癌再発の相対リスクは25%低下し(ハザード比[HR]0,75)、忍容性が非常に優れていた。予測因子としての遺伝子シグネチャー(遺伝子発現パターン特性)が転移性メラノーマで発見されていたが、NSCLCにおいても再現された。

 

MAGRIT試験の所見

ランダム化二重盲検プラセボ対照試験であるMAGRITによって、癌を完全切除(R0)または部分切除し 術後化学療法(プラチナ製剤をベースとする療法を最大4サイクル)を受ける、あるいは受けないMAGE-A3陽性NSCLC(TNM分類第6版で規定された病期1B、2、3A)患者の補助療法としてAS15アジュバント添加遺伝子組み換えMAGE-A3癌免疫療法剤を投与した場合、全身状態(PS)がECOG分類で0,1,2、かつ十分な骨髄機能、腎機能、肝機能を有し、自己免疫性疾患の無い患者において、無病生存(DFS)状態が改善されるかどうかを検討した。

 

MAGE-A3の状態は、フォルマリン固定・パラフィン包埋の原発腫瘍組織片を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法で検査することにより評価した。

 

患者は27カ月の治療期間に13回のMAGE-A3癌免疫療法剤を筋肉内注射する群、またはプラセボを投与する群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。

 

共同主要エンドポイントは全集団におけるDFS、術後補助化学療法を受けなかった集団におけるDFS、予想因子としての遺伝子シグネチャー特定の可能性を持つ集団におけるDFSの3項目とした。

 

副次的エンドポイントは全生存率(OS)、肺癌特異的生存率、厳密な無病生存率、免疫原性、安全性、健康に関する生活の質などとした。

 

計13849人の患者をスクリーニングしたとろ、4210人にMAGE-A3陽性腫瘍が認められたが、無作為化され治療を受けた患者は2272人であった。

 

中間解析では、あらかじめ規定された判断境界域に達せず、かつ治療の忍容性が良好であったため、試験を継続してもよいと結論づけられた。

 

患者全体の52%が術後化学補助療法を受けた。47%が病期1B、36%が病期2、17%が病期3Aであった。年齢の中央値は63歳で、患者の24%は女性であった。

 

平均相対的用量強度(実際の期間あたり投与量÷計画されていた期間あたり投与量)は治療期間を通して両群とも98%を越えていた。

 

MAGE-A3癌免疫療法剤投与群の10%以上で認められた代表的な有害事象をプラセボ群との比較で以下に示す:

•発熱 (35%対5%)
•注射部位疼痛(31%対5%)
•注射部位反応(18%対14%)
•疲労(16%対7%)
•疼痛(16%対2%)
•インフルエンザ様疾患(13%対3%)
•筋肉痛(12%対2%)

 

しかし、グレード3以上の有害事象には群間差がみられず、発現率は1%未満であった。

 

最終解析の時点での追跡調査期間中央値は38.8カ月であった。試験対象全集団におけるDFSの中央値は、MAGE-A3癌免疫療法剤投与群で60.5カ月、プラセボ投与群で57.9カ月であった(HR 1.024、p=0.7393)。術後補助化学療法を受けなかった集団におけるDFSの中央値はMAGE-A3癌免疫療法剤投与群で58.0カ月、プラセボ投与群で56.9カ月であった(HR 0.970、p=0.7572)。

 

全集団における全生存率は測定にまで至らなかったが、その中央値は5年を超えると予想される。

 

治療効果が認められなかったため、MAGE-A3癌免疫療法剤の臨床的利益を予測するための遺伝子シグネチャーを特定することはできなかった。

 

結論

MAGRITはNSCLCにおける最大規模の臨床試験であり、また早期NSCLCに対する術後補助療法という設定で免疫療法について初めて検討したものだったと著者らは結論づけた。しかし、MAGE-A3癌免疫療法剤を用いた術後補助療法によって、全対象集団においても、術後補助化学療法を受けなかった患者集団においても、プラセボ投与群を上回るDFSの延長はみられず、すべてのサブセット解析で利益は認められなかった。MAGE-A3癌免疫療法剤は全般的に忍容性に優れ、毒性作用のほとんどは軽度であった。さらに免役介在性障害の増加は検出されなかった。このデータセットでは予測因子としての遺伝子シグネチャーは特定されなかった。本試験のデータベースは、早期NSCLCに対する広範で最新の研究手法における今後の解析の基礎となる。

 

本試験の結果を考察したDr George Coukos氏によると、NSCLCにおけるワクチン療法のメリットは低毒性、容易な投与、抗腫瘍防御メモリー誘発能にあるという。現時点でのデメリットはその作用の弱さである。臨床的適応は維持療法/地固め療法にあると考えられる。

 

MAGE-A3の通常の機能については不明であるが、この抗原が腫瘍細胞上に存在することによって予後は悪化してきた。MAGE-A3抗原はさまざまな腫瘍細胞で発現するが、精巣以外の正常な細胞には発現しない。 NSCLCにおける発現は初期腫瘍の35%で証明されている。「MAGE-A3ワクチン」は遺伝子組み換えタンパク質抗原に基づくワクチンの1例である。

 

Coukos氏によれば、試験の失敗で考えられる理由はまぎらわしい後方視的なサブセット解析や、分子的に1価のワクチンの作用が弱すぎたり、転移性または侵襲性の腫瘍が免疫回避変異体であったり、またはエピジュネテックな機序(メチル化と肺がん再発の相関関係)による可能性があると述べた。

 

分子的に1価とされる他のワクチンの試験結果や分子的に多価とされるワクチンの開発が特に待たれる中、Coukos氏はNSCLCワクチンの将来性に対してさらに考察を加えた。

 

高い変異率によって免疫原性が増大することがある。メラノーマや肺癌の変異数は平均を上回り、腫瘍あたり約200の非同義変異がみられる。このような大量の変異は強力な変異の誘発要因となる。 喫煙者の肺癌では非喫煙者の癌の十倍の体細胞変異が認められている。

 

従って、NSCLCに対するワクチンのこれからの応用は、ミュータノーム解析(網羅的変異解析)に基づき個別化された分子ワクチン、特異的な変異を捉えるよう設計された全自家腫瘍抗原ワクチンにあるとCoukos氏は述べた。

 

原文掲載日

翻訳緒方登志文

監修廣田裕(呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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