ラムシルマブのFDA承認

商標名:Cyramza

転移性大腸がんに対するFOLFIRI療法との併用下での承認(2015年4月24日)
白金製剤抵抗性転移性非小細胞肺がんに対するドセタキセル併用下での承認(2014年12月12日)
進行性胃がんもしくは胃食道接合部腺がんに対しパクリタキセルとの併用を承認(2014年11月5日)
胃がんもしくは胃食道接合部腺がんへの承認(2014年4月21日)

臨床試験情報、安全性、投与量、薬物間の相互作用および禁忌などの全処方情報がFull prescribing information(英文)で参照できます。

転移性大腸がんに対するFOLFIRI療法との併用下での承認

2015424日、米国食品医薬品局(FDA)は、ベバシズマブ、オキサリプラチンおよびフルオロピリミジンを含む一次治療レジメンを施行中に疾患進行を生じた転移性大腸がん(mCRC)患者に対して、FOLFIRI療法との併用下でのラムシルマブ(サイラムザ注、イーライ・リリー社製)を承認しました。

本承認は、ベバシズマブ、オキサリプラチンおよびフルオロピリミジンを基剤とした併用化学療法を施行中またはこうした化学療法を中止後6カ月以内に疾患進行を生じたmCRC患者が登録されたランダム化二重盲検国際共同試験に基づくものです。

本試験には、1072人の患者が登録され、FOLFIRI+ラムシルマブ投与群とFOLFIRI+プラセボ投与群にそれぞれ536人が割り付けられました。両群の治療サイクルは2週毎であり、ラムシルマブは8 mg/kg(体重)の用量にて静脈内注入されました。治療は疾患進行または容認できない毒性の発現まで継続されました。

主要評価項目は全生存期間とし、副次評価項目は無増悪生存期間および安全性としました。治療の割り付けは地理的な領域(北米対欧州対他地域)、腫瘍のKRAS遺伝子ステータス(ワイルドタイプ対変異)および一次治療開始から疾患進行までの時間(6カ月未満対6カ月以上)により層別化されました。

試験の母集団の年齢中央値は62歳であり、57%が男性、99%がECOGパフォーマンスステータス0または1でした。FOLFIRI+プラセボ投与群と比較して、FOLFIRI+ラムシルマブ投与群において、全生存期間に統計的に有意な改善がみられました[全生存期間中央値:13.3 11.7 カ月;HR 0.8595 CI0.730.98)、p=0.023、層別化されたログランク検定]。FOLFIRI+ラムシルマブ投与群の無増悪生存期間にも有意な改善がみられました[無増悪生存期間中央値:5.7 4.5 カ月;HR 0.7995 CI: 0.70, 0.90)、p<0.001]。

安全性データは、過去の承認適応で確立された既知の安全性プロファイルと概ね一致しました。しかし、mCRC患者の甲状腺をモニタリングしたところ、そのうちの2.6%から甲状腺機能不全(甲状腺機能低下症)が報告されました。

ベバシズマブを含む一次治療レジメン施行中の疾患進行後の、FOLFIRI療法との併用下でのラムシルマブの推奨用量および投与計画は、ラムシルマブ8 mg/kg(2週毎、60分間の静脈内注入)とされました。

--------------------------------
原信田みを訳
高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)監修
--------------------------------

白金製剤抵抗性転移性非小細胞肺がんに対するドセタキセル併用下での承認

2014年12月12日、米国食品医薬品局(FDA)は、白金製剤ベースの化学療法施行中または施行後に増殖を続けている転移性非小細胞肺がん(NSCLC)を有する患者に対して、ドセタキセル併用下でのラムシルマブ(サイラムザ注、イーライ・リリー社製)を承認しました。上皮増殖因子受容体(EGFR)または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子変異を有する患者では、ラムシルマブ投与前に、これらの適応症に対するFDA承認薬による治療中に疾患進行がみられました。

NSCLC患者に対するドセタキセル併用下でのラムシルマブの承認は、多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験(I4T-MC-JVBA)で全生存期間の改善が示されたことに基づくものです。この試験には、転移性NSCLCの治療歴のある1253人の患者が登録されました。患者はラムシルマブ+ドセタキセル併用投与群またはプラセボ+ドセタキセル投与群に無作為に割り付けられ、それぞれ3週毎1回の投与を受けました。

全生存期間に関して統計的に有意な増加が示されました[HR 0.86;(95 CI0.75, 0.98;)p=0.024]。ラムシルマブ+ドセタキセル併用投与群の全生存期間中央値10.5カ月に対し、プラセボ+ドセタキセル投与群では9.1カ月でした。無増悪生存期間についても、ラムシルマブ+ドセタキセル併用投与群のほうが有意に長くなりました[HR=0.7695 CI0.680.86);p<0.001)]。

少なくとも1回試験薬を投与された1245人の患者の安全性データが評価されました。ラムシルマブ+ドセタキセル併用投与群において報告頻度が最も多かった副作用(患者の30%以上にみられた)は、好中球減少症、疲労/無力症および口内炎/粘膜炎でした。ラムシルマブ+ドセタキセル併用投与群において最もよくみられた重篤な副作用は、発熱性好中球減少症(14%)、肺炎(6%)および好中球減少症(5%)でした。

NSCLCに対するドセタキセル併用下でのラムシルマブの推奨用量および投与計画は、ラムシルマブ10 mg/kgおよびドセタキセル75 mg/m2(いずれも、21日サイクルの1日目に静脈内投与)とされました。

--------------------------------
原信田みを訳
北村裕太(内科/東京医科歯科大学医学部付属病院)監修
--------------------------------

進行性胃がんもしくは胃食道接合部腺がんに対しパクリタキセルとの併用を承認

米国食品医薬品局(FDA)は2014115日、ラムシルマブ(CyramzaEli Lilly and Company製)を進行性胃がんもしくは胃食道接合部(GEJ)腺がん患者を治療するため、パクリタキセルとの併用で使用することを承認しました。ラムシルマブは20144月、プラチナ含有またはフルオロピリミジン含有の化学療法を用いた一次治療が奏効しなかったか、あるいは増悪が続いていた進行性胃がんもしくはGEJ腺がん患者を治療する単剤としての使用が承認されていました。

ラムシルマブのパクリタキセル併用での承認は、多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照の第3相臨床試験(I4T-IE-JVBE)における全生存が向上した実証に基づいて行われました。この試験では、パクリタキセル+ラムシルマブと、パクリタキセル+プラセボを比較しました。試験の主要転帰は、全生存期間でした。二次転帰尺度は、無増悪生存期間と安全性などでした。

試験では、前治療歴のある進行性または転移性胃がんもしくはGEJ腺がん患者665人を組み入れました。患者のうち330人はパクリタキセル+ラムシルマブ投与群に割り付けられ、335人はパクリタキセル+プラセボ投与群に割り付けられました。

全生存期間は、パクリタキセル+ラムシルマブ投与群の患者の方が、パクリタキセル+プラセボ投与群の患者より統計学的に有意に延長しており[HR 0.81;(95%CI: 0.68, 0.96); p=0.017(層別ログランク検定)]、全生存期間の中央値は、パクリタキセル+ラムシルマブ投与群が9.6カ月だったのに対し、パクリタキセル+プラセボ投与群は7.4カ月でした。

無増悪生存期間も、パクリタキセル+ラムシルマブ投与群の患者の方が、統計学的に有意に延長しており[HR=0.64(95%CI: 0.54, 0.75); p<0.001(層別ログランク検定)]、無増悪生存期間の中央値は、パクリタキセル+ラムシルマブ投与群が4.4カ月だったのに対し、パクリタキセル+プラセボ投与群は2.9カ月でした。

安全性データは、試験薬の投与を1回でも受けた患者656人で評価されました。パクリタキセルとラムシルマブの併用により最も多く報告された有害反応(少なくとも患者の30%)は、疲労/脱力、好中球減少症、下痢、鼻出血でした。パクリタキセルとラムシルマブの併用による最もよくみられた重篤な有害反応は、好中球減少症(患者の3.7%)および発熱性好中球減少症(患者の2.4%)でした。

進行性胃がんもしくはGEJ腺がんに対するパクリタキセルとラムシルマブの併用の推奨用量とスケジュールは、ラムシルマブ8 mg/kgを2週間ごとに静脈内投与し、28日サイクルごとに3週間で週1回パクリタキセルを80 mg/m2静脈内投与します。治療は疾患の増悪あるいは容認できない毒性がみられるまで続行しなければなりません。

--------------------------------
太田奈津美訳
林正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)監修
--------------------------------

胃癌もしくは胃食道接合部腺癌への承認
米国食品医薬品局(FDA)は2014年4月21日、フルオロピリミジン含有かプラチナ含有製剤の化学療法の治療後もしくは投与中に、進行または転移性の胃癌もしくは胃食道接合部腺癌が増悪した患者に対し、単剤治療としての治療にラムシルマブ(Cyramza™、Eli Lilly and Company製)を承認しました。ラムシルマブは、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)に結合し、受容体の活性化を阻害するIgG1クラスの組み換えモノクロナール抗体です。

この承認は、前治療歴のある進行または転移性の胃癌もしくは胃食道接合部腺癌患者355人を対象とした、多国籍無作為化二重盲検試験(I4T-IE-JVBD)で、全生存期間の改善での実証に基づいています。I4T-IE-JVBD試験に参加した患者は、2対1の割合で無作為化され、2/3がラムシルマブに加え最善の対症療法(BSC)、1/3がプラセボに加えBSCを投与されています。

この試験では、ラムシルマブ投与群で全生存期間中央値が5.2カ月、プラセボ投与群で3.8カ月であった[HR 0.78 (95 percent CI: 0.60, 0.998), p =0.047]。また、無増悪生存期間も、プラセボ投与群と比較してラムシルマブ群の方が長かったです[HR 0.48 (95 percent CI: 0.38, 0.62), p <0.001, 層別ログランク検定]。

ラムシルマブを単剤治療とし安全性を評価した。570人の患者のうち局所進行または転移性胃癌もしくは胃食道接合部腺癌で、ECOG一般状態指標が1かそれ以下であるI4T-IE-JVBD試験でラムシルマブ投与された236人も含みます。ラムシルマブ投与群で、すべてのグレードで最も多くみられた有害反応は高血圧と下痢であり、10%の確率で出現し、プラセボ投与群より少なくとも2%も高かったです。ラムシルマブ投与群でより多くみられたグレード3から4の有害反応(両群間で少なくとも2%の差がある)は、高血圧と低ナトリウム血症(血液中のナトリウムが低い)です。ラムシルマブ投与群で、最も多くみられた重篤な有害事象は、腸閉塞(2.1%)と貧血(3.8%)でした。製品添付文書に載っている他の重要な危険性は、出血、動脈血栓塞栓イベント、注射関連反応、胃腸穿孔、創傷治癒障害、肝炎患者の臨床症状の増悪、および可逆性後部白質脳症です。

依頼者がここ最近発表した多国籍無作為化プラセボ対照試験であるI4T-IE-JVBE試験の結果では、665人の前治療歴のある進行または転移性の胃癌もしくは胃食道接合部腺癌患者が参加し、パクリタクセルに加えプラセボ投与もしくは、パクリタクセルに加えラムシルマブ投与のいずれかでした。この試験では、ラムシルマブとの併用により延命効果があることが明らかとなりました。

推奨されるラムシルマブの投与量とスケジュールは、8 mg/kg で2週間ごとに60分の静脈注射を投与します。

--------------------------------
松川みれい 訳
畑啓昭(消化器外科/京都医療センター)監修
--------------------------------

この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望の画像

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望

研究者らは、TP53遺伝子に変異があるがん細胞を選択的に殺す薬剤組み合わせを特定した。その遺伝子変異は、大半の大腸がんや膵臓がんなど、あらゆるがん種の半数以上にみられる。

NCIが一部資...
大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連の画像

大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連

フレッドハッチンソンがん研究センターNature誌に発表された研究によると、Fusobacterium nucleatumの亜型がヒトの大腸がん増殖の根底にあり、スクリーニングや治療に...
大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性の画像

大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ転移が始まった大腸がんに対する手術の後、多くの人はそのまま化学療法を受ける。この術後(アジュバント)治療の背景にある考え方は、がんが体内の他...
認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足の画像

認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足

オハイオ州立大学総合がんセンター仕事中にあまり身体を動かさず肥満率が上昇している現代アメリカでは、何を飲食し、どのくらい身体を動かすかによって大腸がん(30〜50代の罹患者が増...