2012/05/29号◆癌研究ハイライト「CTスキャンによる肺癌検診の有益性と有害性を専門家委員会が検討」「肺癌薬は数種の小児癌に有望」「化学療法後の「突出性」悪心嘔吐を統合失調症治療薬でコントロール」「分子標的薬が進行固形癌と脳転移に有望」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/05/29号◆癌研究ハイライト「CTスキャンによる肺癌検診の有益性と有害性を専門家委員会が検討」「肺癌薬は数種の小児癌に有望」「化学療法後の「突出性」悪心嘔吐を統合失調症治療薬でコントロール」「分子標的薬が進行固形癌と脳転移に有望」

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2012/05/29号◆癌研究ハイライト「CTスキャンによる肺癌検診の有益性と有害性を専門家委員会が検討」「肺癌薬は数種の小児癌に有望」「化学療法後の「突出性」悪心嘔吐を統合失調症治療薬でコントロール」「分子標的薬が進行固形癌と脳転移に有望」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年5月29日号(Volume 9 / Number 11)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・CTスキャンによる肺癌検診の有益性と有害性を専門家委員会が検討
・肺癌薬は数種の小児癌に有望(ASCO)
・化学療法後の「突出性」悪心嘔吐を統合失調症治療薬でコントロール(ASCO)
・分子標的薬dabrafenibが進行固形癌と脳転移に有望(ASCO)
・(囲み記事)その他のジャーナル記事:高齢の体重過多の癌サバイバーの減量と食事の改善を支援するプログラム
・(囲み記事)その他のジャーナル記事:コーヒー摂取が死亡リスク低下に関連する

CTスキャンによる肺癌検診の有益性と有害性を専門家委員会が検討

専門家委員会は、低線量コンピュータ断層撮影(CT)を用いた肺癌検診の有益性と有害性に関する証拠を再調査し、肺癌リスクの高い人において有益な可能性があると結論づけた。しかし委員会は、検診の潜在的な有害性についてや、臨床現場で検診をどのように解釈するかについて、多くの疑問が残ると警告した。

JAMA誌5月20日号に発表された総説は、アメリカ癌協会、米国胸部専門医学会(ACCP)、米国臨床腫瘍学会(ASCO)、および全米総合がんセンターネットワークの共同作業によるものであった。

「CT検診は、適切に利用されれば喫煙者もしくは元喫煙者における肺癌による死亡者数を減少させる可能性があることが明らかになったが、そのリスク、および慎重に行われた臨床試験と同じようにCT検診が臨床現場で効果があるのか、などの多くの未解決の問題が存在する」。筆頭著者でありスローンケタリング記念がんセンターのDr. Peter B. Bach氏は声明の中で述べた。

その結果に基づいて、ASCOおよびACCPは医師のための診療ガイドラインを発行した。ガイドラインは、55~74歳で、1日1箱30年相当(1日2箱なら15年)の喫煙をした現喫煙者あるいは禁煙して15年以内の元喫煙者に検診を受けることを勧めている。この分類に属さない人、および余命が限られるまたは治癒的な肺癌治療を受けられない深刻な健康状態にある人には検診を勧めるべきではないとした。

さらに、検診は全米肺検診臨床試験(NLST)の参加者に提供されたのと同水準のケアが可能な施設で行われるべきとした。その試験の結果は昨年発表されたが、低線量CTを用いた検診は、胸部X線による検診と比較して、肺癌死亡者数を20%減少させたことを示した。

NLST研究者は、検診の有害性は今後の臨床勧告の中で検討されるべきであると述べた。偽陽性の結果または針生検や気管支鏡検査のような不要なその後の処置が潜在的な有害性として挙げられる。

Bach氏らは新たなガイドラインの中で推奨の強さを「弱」に分類した。研究データの質が「中程度」または「低」であるためである。しかし、NLSTまたは欧州の試験のさらなる結果が来年発表される。それらのデータが利用可能になった際には、診療ガイドラインは見直されるだろうと同氏は説明した。

「低線量CT検診のリスクや有益性をもっと深く理解すれば、その計算方法も大きく変わるだろう」と氏は電子メールのメッセージで書いている。「どの方向になるか予測することは不可能だ」。

参考文献:「数値の解読:癌検診の統計値を正しく読み取るために

肺癌薬は数種の小児癌に有望

標的薬クリゾチニブ(ザーコリ)が、ALK遺伝子に変化がある癌の小児において有効な可能性があることを、第1相臨床試験の中間結果は示唆している。薬剤により疾患のあらゆる徴候が消失した(完全奏効)小児も見られた。クリゾチニブは、ALK変異のある肺癌患者の治療のために米国食品医薬品局によってすでに承認されている。

その知見は、ASCOの年次総会に先立って5月16日に記者会見にて発表された。

米国小児腫瘍学グループ(COG)第1相コンソーシアムの後援によって行われた試験には、標準治療で進行を示した小児癌患者70人が参加した。多くの患者は、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、神経芽細胞腫あるいは炎症性筋繊維芽細胞腫瘍(IMT)と呼ばれる稀な型の肉腫など、ALK遺伝子の異常に関連する3種類の疾患の1つに罹っていた。試験に参加した全患者で、標準治療後に疾患の進行が見られていた。

可能であれば患者の腫瘍のALK変異を調べたが、これは試験の登録に必要とされなかった。試験では、錠剤として投与された薬剤の安全性を評価し、至適用量を確立した。「全体的にみて、本剤は忍容性が極めて高い」と、フィラデルフィア小児病院およびペンシルベニア大学のDr. Yael Mosse氏は、記者会見で話した。

ALCLの患児8人中7人が完全奏効を示した。薬剤投与を継続して18カ月間疾患の進行が見られなかった患児も数人いた。小児のALCLの場合、ほとんどがALK変異によって引き起こされており、COGの研究者らは、新たに本疾患の診断を受けた小児を対象に、クリゾチニブのどのような投与法が有効かを調べるための新たな臨床試験を開発中である。

進行性神経芽細胞腫の患児8人中2人が完全奏効を示した。この2人はALK異常が立証されており、9カ月および2年以上の本治療の継続により疾患の進行はみられなかった、とMosse氏は述べた。

研究者らは、IMT患児の一部で薬剤が抗腫瘍作用を示したことも報告した。本疾患の患者に有効な治療はないが、IMT患者の半数にALK異常がみられる。

この試験は「腫瘍を促進する分子を解明することで、患者での劇的な効果が見込める」ことを示唆していると、ASCOの会長であるDr. Michael P. Link氏は話した。

ALK遺伝子は発生初期に発現し、出生後に活動が停止するようだ、とMosse氏は説明した。この遺伝子は通常体内で発現していないため、興味深い治療標的となる、と追加した。

毎年米国では、およそ200~250人の小児がこれらの癌のいずれかの診断を受け、このALK遺伝子の異常に基づいたこの治療を受ける候補者になり得る、とMosse氏は推測する。

参考文献:「クリゾチニブは一部の肺癌に対して引き続き有望な結果が示され、薬剤耐性への挑戦も

化学療法後の「突出性」悪心嘔吐を統合失調症治療薬でコントロール

悪心嘔吐の副作用予防対策にもかかわらず一部の患者に起こる化学療法誘発性悪心嘔吐(CINV)のコントロールに、統合失調症治療薬のオランザピン(ジプレキサ)がメトクロプラミド(Reglan)より有意に効果が高いことが第3相臨床試験で示された。(オランザピンは統合失調症と双極性障害の治療で米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。)この結果は、インディアナ大学医学部(サウスベンド校)のDr. Rudolph Navari氏によって、5月16日にASCO年次総会に先立って行われた記者会見で発表された。

この二重盲検ランダム化比較試験は、「突出性」CINV(予防対策にもかかわらず持続する悪心嘔吐)に対して有効な治療を示した最初の研究である。ある種の抗癌剤治療を受けた患者の約30~40%が突出性CINVを経験する。突出性CINVは通常、治療後2~4日で発症する。

Navari氏らの研究は、嘔吐を誘発することが知られているシスプラチンシクロホスファミドドキソルビシンなどを用いた化学療法後に突出性悪心嘔吐を発症した80人の患者を対象とした。患者は、オランザピン10 mgを1日1回3日間経口投与する群と、メトクロプラミド10 mgを1日3回3日間経口投与する群に無作為に割り付けられた。

72時間の経過観察期間中に嘔吐が発現しなかった患者は、オランザピン投与群では71%であったのに対し、メトクロプラミド投与群では32%であった。オランザピンは患者の67%で悪心を予防したのに対し、メトクロプラミドでは24%であった。両群間の差は統計的に有意であった。いずれの薬剤も重度の有害事象を引き起こさなかった。

Navari氏によると、「ASCOの推奨や他の国際的なガイドラインでは、あらかじめ最善の制吐薬を使用するとしている。そして、患者が突出性悪心嘔吐を発症した場合には、これまで有効な選択肢がなかった」。そのような場合はしばしばメトクロプラミドが使用されたが、それほど効果はなかったと同氏はいう。

この結果は「患者の生活の質(QOL)を改善する大きな一歩」とASCO次期会長のDr. Sandra Swain氏は記者会見で述べている。患者の中には、突出性CINVによる衰弱が著しいために「根治的治療をやめる」場合がある、と同氏はいう。

分子標的薬が進行固形癌と脳転移に有望

2つの早期臨床試験の結果から、dabrafenibは、単剤または別の分子標的薬との併用において安全であり、進行メラノーマ、脳転移を伴うメラノーマ、BRAF遺伝子変異を有する他の固形癌の患者にとって有効な可能性が示されている。

1つ目の試験は、5月17日付Lancet誌電子版に発表された第1相試験で、メラノーマまたは進行固形癌の患者184人が参加した。うち179人の患者で腫瘍にBRAF遺伝子変異が認められた。後続の試験で用いる安全で許容できる用量を決めるために、経口投与するdabrafenibは何段階かの用量が試された。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Gerald S. Falchook氏らの報告によると、BRAF遺伝子変異を有する転移性メラノーマ(脳転移を伴わない)患者で、dabrafenib 150 mgを1日2回(第2相試験の推奨用量)投与された36人のうち、半数が部分奏効または完全奏効した。しかし、患者の大部分で薬剤耐性が発現し、病勢進行までの期間の中央値は5.5カ月であった。

dabrafenibはいずれの用量でも、甲状腺乳頭癌と非小細胞肺癌の複数の患者と、大腸癌患者1人で部分奏効した。他の大腸癌患者7人、卵巣癌患者1人、消化管間質性腫瘍(GIST)患者1人は病勢安定であった。

dabrafenib 150 mgを1日2回投与された進行メラノーマ患者10人中9人では、無症候性の脳病変も縮小し、うち4人で完全に消失した。脳転移を有する患者の病勢進行までの期間の中央値は4.2カ月であった。10人の患者全員が5カ月時点で生存しており、2人は1年を超えて生存した。(脳転移を有する患者の生存期間は通常5カ月未満である。)通常は薬剤の脳への侵入を防ぐ血液脳関門が転移によって破壊された場合に、dabrafenibが脳内に入る可能性を研究者は指摘している。

dabrafenib治療で最も高頻度に発生する有害事象は、皮膚病変、疲労、発熱である。

無症候性脳転移の患者を対象とした第2相試験、およびBRAF遺伝子変異を有する進行または転移性メラノーマ患者を対象としたdabrafenibとdacarbazine[ダカルバジン]を比較する第3相ランダム化比較試験を含むdabrafenibの臨床試験が複数進行中である。

2つ目の試験は、BRAF遺伝子変異を有する転移性メラノーマ患者を対象とした、MEKタンパクを標的とするtrametinibとdabrafenibを併用する試験である。前臨床試験では、それぞれの薬剤を単剤で使用するよりも併用するほうが効果が高かった。ASCO年次総会に先立つ5月16日の記者会見で、H・リー・モーフィットがんセンターのDr. Jeffrey Weber氏は、第1/2相試験の中間結果について述べた。

この薬剤併用療法で4種類の用量のいずれかで治療を受けた患者77人のうち、8%が完全奏効、49%が部分奏効し、38%が病勢安定であった。dabrafenib 150 mgを1日2回とtrametinib 2 mgを1日1回(第2相試験で用いられる用量)投与された患者24人のうち、8%が完全奏効、54%が部分奏効し、38%が病勢安定であった。この患者群では、病勢進行までの期間は10.8カ月であった。

Weber氏によると、両剤を併用した患者のうち扁平上皮癌を発症したのは3%のみであったが、過去の試験でdabrafenibまたは別のBRAF阻害薬を単剤で投与された患者では発症率が15~25%であった。両剤を併用した患者の22%に皮疹が発現したが、MEK阻害剤で通常発現するざ瘡様皮疹はほとんどみられなかった。しかし、過去の試験でBRAF阻害薬を単剤で投与された患者と比較して、併用した患者で高熱を発現した患者が多かった。一部の患者では、高熱のために薬剤の減量や治療の延期に至った。

「もちろん、わずか24人の患者群での結果なので注意が必要であるが、[この結果は]十分期待が持てる」とWeber氏は述べた。進行メラノーマ患者を対象とした薬剤併用の第3相試験は始まったばかりである。

その他のジャーナル記事:高齢の体重過多の癌サバイバーの減量と食事の改善を支援するプログラムひとりひとりに合わせた自宅で行うプログラムが、体重過多または肥満の高齢癌サバイバーの食事の改善、運動量の増加、減量、改善した状態の長期間維持に効果があることが、RENEW(Reach Out to Enhance Wellness)研究で示された。アラバマ大学バーミンガム校のDr. Wendy Demark-Wahnefried氏らが5月21日付けのJournal of Clinical Oncology(JCO)誌でこの研究結果を報告した。この研究には、65歳以上の乳癌、前立腺癌、大腸癌のサバイバーで、ほとんど体を動かさない体重過多または肥満の600人以上が参加した。参加者はひとりひとりに合わせた印刷資料を渡され、1年間にわたって定期的に電話によるカウンセリングを受けた。高齢の癌サバイバーは700万人を超えており、急速に増加しているため、この層の健康と生活の質(QOL)の改善のためにさらに研究を進める必要があると著者らは述べている。
その他のジャーナル記事: コーヒー摂取が死亡リスク低下に関連する高齢者を対象とした大規模研究で、コーヒー摂取が死亡リスクを低下させる可能性が示された。調査開始時点でコーヒー(カフェイン含有またはカフェイン除去)を飲むと申告した人は、コーヒーを飲まないと申告した人に比べて、心疾患、呼吸器疾患、脳卒中、外傷および事故、糖尿病,感染症による死亡リスクが若干低かった。ただし、癌による死亡リスクには影響がなかった。1日3杯以上コーヒーを飲む人は、コーヒーを飲まない人と比べて、死亡リスクが約10%低かった。NCI癌疫学・遺伝学部門のDr. Neal Freedman氏が主導したこの研究は観察研究であり、コーヒーの飲用が実際に死亡リスクを低下させるかどうかは判断できなかった。この研究結果は、5月17日付New England Journal of Medicine誌で発表された。

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滝川俊和、月橋純子 訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)、須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター) 監修
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