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トラスツズマブのFDA承認

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トラスツズマブのFDA承認

原文 2013/07/03更新

商品名:Herceptin®  (日本商品名:ハーセプチン)

HER2過剰発現のある転移性胃癌・食道胃接合部腺癌(2010/10/20)
HER2過剰発現乳癌患者に対する承認(2006/11/16)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

HER2過剰発現のある転移性胃癌・食道胃接合部腺癌
米国食品医薬品局(FDA)は2010年10月20日、転移性病変に対して未治療のHER2過剰発現のある転移性胃癌・食道胃接合部腺癌患者に対し、シスプラチンとフルオロピリミジン(カペシタビンまたは5-フルオロウラシルのどちらか)との併用療法としてトラスツズマブ(ハーセプチン®、製造元:Genetech社)を承認しました。

この承認は、一つの国際的多施設非盲検無作為化臨床試験であるBO18255試験(ToGA試験)の結果に基づくもので、この試験には局所進行性または転移性でHER2過剰発現を有する胃または食道胃接合部腺癌の患者594人が参加しました。患者らはトラスツズマブと化学療法を受ける群、あるいは化学療法を単独で受ける群のどちらかに、1対1の割合で無作為に割り付けられました。

トラスツズマブは、初回に静脈内投与(IV)にて8mg/kg、その後3週間ごとに6mg/kgを病状が悪化または許容範囲を超えた毒性が認められるまで投与しました。化学療法の投与計画は、シスプラチン80mg/m2を3週間ごとの1日目に静脈内投与しこれを6サイクルとフルオロピリミジン(カペシタビン1000mg/m2を1日2回14日間の経口投与、もしくは5-フルオロウラシル800mg/m2/日を3週間ごとの1日目~5日目に持続静脈内投与(CIV)しこれを6サイクルのどちらか)でした。中央判定により検証したアッセイを用いて、腫瘍は全てFISH法によるHER2遺伝子増幅陽性、あるいはタンパク質過剰発現(IHC 3+)であることを確認した。

594人の患者のうち、原発性胃癌であったのは82%、原発性食道胃接合部腺癌であったのは18%で、全体の97%が転移性の疾患でした。年齢中央値は60歳(21歳~83歳)、76%が男性でした。試験に参加した患者らの人種構成は、アジア人(53%)、白人(38%)、ラテン系アメリカ人(5%)でした。ほぼ全ての患者(95%)に、FISH法にてHER2遺伝子増幅のある腫瘍を持つことが認められました。IHC法によるHER2染色では、47%が3+、30%が2+、22%が0または1+でした。患者のほぼ91%は、ECOG全身状態(PS)が1またはそれ以下でした。それまでに行われた治療は、胃切除術(23%)、術前化学療法または術後補助化学療法(7%)、放射線療法(2%)でした。

トラスツズマブ+化学療法を受けた患者のうち167人が死亡し、化学療法単独を受けた患者の184人が死亡した時点で第2回の中間解析が行われ、試験は終了しました。生存期間中央値は、トラスツズマブ+化学療法を受けた患者で13.5カ月、化学療法単独を受けた患者で11.0カ月でした[HR 0.73 (95%CI:0.60、0.91)、 p=0.0038 (名義的有意水準 0.0193)]。

トラスツズマブ+化学療法を受けた患者で227人が死亡し、化学療法単独を受けた患者で221人が死亡したのち、新たに生存期間解析が行われました。それによると、生存期間中央値は、トラスツズマブ+化学療法を受けた患者で13.1カ月、化学療法単独を受けた患者で11.7カ月でした(HR 0.8、95%CI 0.67、0.97)。タンパク質発現量(IHC法)により定義されたサブグループ解析から、トラスツズマブはHER2 IHC法3+の腫瘍の患者サブグループ294人において生存期間の延長に最も有効であり(HR 0.66、95%CI 0.50、0.87)、IHC 2+の患者サブグループ160人では効果が低いことが示唆されました(HR 0.78、95%CI 0.55、1.10)。HER2遺伝子増幅は陽性ですが,IHCが0または1+のサブグループ133人では、トラスツズマブによる治療効果は明らかではありませんでした(HR 1.33、95%CI 0.92、1.92)。

トラスツズマブ+化学療法群の少なくとも10%の患者に最も多く認められた副作用は、好中球減少、下痢、疲労、貧血、口内炎、体重減少、発熱、血小板減少、粘膜炎症、鼻咽頭炎、味覚障害でした。トラスツズマブ+化学療法群の少なくとも5%の患者に最も多く認められたグレード3、4の副作用は、好中球減少(35%)、貧血(12%)、下痢(9%)、悪心(8%)、食欲不振(7%)、嘔吐(6%)でした。トラスツズマブ+化学療法を受けた患者のおよそ37%に、注入関連反応が認められました。グレード4の注入反応または投与に関連した死亡は報告されませんでした。心有害反応の発生頻度は、両群の患者で類似していました。心不全の発生率は、1%未満でした。両試験群における死亡の90%以上は、病状増悪あるいは疾患に関連した合併症によるものでした。トラスツズマブ+化学療法を受けた患者で治療を中止する原因となった副作用のうち最も多かったのは、感染症、下痢、発熱性好中球減少症でした。

HER2過剰発現と遺伝子増殖は、FDAが認可した検査法を用い,腫瘍臓器ごとに検証された基準で判定すべきです。腫瘍の病理組織(乳癌、胃癌または食道胃接合部腺癌)における違いにより、検査結果の解釈は影響を受ける可能性があります。検査の判定精度に限界があるため、1つの方法だけで、ハーセプチンの潜在的な有益性を除外することは推奨できません。

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山下裕子 訳
畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
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HER2過剰発現乳癌患者に対する承認
2006年11月16日、米国食品医薬品局(FDA)は、トラスツズマブ(ハーセプチン®、製造元:Genetech社)を、腋窩リンパ節転移があり、HER2過剰発現乳癌患者の術後補助療法として、ドキソルビシン、シクロフォスファミドとパクリタキセルを含む併用療法の一部として承認しました。この承認は、トラスツズマブと化学療法を併用している乳癌患者の無病生存期間が、化学療法単独の場合と比べて有意に延長されたという結果に基づいたものです。

米国国立癌研究所に協力している2つの臨床試験(NSABP B31 とNCCTG N9831)における3,752人の総合的中間分析が再検討されました。どちらの臨床試験も、免疫組織学染色法によるHER2タンパク3+の過剰発現、あるいは、FISH法によるHER2遺伝子が増幅している乳癌患者のみを対象としました。試験参加者は全員、標準的な術後化学療法(ドキソルビシンとシクロフォスファミドの併用療法(AC療法)を21日間隔で4サイクル受けた後、毎週、もしくは、3週間隔で、合計12週のパクリタキセルの投与)を受けました。必要に応じて、さらにホルモン療法や局所の放射線治療も行いました。患者は、追加療法無し、又は、トラスツズマブ4mg/kgをパクリタキセルの初回投与時に、そしてそれ以降は、週1回2mg/kgを合計52週にわたって投与を受ける療法に、無作為に割り付けられました。

ランダム化時点から再発、対側乳癌の発生、他の二次原発癌または死亡するまでの期間を無病生存期間(DFS)と定義し、有効性複合分析の主要評価項目としました。中間解析時にDFSの追跡評価対象とならなかった患者は、試験初日において401人でした。

中間解析時に、化学療法単独の乳癌患者1,880人に261の事象が、そして、化学療法にトラスツズマブを併用した1,872人に133の事象が起こりました。再発、新たな癌の発生、あるいは死亡のリスクは52%減少しました(ハザード比:0.48、95%CI:0.39;0.59)。全生存率の分析では、トラスツズマブと化学療法の併用群の方が低い死亡率であることを示していました。しかしながら、分析結果に有意な差は認められず、生存人数96%に対する低い死亡率に基づきました。

トラスツズマブのもっとも重篤な毒性には以下のものがあります。

・心筋症
・ 肺への毒性(呼吸不全、肺炎、肺浸潤)
・ インフュージョン反応
・ 発熱性好中球減少/化学療法によって引き起こされた好中球減少の悪化

トラスツズマブによるもっとも一般的な副作用は以下の通りです。

・発熱
・ 嘔吐
・ インフュージョン反応
・ 下痢
・ 感染症
・ 頻回のせき
・ 頭痛
・ 倦怠感
・ 呼吸困難
・ 発疹
・ 好中球減少
・ 貧血
・ 筋肉痛

トラスツズマブの中断もしくは中止が必要な副作用には、インフュージョン反応、うっ血性心不全や、左心室機能の著しい低下などがありました。

左室駆出率(LVEF)の連続測定が、2つの臨床試験で行われました。6%の患者は、心臓の機能不全(LVEF 50%、もしくは、AC終了時のベースラインより15ポイントのLVEF低下)のためAC療法終了後にトラスツズマブの投与を受けることが出来ませんでした。

トラスツズマブ治療の開始の後に、新たな癌の発症および投与制限が必要な心筋の機能低下は、パクリタキセル単独投与の患者に比較して、トラスツズマブとパクリタキセルの併用療法を受けている患者に多くみられました。トラスツズマブとパクリタキセル併用療法の開始以前には通常のLVEFであった患者のうち、16%の患者は心筋機能低下の臨床所見、もしくは、LVEFの著しい低下のために、トラスツズマブの投与が中止となりました。トラスツズマブと化学療法の併用の約2%と化学療法単独の0.4%は、外部の検討委員会によって、臨床症状や検査で確認された結果、心筋症であると判定されました。トラスツズマブの投与を受けている32人のうち1人は臨床所見で心筋症による死亡が認められました。あとの31人の生存患者全員はフォローアップとして心臓疾患に対する投薬を受け、ほぼ半数が医学的管理を続けることで、通常のLVEF(50%と定義される)まで回復しました。

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Nogawa 訳
真庭理香(薬学)監修
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。
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