2012/08/07号◆癌研究ハイライト「一部の転移性乳癌患者に対する新たな治療選択肢の提言」「検診の推奨改定により、米国の前立腺癌発症率が減少」「単回のHPV検査が18年間にわたる子宮頸癌発症リスクを予測」「脳腫瘍の融合遺伝子発見で示唆される新たな治療法」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/08/07号◆癌研究ハイライト「一部の転移性乳癌患者に対する新たな治療選択肢の提言」「検診の推奨改定により、米国の前立腺癌発症率が減少」「単回のHPV検査が18年間にわたる子宮頸癌発症リスクを予測」「脳腫瘍の融合遺伝子発見で示唆される新たな治療法」

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2012/08/07号◆癌研究ハイライト「一部の転移性乳癌患者に対する新たな治療選択肢の提言」「検診の推奨改定により、米国の前立腺癌発症率が減少」「単回のHPV検査が18年間にわたる子宮頸癌発症リスクを予測」「脳腫瘍の融合遺伝子発見で示唆される新たな治療法」

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NCI Cancer Bulletin2012年8月7日号(Volume 9 / Number 16)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・一部の転移性乳癌患者に対する新たな治療選択肢の提言
・検診の推奨改定により、米国の前立腺癌発症率が減少
・単回のHPV検査が18年間にわたる子宮頸癌発症リスクを予測
・脳腫瘍の融合遺伝子発見で示唆される新たな治療法

臨床試験が転移性乳癌患者の一部に対して新しい治療選択肢を提言

転移性乳癌患者の一部に対し、癌の増殖を刺激するエストロゲンの働きを異なる方法で阻害する2剤を併用することで、病状進行を遅らせ生存延長につながるかもしれないことが第3相臨床試験の結果で示された。この結果は、New England Journal of Medicine誌8月2日号に掲載された。

しかし複数の乳癌専門医は、この試験結果は、現在の治療法を変えるのに十分ではなく、確認が必要であると注意を促した。

本試験で、アロマターゼ阻害剤のアナストロゾール(アリミデックス)と抗エストロゲン剤のフルベストラント(フェソロデックス)による併用治療を施行した転移性乳癌患者は、アナストロゾール単剤治療の患者より無増悪生存期間も全生存期間も良い結果であった。両剤ともすでに転移性乳癌の治療薬として承認されている。

NCIが資金提供し、かつて米国南西部がん臨床試験グループと呼ばれていたSWOGが主体となって実施した本試験に、およそ700人の乳癌患者が参加した。試験の全参加者は、閉経後のホルモン受容体陽性転移性乳癌患者で、転移癌の治療は受けていなかった。併用群の患者には、初回投与時にフルベストラントの標準量である500mgを投与し、その後は250mgを投与した。アナストロゾール単剤群の患者の約40%は、乳癌が進行を始めた後に低用量のフルベストラントの治療を始めた。

この試験の主要評価項目である無増悪期間中央値は、併用群は15カ月であったの対して、アナストロゾール単剤群は13.5カ月であった。また、全生存期間は併用群では47.7カ月であったのに対して、アナストロゾール単剤群は41.3カ月であった。

毒性作用は比較的弱く、両群に著しい差はなかった。それでもなお、アナストロゾール単剤群の42人と併用群の51人に、筋骨格痛、インフルエンザ様症状、呼吸困難といった重症の毒性作用が認められた。

しかしこの結果は説得力のあるものである、と試験責任医師であるカリフォルニア大学アーバイン校のDr. Rita Mehta氏はインタビューで述べた。「フルベストラントとアナストロゾールの併用は、この試験に適格となるような患者の標準療法となるべきである」。

しかしNCI腫瘍内科のDr. Jung-Min Lee氏は、全生存期間は本試験の副次的評価項目であったと強調し、この併用療法が臨床の場で実施される前に解決すべき複数の問題があると述べた。「まず、この併用療法により最も恩恵を得ると思われる患者層を明確にする必要がある」と述べ、「次に、全生存期間の改善を確認するためにさらに多くのデータが必要である」と続けた。

本結果は、同様の国際的試験であるFACT試験の結果と矛盾する。FACT試験は、アナストロゾール+フルベストラント併用群とアナストロゾール単剤群の間で全生存期間に相違はないという結果を示していた。両試験には、おそらく矛盾する結果を説明できる複数の大きな違いがあったと、Mehta氏は述べた。

FACT試験は本試験より小規模で、タモキシフェンによる治療歴がある患者の参加が多く(70%、今回の試験は40%)、初期段階の化学療法を12カ月以内に終了し、かつ再発患者に限定していた。試験参加者層におけるこれらの相違が「相対的にホルモン抵抗性乳癌患者の試験参加を増やしたのであろう」と述べた。

本研究は、以下の国立衛生研究所の補助金助成を受けた(CA32102, CA38926, CA35431, CA35281, CA20319, CA04919, CA67575, CA58861, CA37981, CA46368, CA86780, CA46282, CA63848, CA12644, CA27057, CA95860, CA35119, CA46441, CA11083, CA45450, CA35178, CA13612, CA58882, CA45377, CA45807, CA58723, C14028, CA128567, CA22433, CA52654, CA45560, CA35261, CA073590, CA45808, CA35192, CA42777, CA16385, CA35176, CA63845, CA35128, CA35090, CA63844, CA76447, CA58416, CA63850, CA76462, CA35262, CA77202, CCSRI155469)

検診の推奨改定により、米国の前立腺癌発症率が減少

独立作業部会が前立腺特異抗原(PSA)検査による75歳以上の男性を対象とした前立腺癌検診を推奨しないこととした直後に発表された新しい分析では、この集団における早期前立腺癌発症率は以前に示された値より低かった。従って、推奨の改訂により高齢男性の前立腺癌検診実施率は減少することが予想される。

米国予防医療作業部会(USPSTF)は医学文献を系統的に検討し、2008年8月に勧告を発表した。

「このようなタイプの勧告が診療現場に影響をもたらすかということについては多くの疑念があるが、少なくともこれまでは多少の”影響”はあったようだ」とこの研究の著者であるエモリー大学のDr. David Howard氏はオンライン上に掲載されたインタビューで述べている。

7月23日付Archives of Internal Medicine誌に掲載されたHoward氏の分析には、NCI による癌登録(Surveillance, Epidemiology, and End Results)から25万4000人の前立腺癌患者のデータが用いられた。

Howard氏は、75歳以上の男性における検診実施率が減少すれば、進行前立腺癌の発症率および若年男性における早期前立腺癌の発症率に比較して、主にPSA検診で発見される早期前立腺癌発症率も減少するだろうとの仮説を立てた。「そして、この仮説どおりになった」と同氏はオンライン上のインタビューで述べた。

2007~2009年の間に、75歳以上の男性における早期および進行前立腺癌の発症率はそれぞれ25.4%および14.3%減少した。一方、同期間の早期前立腺癌発症率は、65~74歳男性で15.2%、30~64歳男性で11%減少した。

Howard氏の結論は、75歳以上の男性での自己申告によるPSA検診実施率は2005~2010年の間に変化していないという以前の報告とは異なるものである。この不一致の要因はいくつかあり、たとえば、「患者はPSA検査を受けたことを常に正確に報告するとは限らない」などといったことがあると同氏は電子メールで説明した。高齢男性患者の検診を、担当医師が患者と相談することなく中止してしまうこともあるという。

徐々に、検診推奨の改訂に対する医師らの反応が明確になってくるだろう。「Howard氏のデータは興味深く、意義のあるものだ」と、以前の研究の上席著者であるシカゴ大学のDr. Scott Eggener氏はコメントした。「自己申告によるデータであろうが集団ベースのデータであろうが、いずれにせよ多数の情報源を用いて再確認することが重要である」。

発表に向け現在査読を受けている研究においてHoward氏は、患者の自己申告よりも信頼できるものとしてメディケアの請求を直接用いたPSA検査実施率の調査も行った。この研究結果はまもなく発表される予定である。

詳細については「米国予防医療作業部会がPSA検診反対を勧告」を参照のこと。

単回のHPV検査が18年間にわたる子宮頸癌発症リスクを予測

2万人以上の女性集団において、ヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査は、18年間におよぶ追跡調査期間中の子宮頸癌発症リスクをパップテスト(子宮頸部細胞診)より正確に予測した。2年以内に高グレードの子宮頸部前癌病変または子宮頸部扁平上皮癌を発症する可能性が高い女性を特定することは、HPV検査でもハップテストでも可能であったが、最長で18年後の発症リスクを予測できるのはHPV検査のみであった。

米国臨床病理学会のDr. Philip Castle氏らは、この研究結果Journal of Clinical Oncology誌7月30日号に掲載した。

NCI癌疫学・遺伝学部門(DCEG)の研究者を含む著者らは、NCIによって始められた試験のデータと1989~1990年にポートランド(オレゴン州)で定期的にパップテストを行ったカイザーパーマネンテの女性データを用いた。本試験開始時に集めたサンプルは、パップテストとHPV検査で使用した。

このグループによって最近発表された報告でも、HPV検査は18年間の発症リスクを予測できることを示唆していたが、それらの結果は、研究の場で用いられているHPV検査に基づいたものであった。今回の新たな結果は、現行の臨床診察で用いられているHPV検査に基づいたものである。

研究者らは、パップテストよりHPV検査の方が、子宮頸癌発症リスクをより正確に階層化することを明らかにした。18年間の追跡調査期間に、199人の女性が子宮頸部上皮内腫瘍グレード3つまり子宮頸癌(CIN 3+)と診断された。パップテストで異常があった女性(65人)より、HPV検査陽性であった女性(112人)の方が多く発症した。

反対に、試験開始時のHPV検査が陰性であった女性は、同じく試験開始時のパップテストが正常であった女性より、追跡期間中にCIN 3+になった人数は少なかった(87人対134人)。

現在の検診ガイドラインは、35~65歳のほとんどの女性に対して、5年毎にパップテストと共に高リスクタイプのHPV検査を行うことを推奨している。

本研究の上席著者であるDCEGのDr. Sholom Wacholder氏は、この結果は、30歳以上の女性でHPV検査もパップテストも陰性の場合は、3年後と5年後に前癌状態または癌になるリスクは非常に低く、ガイドラインと一致していると述べた。

HPV検査とパップテストが共に陰性である30歳以上の女性が前癌状態もしくは癌を発症するリスク

   子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+  子宮頸部上皮内腫瘍(CIN3+
3年後のリスク 0.23% 0.08%
5年後のリスク 0.36% 0.16%

最近の報告書は、新たなガイドラインに従って5年毎にHPV検査とパップテストを行った場合、検診間隔が数年あることを心配する医師もいることを示している。

「HPV検査は子宮頸癌発症リスクを強力に予測するものである。この研究は、HPV検査とパップテストの両方が陰性の後は、検診間隔が長くなることを支持する証拠である」とWacholder氏は述べた。「単回のHPV検査で陰性であった女性では、10年以上におよびリスクが非常に低く、大きな安全性をもたらすものである。」

この研究は、一部NCIの内部研究プログラムの支援を受けた。

腫瘍の融合遺伝子発見により示唆される新たな治療法

最も死亡率の高い癌のひとつである膠芽腫のうち数%に、ふたつの遺伝子の一部がつなぎ合わさった変異があることが発見された。さらに、これらの融合遺伝子が作り出す異常なタンパク質は正常細胞を癌細胞へと変化させるが、こうした融合遺伝子の作用が他の癌に対して試験中の2つの試験薬により阻止されうることも示された。

7月26日付Science誌に発表されたこれらの研究結果により、膠芽腫患者の一部は新たに発見されたこの融合遺伝子が作り出す融合タンパク質を標的とする薬による治療が有効である可能性が示されている。

コロンビア大学医療センターのDr. Antonio Iavarone氏、Dr. Raul Rabadan氏、Dr. Anna Lasorella氏が率いるチームは、解析した膠芽腫のうち約3%にFGFR-TACC融合遺伝子が存在することを発見した。この融合遺伝子は、チロシンキナーゼを活性化し、数種類の癌において腫瘍の成長と生存を促進することが示された。

FGFR-TACC融合タンパク質は「強力な腫瘍形成促進効果を持っている」とIavarone氏は述べ、「この融合タンパク質を脳へ導入すると、正常な脳細胞を癌細胞へと変化させることができる」と説明した。FGFR-TACC融合タンパク質を健康なマウスに導入すると、8匹中7匹がヒトの膠芽腫に似た悪性脳腫瘍により死亡した。

別の実験では、FGFR-TACC融合タンパク質が細胞分裂の際に2つの娘細胞に染色体を分配するプロセスを阻害することも示されている。これは、染色体数が異常になる異数性という状態をもたらす。異数性は癌の特徴であるとIavarone氏は述べた。

さらに、この融合タンパク質のキナーゼ活性を阻害する化合物を用いると、異数性が修正され、FGFR-TACCを含むグリオーマ細胞の成長を阻止できることが発見された。また、これらの化合物は、FGFR-TACCにより引き起こされた悪性脳腫瘍を有するマウスで腫瘍の成長を遅らせ、マウスの生存期間を延長した。これらの化合物のうちAZD4547およびBGJ398の2種は、肺癌などの他の癌に対して早期臨床試験で試験中である。

以上の結果から、「このような遺伝子融合を有する腫瘍を標的とするこうした薬剤の臨床試験を行うべきであると確信している」とIavarone氏は述べた。 同氏および米国とヨーロッパの研究者らは共同研究グループを設立し、こうした試験の実現に向け製薬会社との協議を開始している。

さらなる情報については「一般的な癌と融合遺伝子との関連性」を参照のこと。

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野川恵子、北川瑠璃子 訳
原野謙一 (乳腺・婦人科癌/日本医科大学武蔵小杉病院)、西川 亮(脳・脊髄腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター) 監修
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