リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通常の平均余命にまで回復

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断された患者で、診断後2年の間に、がん関連転帰イベントを発症していない場合、余命は診断前と本質的に変わらないという研究結果を、メイヨークリニックが明らかにした。がん関連転帰イベントとは、疾患の進行や再発、再治療が必要になった場合、あるいは死亡した場合を指す。

本研究はthe Journal of Clinical Oncology誌に掲載されている。発表された研究結果によると、24か月時点は患者と長期予後についての話をする適切な段階であり、新たに診断されたDLBCLの将来の臨床研究の上で早期エンドポイントとしても重要な通過地点である。

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫は、もっとも多くみられるリンパ腫の一種で、米国では毎年20,000人が新たに診断されている。患者の大半は現在の免疫化学療法を用いた標準治療により完治しているが、20-40%の患者に通常1年以内の間に再発が見られる。生物統計学助教授で本研究の筆頭著者である Mathew Maurer氏率いる研究チームは、DLBCL患者のがん関連転帰イベントの発症時期と種類に焦点を当て、イベントが消失し、患者の死亡率が一般集団の死亡率と同程度になる時期を調べた。

「患者さんは自分の病気について良いことも悪いことも知りたいし、経過や長期的な死亡リスクも知りたがります」と、Maurer氏は言う。「無病期間中、再発リスクの変化を評価することは極めて有益であり、2年間無病状態にあれば、リンパ腫による死亡率よりも他の要因による死亡率の方が高くなると言えるでしょう」とも言う。

研究者らは、メイヨークリニックとアイオワ大学のリンパ腫リサーチエクセレンス専門プログラム (SPORE) の分子疫学リソースデータベースに登録されている、リツキシマブとアントラサイクリン系抗がん剤投与治療を受けたDLBCL患者767人の追跡調査を実施した。病理記録や医療記録の再検討の結果、がん関連転帰イベントの存在に気付いた。

調査により、診断時に告げられた余命が著しく短くても、無病状態を維持できれば、予後は改善し、診断後24カ月時には、年齢と性別をマッチさせた健常者の平均余命と変わらないまでになることが分かった。この結果はフランスの2つのリンパ腫レジストリに登録されている患者820人を新たに対象とした調査によっても実証された。

Maurer氏率いる研究チームがコンピュータ上で臨床試験シミュレーションを行った結果、DLBCL患者の再発を2年以上追跡することにほとんど意義はなく、この時点を超えて発現したイベントは、リンパ腫に関係する場合と同じくらい、関係しない場合もありうることが示された。

「2年時点に達しても病気が治癒したわけではないという認識を持っておくことは大切です。2年経過した後に、患者の約8%に再発がみられたが、再発率としては低く、再発した場合でもサルベージ療法による治療を受けることで、リンパ腫による死亡リスクは心臓病や脳卒中などの疾患による死亡リスクよりも低くなると言えます。このことから、こういった患者に対するサバイバーシップが重要なのです」とMaurer氏は述べている。

この結果をもとに、Maurer氏率いる研究チームは、2年エンドポイントに基づいたDLBCL予後のためのリスクモデルを開発した。臨床医たちがDLBCL患者の予後を簡単に測定できる手段として、暫定版を携帯アプリとして、医療アプリサイト「QxMD」より入手できる。また、始まったばかりではあるが、このリスクモデルを他のリンパ腫にも応用することを検討している。

共著者は以下の通りである。 Thomas Witzig, M.D.Carrie Thompson, M.D.Ivana Micallef, M.D.William Macon, M.D.,Paul Kurtin, M.D., Cristine Allmer, Susan Slager, Ph.D.Thomas Habermann, M.D., and James Cerhan, M.D., Ph.D. , all of Mayo Clinic; Sergei Syrbu, M.D. and Brian Link, M.D. from the University of Iowa and Herve Ghesquieres, M.D., Ph.D., Jean-Philippe Jais, M.D., Corinne Haioun, M.D., Richard Delarue, M.D., Frederic Peyrade, M.D., Thierry Jo Molina, M.D., Ph.D., Nicolas Ketterer, M.D., Olivier Fitoussi, M.D., Emmanuelle Nicolas-Virelizier, M.D., Gilles Salles, M.D., Ph.D., and Herve Tilly, M.D. from the Lymphoma Study Association in France.

本研究は、アメリカ国立衛生研究所、メイヨークリニック/アイオワ大学リンパ腫リサーチエクセレンス専門プログラム(SPORE)、Henry J. Predolin財団の助成を受けた。

翻訳担当者 今泉眞希子

監修 東 光久(血液癌・腫瘍内科領域担当/天理よろづ相談所病院)

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