FDAが悪性度の高い希少疾患である末梢T細胞リンパ腫に対しベリノスタットを承認

米国食品医薬品局(FDA)ニュース

速報

米国食品医薬品局(FDA)は2014年7月3日、非ホジキンリンパ腫(NHL)の増殖の速い型である末梢T細胞リンパ腫(PTCL)患者の治療薬として、belinostat[ベリノスタット](Beleodaq)を承認した。今回の承認はFDAの迅速承認制度により実施された。

PTCLはリンパ節の癌化がみられる多様な希少疾患群である。米国国立癌研究所(NCI)によれば、2014年では70,800人の米国人が非ホジキンリンパ腫の診断を受け、18,990人が死亡すると推定している。北米では非ホジキンリンパ腫患者の約10~15%がPTCL患者である。

ベリノスタットは、免疫細胞の一種であるT細胞の癌化の原因となる酵素を抑制する薬剤である。本剤は、他剤の治療後に疾患が元の状態に戻る(再発性)、または前治療では反応を示さなかった(難治性)患者を対象としている。

「本剤は2009年以来、末梢T細胞リンパ腫に対して承認された3番目の医薬品となります」とFDA医薬品評価研究センター血液腫瘍製品室長Richared Pazdur医師は述べた。「今回の承認により、重篤で生命を脅かす疾患であるPTCL患者に対する治療の選択肢が拡充されました」。

FDAは、2009年に再発性または難治性PTCL患者に対してFolotyn(pralatrexate:プララトキサレート)を、また2011年には1剤以上の前治療を受けているPTCL患者に対してIstodax(romidepsin:ロミデプシン)をそれぞれ迅速承認している。

ベリノスタットの安全性および有効性については、試験に参加した再発性または難治性PTCL患者129人を対象とした臨床試験で評価された。患者すべてにベリノスタットを投与し、病勢進行または耐えられない副作用が発現するまで継続した。投与開始後、25.8%の患者で腫瘍の消失(完全寛解)または縮小(部分寛解)が認められた。

本剤の投与患者でみられた最も多い副作用は、悪心、疲労、発熱、赤血球減少(貧血)、および嘔吐であった。

FDAの迅速承認制度は、未だ十分な治療法が確立されていない重篤疾患の患者に対し、臨床的有用性を予測し得る代替/中間エンドポイントに基づいて医薬品の承認を可能とする制度である。迅速承認を受けた医薬品は臨床的有用性の検証として確認試験の実施が必要となる。ベリノスタットは今回の承認のほか、希少疾患または病態の治療目的で、希少疾病用医薬品にも指定された。

ベリノスタットおよびプララトキサレートは米国ネバダ州ヘンダーソンに拠点を置くSpectrum Pharmaceuticals社が製造販売を行っている。Istodaxは米国ニュージャージー州サミットに拠点を置くCelgene社が製造販売を行っている。

翻訳担当者 菅原宣志

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善の画像

【米国血液学会(ASH)】マントル細胞リンパ腫、イブルチニブ+ベネトクラクス経口薬併用で予後改善

MDアンダーソンがんセンターMDアンダーソン主導の第3相試験が、無増憎悪生存率と寛解率の有意な改善を示すアブストラクト:LBA-2

イブルチニブ(販売名:イムブルビカ )とベネト...
リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状の画像

リンパ腫(DLBCL)の二次治療としてCAR-T細胞療法の費用対効果が低い現状

ダナファーバーがん研究所研究概要表題
びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫の二次治療、キメラ抗原受容体 T 細胞療法:費用対効果の分析出版物Annals o...
再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望の画像

再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望

オハイオ州立大学総合がんセンターオハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG.ジェイムズがん病院リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC – James)の研究者らが研究している新しい...