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BRCA1遺伝子変異を持つ女性では、早期の予防的卵巣摘出術により最大の有益性が得られることが大規模試験で示される

BRCA遺伝子変異を持つすべての女性において死亡リスクが大幅に低下

 

 BRCA1遺伝子変異を持つ女性では、予防的卵巣摘出術の実施時期を35歳過ぎまで延期した場合、予防的手術前または手術時点での卵巣癌発症リスクが上昇することが示されたため、35歳までに手術を受けるべきであるとの結果が大規模国際共同前方視的研究の結果から初めて示唆された。この研究は、Journal of Clinical Oncology誌に発表された。一方、BRCA2遺伝子変異を持つ女性は、35歳まで卵巣癌の発症リスクが上昇しないとみられ、35歳過ぎまで予防的手術を延期可能であることが示唆された。さらに、BRCA1およびBRCA2の両方の遺伝子変異を持つ女性は、予防的手術を受けることで、70歳までに死亡するリスクが77%低下した。 

 

 これまでの研究から、BRCA1遺伝子変異またはBRCA2遺伝子変異を持つ女性において、予防的卵巣摘出術が乳癌および卵巣癌の発症リスクを低下させることは示されていた。本研究は全死亡率の低下を示した最初の研究である。米国では、BRCA遺伝子変異があることを知った女性の70%もが予防的卵巣摘出術を選択する。医師の多くは、BRCA遺伝子変異を持つ女性に対して、35歳までに、あるいは出産が終了したら予防的手術を受けるよう推奨している。しかし、予防的手術を受ける最適な年齢や、全死亡リスクに対する予防的手術の効果について、十分な研究は行われていなかった。

 

 カナダToronto大学の内科学教授で、本研究の筆頭著者であるSteven Narod医師は、「予防的卵巣摘出術の実施時期を35歳過ぎまで延期することはリスクが大きすぎます」と述べた。「本研究のデータはきわめて衝撃的なものであり、BRCA1遺伝子変異を持つ女性では、35歳までに予防的卵巣摘出術を実施することを国際標準とすべきと考えられます」。

 

 また、Narod医師は、「一方、BRCA2遺伝子変異を持つ女性は、卵巣癌の発症リスクがそれほど高くないため、予防的卵巣摘出術を40歳代まで問題なく延期できます」とつけ加えた。

 

 この「Hereditary Ovarian Cancer Clinical Study(遺伝性卵巣癌臨床研究)」では、カナダ、米国、ポーランド、ノルウェー、オーストリア、フランス、およびイタリアの研究者が国際レジストリーからBRCA遺伝子変異を持つ女性を抽出した。このうち妊娠出産歴や、手術歴(予防的卵巣摘出術および乳房切除術を含む)、ホルモン療法の使用に関する質問票に全て回答した女性は5787人であった。本研究は1995年に開始し、2011年まで追跡調査され、予防的卵巣摘出術と、卵巣癌、卵管癌、および原発性腹膜(腹腔内)癌の発生率、ならびに70歳までの全死亡率との関連性を評価した。

 

 BRCA遺伝子変異を持つ女性5787人に対する予防的卵巣摘出術の実施状況は、未実施2274人、研究開始時に実施済2123人、追跡調査中に実施1390人であった。平均5.6年間の追跡調査(16年間もの長きにわたり追跡調査した女性を含む)で、186人が卵巣癌、卵管癌、または腹膜癌を発生した。

 

 全体では、予防的卵巣摘出術により、卵巣癌の発症リスクは80%低下した。BRCA1遺伝子変異を持つ女性における卵巣癌の発症リスクは、手術を40歳まで延期することで4%上昇し、50歳まで延期することで14.2%上昇すると推定された。一方、BRCA2遺伝子変異を持つ女性で、50歳前に卵巣癌と診断された女性は1人だけであった。なお、すべての女性(BRCA遺伝子変異を持たない女性を含む)における卵巣癌の生涯リスクは低く1.4%である。

 

 研究期間中に死亡した女性は511人であり、333人は乳癌による死亡、68人は卵巣癌、卵管癌、または腹膜癌による死亡、残りの女性はその他の原因による死亡であった。予防的卵巣摘出術は、すべての原因による死亡リスクを77%低下させた(この死亡リスクの低下は、主として卵巣癌、卵管癌、腹膜癌、および乳癌による死亡リスクの低下による)。予防的卵巣摘出術の死亡リスクへの効果(死亡リスクの77%低下)は化学療法よりも優れており、BRCA1遺伝子変異を持つ女性およびBRCA2遺伝子変異を持つ女性の両者に対して同様に強力な効果を表す、とNarod医師は指摘した。

 

 また、同研究グループによる先行研究から、予防的卵巣摘出術は、BRCA1遺伝子変異を持つ女性の乳癌発生リスクを48%低下させ、さらに乳癌と診断されたBRCA1遺伝子変異を持つ女性の乳癌死リスクを70%低下させることも示されていた。

 

 ASCOの見解

ASCO Cancer Communications Committee(ASCOがんコミュニケーション委員会)のメンバーであるDon Dizon医師は、「BRCA遺伝子変異を持つ女性は、予防的卵巣摘出術を受けるかどうかや、いつ受けるかについて難しい決断を迫られます。このような女性に対して、これらの結果は大きな変化をもたらすと考えられます。BRCA1遺伝子変異を持つ女性では、これらの結果から、(家族計画などを考慮のうえ)可能な限り速やかに予防的卵巣摘出術を実施すべきであることが示唆されます」と述べた。「予防的卵巣摘出術を人生の早期に受けようと考えている女性は、予防的手術によって長期にわたり有益性が得られることと、卵巣癌の発症リスクに加えて全死亡リスクも大幅に低下すると知ることで安心できます。これは重要なことです」。

翻訳永瀬祐子

監修喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院)

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