2012/02/21号◆癌研究ハイライト「エビデンスに反し、卵巣癌検診を推奨する医師も」「リンチ症候群は乳癌および膵臓癌リスクを高める」「肺癌に対する術後放射線治療は生存率を改善しない」「血小板レベルが高い卵巣癌患者は予後が悪い」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/02/21号◆癌研究ハイライト「エビデンスに反し、卵巣癌検診を推奨する医師も」「リンチ症候群は乳癌および膵臓癌リスクを高める」「肺癌に対する術後放射線治療は生存率を改善しない」「血小板レベルが高い卵巣癌患者は予後が悪い」

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2012/02/21号◆癌研究ハイライト「エビデンスに反し、卵巣癌検診を推奨する医師も」「リンチ症候群は乳癌および膵臓癌リスクを高める」「肺癌に対する術後放射線治療は生存率を改善しない」「血小板レベルが高い卵巣癌患者は予後が悪い」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2012年2月21日号(Volume 9 / Number 4)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
PDFはこちらからpicture_as_pdf
____________________

◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・エビデンスに反し、卵巣癌検診を推奨する医師も
・リンチ症候群は乳癌および膵臓癌リスクを高める
・肺癌に対する術後放射線治療は生存率を改善しない
・血小板レベルが高い卵巣癌患者は予後が悪い

エビデンスに反し、卵巣癌検診を推奨する医師も

卵巣癌検診は有益ではないことを示すエビデンスが多数存在するにもかかわらず、医師の3人に1人は卵巣癌検診を有効だと考えていることが、最近発表された臨床医を対象とする調査により判明した。Annals of Internal Medicine誌2月7日号に掲載されたこの調査結果は、偽陽性の結果を受けて不必要な手術や処置を受け、そのために不要な費用も発生するという検査リスクにさらされる女性がいることを示唆している。

個人のリスクの程度にかかわらず、卵巣癌検診を支持している医療団体はない。さらに米国予防医療作業部会は2004年から定期的な卵巣癌検診には反対しており、また昨年は卵巣癌検診を不可とするさらなるエビデンスが明らかになった。卵巣癌検診には、経膣超音波検査かCA-125血液検査、あるいはその両方が用いられている。

今回の調査では、家庭医、一般内科医、産婦人科医が、女性の定期健康診断に関する事例を含む質問書に回答した。全体では、65%が中程度のリスクを持つ女性に対しては「時々」または「ほとんど常に」卵巣癌検診を勧めるか、検診の実施を指示したと回答した。また29%は、低リスクの女性に対しても、同様に検診を勧めるか指示したと回答した。さらに回答者の24%は、中程度リスクの女性には恒常的に(ほとんど常に)検診を指示するか勧めるかし、6%はリスクの低い女性に対しても同様の対応をしたと答えた。医師は、患者が卵巣癌検診を希望するという状況で、検診を指示すると答える傾向が高かった。

「卵巣癌検診ではリスクが利益を上回ることを考えると、これらの調査結果は懸念を呼ぶ」と、研究責任者でワシントン大学のDr. Laura-Mae Baldwin氏は話した。「医師は時々、検診の利益がリスクを上回るという(科学的な)証拠が示される前に、検診に積極的になりがちである」。

すべての調査がそうであるように、今回の調査にも潜在的な偏りが含まれていると、NCI癌予防部門主任でPhysician Data Query(PDQ)の検診と予防編集委員会編集長を務めるDr. Barnett Kramer氏は説明する。それでも、検診実施に関する現行の勧告から医師がしばしば逸脱することや、「検診の有効性が広範に信用されている」ことへの懸念に対し、同氏は同意した。

「この調査に回答した医療従事者の中でかなりの人が、昨年発表された卵巣癌検診に関する唯一のランダム化比較試験において、一般集団への卵巣癌検診で卵巣癌による死亡は減少しなかったという結果を認識していないのかもしれない」と、Kramer氏は電子メールに書いた。「そればかりかこの比較試験で、検診に伴う害が示されたのである」。

今回の調査は「卵巣癌検診に関する利益と不利益のバランスで明らかになっていることに関し、医療従事者への啓蒙努力を高める」必要があることを示していると、同氏は続けた。

 

リンチ症候群は乳癌および膵臓癌リスクを高める

リンチ症候群家系を対象とした初の前向きコホート研究で、この遺伝性疾患を持つ患者は乳癌および膵臓癌の高いリスクを有しているという現在までで最も強力なエビデンスが示された。また本試験から、リンチ症候群家系の一員であっても、この疾患を引き起こす遺伝子変異を持たない血縁者では、癌発症リスクは一般集団と同様であることも初めて明らかにされ、これらの患者ではより集中的な癌のスクリーニングは必要ないことが示唆された。さらに本試験によって、以前からこの疾患に関連があると考えられていたいくつかの癌の発症リスクが高いことも確認された。本試験結果は2月13日付Journal of Clinical Oncology誌に発表された。

リンチ症候群は、4つのミスマッチ修復遺伝子(MMR)のうちの1つにおける遺伝的変異が原因となる。MMR遺伝子は細胞分裂に向けた細胞の遺伝物質複製時に生じるDNA修復に関与している。この変異を有する患者は大腸癌およびその他いくつかの癌の発症リスクが通常よりも高いことが知られており、一般的には若年でこれらの癌の診断を受ける(関連記事参照)。

しかし、これまでの研究ではこれらの患者の膵臓癌リスクについて一致したエビデンスは得られておらず、乳癌リスク上昇についても、「弱い、あるいは状況的なエビデンスしか」示されていないと、統括著者であるメルボルン大学(オーストラリア)のDr. Mark Jenkins氏は電子メールで述べた。

Jenkins氏、Dr. Aung Ko Win氏らは、乳癌、大腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌など多数の癌について、変異保有者がそれらの癌を将来発症するリスクを推定するために、NCIの大腸癌家系登録からMMR変異保有者とその血縁者で変異の非保有者を追跡調査した。その結果、変異保有者は、癌種によって通常の4~30倍の発症リスクを有していることが明らかになった。

リンチ症候群の患者は通常、一般集団よりも若年時に、そしてより頻繁に大腸内視鏡検査を受けるよう勧められる。「リンチ症候群の女性患者にマンモグラフィー検査を推奨すべき年齢や、MRIといった方法が正当かどうかを決定するには、幅広い年齢層における乳癌発症リスクのさらなる解明が必要である」とJenkins氏は述べた。

肺癌に対する術後放射線治療は生存率を改善しない

高齢の肺癌患者では、外科手術後の放射線治療が生存率を改善しない可能性があることが、NCIの支援による試験結果で示された。本試験は、65歳以上で隣接リンパ節に転移しているステージⅢの非小細胞肺癌(NSCLC)患者のみを対象としていた。その結果、術後または補助療法として放射線治療を受けた患者と、受けていない患者の生存率に差が認められなかった。この研究は2月13日付Cancer誌電子版に掲載された。

Dr. Juan Wisnivesky氏が率いるニューヨークのマウントサイナイ医科大学の著者らは、NCIのSEERメディケアデータベース上の1,300人を超える患者の後向き解析を行った本研究で、術後放射線療法が無進行生存期間または生活の質(QOL)を改善したかどうかを判定できなかったことを認めた。

隣接リンパ節に転移しているNSCLC患者では、長期生存率が著しく低下すると著者らは述べているが、補助放射線療法がそのような患者の生存率を改善させることを示すような臨床試験データはないと Wisnivesky氏はインタビューで指摘した。

しかし本試験では、半数以上の患者が術後に放射線治療を受けている、と同氏は続けた。術後の化学療法も受けている患者集団や、治療を受けた時期別(試験全体では1992~2005年に治療を受けた患者を対象とした)など、特定の集団に限定した解析でも、得られた結果は同じであった。

「放射線療法が生存率の改善につながることを期待していたが、われわれのデータを見る限り、そうではないようだ。また、(放射線)治療はコストやリスクを伴わないわけではない」とWisnivesky氏は述べた。

試験は不完全なデータでの後ろ向き試験であるため、慎重に解釈すべきである、とNCI癌研究センターのDr. Giuseppe Giaccone氏は強調した。しかし、術後放射線療法による生存率の差は、あるにしても「小幅にすぎない」ことをデータは示している、とも述べた。

現在ヨーロッパではLung ARTという第3相試験が実施されており、同じ患者集団で術後放射線療法が全生存率を改善するかについての検討が行われている。

 

血小板レベルが高い卵巣癌患者は予後が悪い

過剰に高い血小板レベルは卵巣癌患者の生存率の低さと関係することが、新たな研究により判明した。NCIから一部資金提供を受けたこの研究では、血小板レベルが上昇(血小板増加)した卵巣癌患者は、血小板レベルが基準値の卵巣癌患者と比較して、無増悪生存期間および全生存期間に関する予後が著しく悪く、診断時に癌がより進行している傾向にあることが明らかになった。この知見は、New England Journal of Medicine誌2月16日号に発表された。

研究者らは600人以上の卵巣癌患者の血液サンプルを分析し、血小板増加と生存期間との関連を明らかにした。卵巣癌のマウスモデルを使った実験でもこの知見が確認され、腫瘍が血小板の増加をもたらす潜在的なメカニズムが示唆された。

本研究の統括著者でテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのDr. Anil Sood氏によれば、本知見は卵巣癌治療に新たな道を開く可能性があり、血小板レベルを診断や予後を判断するためのマーカーとして使える可能性もある。ただし、「これらすべての知見をさらに精査し、発展させるには、まだ多くの研究が必要である」と、同氏は注意を促した。

また研究者らは、それ以外にも血小板増加が、血小板産生を調節するホルモンであるトロンボポエチンレベル、およびトロンボポエチンの生成を増やす可能性のあるサイトカインのインターロイキン-6(IL-6)レベルの上昇にも関係することをつきとめた。

マウスモデルの実験で、研究チームは腫瘍細胞から分泌されるIL-6とトロンボポエチンが、血小板増加や腫瘍の成長を促す「フィード・フォワード・ループ」の重要な要素であることを発見した。さらにIL-6を標的にするsiltuximab(シルツキシマブ)と呼ばれる開発段階にあるモノクローナル抗体は、マウスの卵巣癌腫瘍の成長を遅らせ、またシルツキシマブを化学療法薬のパクリタキセルと併用するとさらに効果的であることを示した。

大規模な多施設試験の一部として実施された小規模臨床試験では、シルツキシマブの3週間投与で18人の卵巣癌患者の血小板が顕著に減少した。

血小板が腫瘍の成長をいかに促進するかに焦点を当てた試験など、さらなる研究が続いているとSood氏は説明する。卵巣癌患者に対する抗IL-6治療の初期段階の臨床試験も計画されていると同氏は話した。

******
片瀬ケイ、北川瑠璃子訳
勝俣範之(腫瘍内科、乳癌・婦人科癌/日本医大武蔵小杉病院)、
廣田 裕 (呼吸器外科/とみます外科プライマリーケアクリニック) 監修
******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward