AMG386は再発卵巣癌に対し有望であることが示される

キャンサーコンサルタンツ

再発卵巣癌患者女性に対する第2相臨床試験において、試験中の分子標的薬であるAMG386をパクリタキセルと併用した場合、有望な奏効率が得られた。この結果は第35回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて発表された。
卵巣癌の治療を受けた女性患者の多くは、ゆくゆくは将来癌が再発する。再発卵巣癌の治療法は有効性に限度があり、そのため新しい治療方法の研究が続けられている。

標的治療とは、癌細胞の増殖あるいは生存に関与する特異的経路を阻害する抗癌剤を使用する治療法である。ある標的治療では抗癌剤により癌細胞に届く増殖シグナルが遮断され、別の治療では癌細胞への血液供給が減少する。また、ある治療では免疫系が刺激され癌細胞を認識し攻撃する。標的治療はその「標的」の違いにより、癌細胞増殖を遅らせたり癌細胞死を増加させたりする。

治験薬のAMG386は、2つのタンパク質(アンジオポエチン-1とアンジオポエチン-2)を標的とすることにより、血管新生を阻害する。

再発卵巣癌の治療におけるAMG386を評価するため、161人の女性患者を対象に第2相臨床試験が行われた。試験参加者らは、パクリタキセル単独投与群とパクリタキセル+AMG386併用投与群に分けられた。AMG386は2つの異なる用量(10mg/kgまたは3mg/kg)で試験した。

・ 全生存期間はAMG386の高用量投与群で22.5カ月、低用量投与群で20.4カ月、パクリタキセルの単独投与群で20.9カ月であった。
・ 無増悪生存期間は、AMG386高用量投与群で7.3カ月、AMG386低用量投与群で7.4カ月、パクリタキセル単独投与群で5.0カ月であった。
・ 奏効率(CA-125値により測定)は、AMG386高用量投与群で71%、AMG386低用量投与群で58%、パクリタキセル単独投与群で28%であった。
・ AMG386を投与した患者群においてより多く認められた重篤な副作用は、低カリウム血症、末梢神経障害、食欲減退、白血球減少、息切れであった。

これら結果から、パクリタキセルにAMG386を追加投与すると再発卵巣癌患者の転帰を改善させる可能性があることが示された。今回の結果や他の試験の結果に基づき、卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌におけるAMG386の役割をさらに評価するため、第3相臨床試験が開始されている。

参考文献:
Vergote I et al. A randomized, double-blind, placebo-controlled phase II study of AMG 386 plus weekly paclitaxel in patients (pts) with advanced ovarian cancer. Presented at the 35th European Society for Medical Oncology (ESMO) Congress, Milan, Italy, October 8-12, 2010. Abstract 975PD.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 山下裕子

監修 野長瀬祥兼(工学/医学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

卵巣がんに関連する記事

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023の画像

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステ...
進行卵巣がんにオラパリブ、デュルバルマブの追加投与は無増悪生存期間を延長の画像

進行卵巣がんにオラパリブ、デュルバルマブの追加投与は無増悪生存期間を延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO2023)ASCOの見解「卵巣がんの早期発見法はなく、3分の2以上の患者が、再発のおそれが高い進行した状態で診断されます。さらなる研究が必要ですが、治...
ARID1A変異陽性卵巣がんにスタチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用を検討の画像

ARID1A変異陽性卵巣がんにスタチンと免疫チェックポイント阻害薬の併用を検討

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/03/29】より前臨床卵巣がんモデルにおいて、スタチン併用療法が抗腫瘍効果を向上させるがん抑制因子ARID 1 Aの不活...
低異形度漿液性卵巣がんの分子特性を包括的に解析の画像

低異形度漿液性卵巣がんの分子特性を包括的に解析

【MDアンダーソンがんセンター研究ハイライト 2023/01/11】より低異形度漿液性卵巣がんの包括的な分子プロファイルを解析した研究低異形度漿液性卵巣がん(LGSO...