OncoLog 2014年7月号◆RAS変異の有無で結腸直腸癌肝転移の術後転帰を予測できる可能性 | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2014年7月号◆RAS変異の有無で結腸直腸癌肝転移の術後転帰を予測できる可能性

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OncoLog 2014年7月号◆RAS変異の有無で結腸直腸癌肝転移の術後転帰を予測できる可能性

MDアンダーソン OncoLog 2014年7月号(Volume 59 / Number 7)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

RAS変異の有無で結腸直腸癌肝転移の術後転帰を予測できる可能性

結腸直腸癌からの肝転移患者において、RAS変異の有無が予後を予測でき、積極的な外科治療による治癒が期待できる患者の判断に役立つことが最新のエビデンスにより示唆された。

 

「他のほとんどの固形癌では播種性が高い転移により治癒のあらゆる可能性がついえることが多いのに対し、結腸直腸癌では転移した後でも治癒の可能性があります」とテキサス大学MDアンダーソンがんセンター消化器腫瘍内科准教授のScott Kopetz医学博士は述べる。「化学療法と、転移巣を除去する手術の併用によって治癒が達成できるのです」。

 

結腸直腸癌の標準治療は、原発巣の切除と術後化学療法である。肝転移のある患者では、化学療法に対して奏効するかどうかで、転移巣を除去する肝切除術の候補となる患者を判断できる。Kopetz博士によると、結腸直腸癌から肝転移した患者の10~20%が積極的な外科治療の対象となる。

 

「この手術の安全性は格段に高くなっています。ほんの10年前と比べても、手術による死亡率は低く、合併症の発現率は低く、術後の入院期間も短くなっています。そのため今では患者さんに外科治療を提案する障壁は低くなりました」とKopetz博士は述べる。「しかし、手術のリスクははるかに低下したものの、効果が得られる患者の割合は低いままです。手術により治癒につながるかどうかの判断を補助するバイオマーカーが必要です」。

 

RASの新たな役割

そのようなバイオマーカーとして期待されているのがRAS変異の有無である。RAS変異の有無は現在、主にセツキシマブやパニツムマブなどの上皮細胞増殖因子受容体阻害剤に対して大腸癌が感受性を有しているかどうかの評価に用いられている。RAS変異陽性の患者では癌がこれらの薬剤に対して抵抗性であるためだ。しかし、最近の相次ぐ研究により、RAS変異(主にKRASおよびNRAS変異)は、結腸直腸癌からの肝転移切除後の全生存や無病生存の転帰悪化も独立して予測できることが示された。

 

研究の一例で、腫瘍外科肝膵臓部門教授で研究主任のJean-Nicolas Vauthey医師が統括する研究では、結腸直腸癌からの肝転移に対して根治肝切除術を受けた200人近い患者において、RAS変異有無と生存転帰との関連が検討された。この研究により、RAS変異の有無は全生存、無再発生存、および肺転移再発無しの生存の独立した予測因子であるが、残肝再発無しの生存の予測因子とならないことが見出された。

 

「このデータにより、RAS変異は、再発リスクや具体的にどこに癌が再発しやすいかを理解するのに役立つことが示唆されます。例えば、結腸直腸癌から肝転移した患者ではKRASまたはNRAS変異がある場合は変異のない患者と比較して肝臓以外、特に肺に再発しやすいのです」と本研究の共同研究者であるKopetz博士は述べる。「これは重要です。なぜなら、かなり徹底した手術を受けた後でさえ患者の大部分では再発が起こるからです。肝臓外に顕微鏡的癌巣があるかどうかの最強の予測因子の一つがKRASまたはNRAS変異の有無であることがわかっています」。

 

この結果は、結腸直腸癌から肝転移した患者の再発のリスクを従来のスコア化システムのみを用いて測定するという常識にも疑問を投げかけている。このシステムは、現代化学療法の前の時代に開発され、転移巣の数や大きさなどの臨床病理学的因子のみを用いており、患者間で異なり予後に重要な影響を及ぼす腫瘍の生物学を考慮していない。肝切除の候補となる結腸直腸癌からの肝転移患者において、RAS変異の有無からは、各患者の予後の全体像をより明確に示す腫瘍生物学の追加情報が得られる。

 

「これらの患者でRAS変異の有無を考慮することで、より個別化された予後判断のアプローチが示されます」とKopetz博士は述べる。

 

さらなる改良

RAS変異の有無からは予後に関する重要な見識が得られるものの、それだけでは結腸直腸癌からの肝転移の手術を受けるべき患者と受けるべきでない患者を判断するには不十分である。RAS変異陽性の患者では外科治療で治癒する見込みは低いが、治癒しないとも言い切れない。

 

Kopetz博士によると、問題はRAS(または他のバイオマーカー)による転帰予測がどれほど正確でも、ほとんどの患者は、たとえ確率がきわめて低くても治癒の可能性がある外科治療に伴うリスクを選択するということである。

 

「依然、多くの人は末期癌に対する治癒の見込みが2%でもあれば手術を受けたがります」とKopetz博士は述べる。「これはバイオマーカーにとって高いハードルです。基本的に、選択肢から手術を除外するには、術後に間違いなく再発すると言いきれるようにならなければなりません」。

 

そのようなバイオマーカーが見つかるまでは、Kopetz博士は医師に、結腸直腸癌からの肝転移患者を大きな肝胆道外科センターに紹介し続け、肝切除手術を検討できるようにすることを推奨している。

 

「集団に基づいた研究により、われわれは積極的に外科介入していれば治癒できたかもしれない多くの患者を見逃していて、効果が期待できる患者の選択に役立つツールが必要であることが示唆されました」とKopetz博士は述べる。「バイオマーカーにより候補を絞り易くなるものの、バイオマーカーのみではまだ手術の対象から除外するには至っていません」。

 

それでも、Kopetz博士によると、RASや他の遺伝子を検査して結腸直腸癌からの肝転移を有する患者の腫瘍生物学の特徴をさらに解析することで、肝切除により治癒する見込みが高い集団を特定するのに役立つという。

 

「最終的には、何千人もの患者を積極的な手術の対象としておいて、結果的にその大部分が再発するのではなく、大手術で効果が得られることが明らかな患者を特定できるようにすることがわれわれの目標です」。

 

【画像キャプション訳】
結腸直腸癌から肝転移した患者では、RAS変異の有無が肝切除後の再発リスクと関連している。肝切除は腹腔鏡下(上写真)で行うことも、開腹手術で行われることもある。

 

FURTHER READING

Vauthey JN, Zimmitti G, Kopetz S, et al. RAS mutation status predicts survival and patterns of recurrence in patients undergoing hepatectomy for colorectal liver metastases. Ann Surg. 2013;258:619–626.

For more information, contact Dr. Scott Kopetz at 713-792-2828.

— Joe Munch

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳石岡優子

監修高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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