ネラチニブはHER2陽性乳癌の治療に有望である | 海外がん医療情報リファレンス

ネラチニブはHER2陽性乳癌の治療に有望である

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

ネラチニブはHER2陽性乳癌の治療に有望である

キャンサーコンサルタンツ

2009年12月

タキソール(パクリタキセル)にネラチニブを追加投与すると、HER2陽性(HER2+)転移性乳癌女性において有望な奏効率が得られたことが、国際第1・第2相臨床試験に参加した研究者らにより報告された。これら結果は2009年のサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表された[1]。

 

乳癌の20〜25%に、HER2の過剰発現が認められる。このHER2タンパクが過剰発現すると、癌細胞の過剰増殖が亢進され、乳癌の予後は不良となる。FDAが認可したHER2を標的とするHER2陽性乳癌の治療薬は、今のところハーセプチン(トラスツズマブ)だけである。ネラチニブは、HER4およびHER2と上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とした、臨床試験中の経口薬である。 2008年のSABCSで、進行HER2陽性乳癌患者136人を対象としたネラチニブ単独投与の第2相臨床試験の結果が発表された[2]。

 

前治療としてハーセプチンの投与を受けたことのある患者は66人、受けたことのない患者は70人であった。奏効率は、ハーセプチン投与歴のある患者では26%、投与歴のない患者では51%であった。2009年のSABCSでは、この試験におけるネラチニブ単剤投与による循環器系・消化器系に対する毒性についての詳細が発表された[3]。この発表では、ネラチニブ投与にともなう重篤な心毒性はなかったが、下痢が有意に認められ、治療の初期に起こったとのことであった。下痢は、対症療法や投与の中断・投与量の減量などの対策を取ることで、容易に管理可能であると示唆された。

 

現在進行中の、HER2陽性乳癌女性におけるナベルビン(ビノレルビン)と併用した場合のネラチニブの第1・第2相臨床試験の結果が、 2009年のSABCSで発表された[4]。固形癌患者を対象として、ネラチニブとゼロ−ダ(カペシタビン)との併用療法も評価された [5]。

 

しかし、この2つの試験では、奏効が認められた例は少なかった。 タキソールと併用した際のネラチニブの安全性と有効性を評価するため、HER2陽性転移性乳癌女性を対象とした第1・第2相臨床試験が実施された。本試験の参加者中、数人は以前に転移性乳癌に対する治療を受けていたが、他の女性は治療を受けていなかった。

 

この試験は現在も進行中であるが、解析の時点で、タキソールとネラチニブの併用療法を受けた99人に関する情報が利用可能であった。 併用療法後、患者の69%に検出可能な病変の部分または完全奏効が認められた。全奏効率は、転移性乳癌に対する治療歴のない患者では70%、治療歴のある患者では68%であった。無増悪生存期間は、およそ1年(52.1週間)であった。主な副作用は下痢で、患者の91%で発症した。

 

コメント:これら結果から、ネラチニブとタキソールの併用療法は、HER2陽性転移性乳癌に対して効果があることが示唆された。この結果を基に、HER2 陽性進行乳癌の初回治療におけるネラチニブ+タキソールの併用療法をハーセプチン+タキソールの併用療法と比較するため、現在第3相臨床試験が行われている。

参考文献:

[1] Chow L, Gupta S, Hershman DL et al. Safety and efficacy of neratinib (HKI-272) in combination with paclitaxel in ErbB2+ metastatic breast cancer. Presented at the 32nd CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 9-13, 2009. San Antonio, TX. Abstract 5081.

[2] Burstein HJ, Sun Y, Tan AR, et al. Neratinib (HKI-272), An irreversible pan erbB receptor tyrosine kinase inhibitor: phase 2 results in patients with advanced HER2+ breast cancer. Cancer Research. 2009;69:meeting abstract supplement, page 725.

[3] Burstein HJ, Sun Y, Dirix L, et al. Gastrointestinal and cardiovascular safety profiles of neratinib monotherapy in patients with advanced ErbB2-positive breast cancer. Presented at the 32nd CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 9-13, 2009. San Antonio, TX. Abstract 5096.

[4] Awada A, Dirix L, Beck J, et al. Safety and efficach of neratinib (HKI-272) in combination with vinorelbine in ErbB2+ metastatic breast cancer. Presented at the 32nd CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 9-13, 2009. San Antonio, TX. Abstract 5095.

[5] Saura C, Martin M, MOroose R, et al. Safety of neraatinib (HKI-272) in combination with capecitabine in patients with solid tumors: a phase I/II study. Presented at the 32nd CTRC-AACR San Antonio Breast Cancer Symposium. December 9-13, 2009. San Antonio, TX. Abstract 5108

 


c1998- 2009CancerConsultants.comAll Rights Reserved. These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein. Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.

本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。 Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容は Cancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳 山下裕子

監修島村 義樹(薬学)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5早期乳がんの一部は小さくても悪性度が高い
  6. 6ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  7. 7FDAがCAR-T 細胞療法Yescartaを成人大...
  8. 8コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  9. 9乳がん治験薬エンドキシフェン、NCIの支援により研究...
  10. 10濾胞性リンパ腫治療の新時代

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他