OncoLog2013年5月号◆血液悪性腫瘍患者における侵襲性真菌感染症の診断と治療 | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog2013年5月号◆血液悪性腫瘍患者における侵襲性真菌感染症の診断と治療

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OncoLog2013年5月号◆血液悪性腫瘍患者における侵襲性真菌感染症の診断と治療

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog誌2013年5月号

MDアンダーソン OncoLog 2013年5月号(Volume 58 / Number 5)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

血液悪性腫瘍患者における侵襲性真菌感染症の診断と治療

侵襲性真菌感染症は血液悪性腫瘍患者の重要な合併症であり、死亡の原因として重要なものである。日和見真菌感染症の管理は格段の進歩をとげているが、その診断と治療は今日もなお問題点を残している。

 

白血病およびリンパ腫患者の多くは高用量の化学療法を受けている。幹細胞移植がその後に行われることもあり、患者の免疫系が危険にさらされることがある。その結果、血液悪性腫瘍患者の8~10%に侵襲性真菌感染症が発生する。「これらの患者では免疫応答を効果的に高めることができないので、こうした感染症の多くでは死亡率が50%を超す結果となっています」とテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター感染症部門の教授であるDimitrios Kontoyiannis医師は述べている。さらにKontoyiannis医師は、感染症により化学療法が減量されたり、中断されたりする患者では、真菌感染症が死亡原因の一つになることもあると述べている。

 

真菌感染症の種類

真菌感染症の診断と治療を専門に研究しているKontoyiannis医師によると、血液悪性腫瘍患者の侵襲性真菌感染症でもっとも多いのはアスペルギルス症とカンジダ症である。

 

アスペルギルス属は環境のいたるところに存在する数百の種で構成されており、免疫系が健全な人々には危険はほとんどない。しかし、免疫不全患者では、アスペルギルス・フミガーツスや頻度は低いが他のアスペルギルス種による感染を起こしやすい。

 

免疫不全患者ではコロニーを形成したカンジダ属酵母が血流に入ると侵襲性カンジダ症を発症する。血液悪性腫瘍患者では、通常であれば酵母の成長を阻害する有益な細菌が抗生剤により死滅しているので、こうしたことは消化器系でよくみられることである。また、カンジダ感染症はカテーテル刺入部位にも発生する。

 

クリプトコッカス症やムコール症などのあまり一般的でない侵襲性真菌感染症も血液悪性腫瘍患者にとっては脅威である。

 

診断

侵襲性真菌感染症の症状は非特異的であるため、診断が遅れることがある。たとえば、侵襲性カンジダ症のもっとも一般的な症状は持続性の発熱である。

 

侵襲性アスペルギルス症では、最初に肺炎または副鼻腔感染症の徴候が現れる場合と、肺実質において比較的無症状な病変として発症する場合がある。肺炎や副鼻腔感染症として発症する場合は、状況に一致した症状を伴う。

 

気道の真菌感染症は胸部X線、またはより早期ではCT検査による検出が可能かもしれない。画像診断では真菌感染と細菌感染を区別することが常に可能とは限らないので、感染部位をより良好に視覚化し、組織試料を採取するには気管支鏡検査が行われることがある。

 

侵襲性真菌感染症の確定診断には組織、血液あるいは他の体液の培養が行われる。しかし、こうした検査には時間がかかるので、治療は臨床的な疑いに基づいて、経験的に開始される。また、一部の血液悪性腫瘍患者では併発症状のために組織生検ができないことがあったり、抗真菌剤による前治療により特異的な診断が困難なこともある。

 

こうしたことがあるため、研究者らは血清マーカーを使った新規の診断法を開発している。たとえば、アスペルギルス細胞壁の構成成分であるガラクトマンナンを検出する酵素免疫測定法(ELISA法)は、血清検体のへの適応が米国FDAによって認可されている。血清ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)は真菌の種類を迅速かつ正確に特定できる。しかしこれらの検査法は真菌感染症の診断には、まだ日常的には行われてはいない。Kontoyiannis医師は従来の血液培養を基にした検査法よりもさらに初期の段階で検査が可能な、新規の磁気ナノテクノロジーによるカンジダ症の診断に関するふたつの臨床研究を指導している。

 

治療と予防

1990年代中旬までは、デオキシコール酸アムホテリシンBが侵襲性真菌感染症治療の主要な薬剤であった。過去20年間に医師たちは、こうした感染症を治療する、効果的で毒性のより少ない薬剤が急激に増えてきた事実を目の当たりにしてきたのである。特にアムホテリシンBの腎毒性の少ないリポ化製剤、広域スペクトラムのアゾール系(例えばボリコナゾールやポサコナゾール)やエキノキャンディン系(真菌の細胞壁合成を阻害する)は、今日では治療や予防にごく普通に使用されている。

 

抗真菌薬の予防投与は,例えば白血病患者や幹細胞移植患者など、侵襲性真菌感染症に対してハイリスクの患者には効果的である。しかし、予防ガイドラインは施設によって様々である。新世代のアゾール系は今日では予防の目的に通常は使用されているが、この目的に使用される数多くの抗真菌剤のに対してその有効性を評価した直接比較の前向き(臨床)試験はほとんど存在しない現状がある。

 

経験的な抗真菌療法は通常、広域スペクトラムの抗菌薬による治療の3日から7日後に、持続する好中球減少と発熱のある患者に対して行われる。単剤で行う経験的治療に一般的に用いられる薬剤にはアムホテリシンBリポ化製剤、カスポファンギンなどのエキノキャンディン系、またはボリコナゾールなどのトリアゾール系がある。これらの薬剤はいずれもさまざまな真菌感染症に対して効果がある。

 

真菌に対する一次療法に使用する薬剤の選択は、患者に特有の感染のタイプや感染巣、感染の重症度、臓器毒性の可能性および考えられる薬物間相互作用により決まり、「真菌性疾患に対する治療を早期に始めるほど、良好な結果が得られます」とKontoyiannis医師は述べている。

 

侵襲性真菌症治療の一次治療に用いられる主な薬剤はエキノキャンディン系であるが、アゾール系またはエキノキャンディン系による治療後の患者ではリポ化アムホテリシンB製剤が用いられる。リポ化アムホテリシンB製剤の使用で成功を収めてきているが、ボリコナゾールは侵襲性アスペルギルス症の第一選択薬である。侵襲性アスペルギルス症の一次治療としてボリコナゾールと他の薬剤との併用が研究されているが、データをみると、併用療法の広範な適用は勧められない。Kontoyiannis医師は、併用療法を選択するかどうかの決定は症例に応じて検討すべきであると述べている。

 

真菌に対する一次治療に失敗した場合、患者特性と前治療は救援療法に用いる薬剤の選択に影響を及ぼす。抗真菌剤が無効である肺の真菌性病変は、病変の数やその位置から可能であれば、外科的に切除してよい。幹細胞移植を行っていない、全身状態の良好な一部の患者では手術が考慮されるとKontoyiannis医師は述べている。

 

将来の目標

過去10年間に侵襲性真菌感染症の治療は改善されてきたが、研究者らは新規の抗真菌剤を開発するうえで障害に直面している。「真菌とヒトはどちらも真核生物であるため、宿主を巻き添えにすることなく破壊できる細胞内標的を見つけることは困難です。また、当然のことながら、製薬会社は比較的需要の少ない市場を避けようとするため、抗真菌剤を開発するパイプラインは現在のところ実質的に空っぽであると言えます。

 

従って、適応の異なる抗真菌剤を論理的に使用し、公式ガイドラインと抗真菌薬管理プログラムを考慮に入れながら、真菌に対してわれわれが現在持っている医療設備を賢く上手に管理していくことが重要です」とKontoyiannis医師は述べている。

 

それでもなお、血液悪性腫瘍患者の侵襲性真菌感染症に対する治療と予防について、研究者らは新たな方法の探求を続けている。感染症部門の准教授であるJavier Adachi医師は、Kontoyianni医師や他の同僚とともに、幹細胞移植後の移植片対宿主病 (GVHD)患者の真菌感染症に対する間歇的なエキノキャンディン系抗真菌剤の使用について臨床研究を計画中である。

 

また、感染症部門のトップであるIssam Raad医師は、幹細胞移植患者を含め、真菌感染症のリスクの高い血液悪性腫瘍患者の治療と予防に、トリアゾール系のポサコナゾールを薬物動態学的に改良した薬剤の研究を計画中である。

 

最後に、免疫不全の患者における日和見真菌感染症の予防と治療に対する成長因子や白血球輸注、またはその両方によって、免疫を強化する治療戦略は研究の重要な領域として残っている。

 

研究者たちは抗真菌療法の改良に取り組んでいるが、血液悪性腫瘍患者にとっては正確な早期診断と迅速な治療が侵襲性真菌感染症と戦う上で鍵となる。「これらは比較的珍しい感染症であり、特に感染が慢性的で、複雑化あるいは耐性化した患者には、大規模な施設で臨床真菌学のエキスパートによる管理が必要です」とKontoyiannis医師は述べている。

 

【写真キャプション訳】

(1,2枚目下)侵襲性感染症は皮膚を含め、様々な臓器に蔓延する。写真はフザリウム属(上段)およびカンジダ属(下段)による播種性感染症。
(3枚目下) 肺カンジダ感染症の胸部レントゲン写真(くもりの部分)
(4枚目下) 多発性真菌病巣のCT画像(矢印)

— Bryan Tutt

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳小縣正幸

監修佐々木裕哉 (血液内科/小倉記念病院)

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