グリベックにより心毒性が発現しうる | 海外がん医療情報リファレンス

グリベックにより心毒性が発現しうる

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

グリベックにより心毒性が発現しうる

キャンサーコンサルタンツ
2006年8月

8ヵ所の異なる医療施設の研究者らにより、グリベック(メシル酸イマチニブ)投与で慢性骨髄性白血病(CML)患者に重度の心毒性が発現する可能性があり、さらに同様の心臓への損傷は複数のマウスでもみられることが報告された。本研究の詳細はNature Medicine 2006年8月号に掲載[1]。これよりも前に、グリベックで治療後に脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇を伴う心不全が2例でみられたという報告が韓国からなされた[2]。

 

グリベックはCMLならびに消化管間葉系腫瘍(GIST)患者の推奨治療である。グリベックは融合タンパク質Bcr-Ablのキナーゼ活性を標的としており、忍容性に優れた薬剤であると考えられている。しかし、約10%の患者にみられるさまざまな皮膚反応や、関節腔内の滲出液貯留、色素脱失、腎不全、肝不全、骨髄抑制ならびに貧血といった副作用が発現している。軽度の末梢浮腫は過去に報告されているが、グリベックによるうっ血性心不全発症の報告はこれまでなかった。最近、Memorial Sloan-Kettering 癌センターの研究者らから、グリベックを服用する患者の一部に、骨・ミネラル代謝の変化を伴う低リン血症がみられるという報告があった(関連ニュース参照)。

 

Nature Medicineの報告では、ヒューストンのMDアンダーソン癌センターにおいてグリベックで治療を受けたCML患者10例で、うっ血性心不全の発症が投与開始1-14ヵ月内にみられたという。グリベック服用開始時の左室駆出率は平均56%であり、心機能はいずれも正常であった。これらの症例の再検査での左室駆出率は平均25%であった。2例の生検の結果、中毒性のミオパシーに特有の異常がみられた。この報告には心毒性の発現率は示されていない。

 

同著者らは、グリベックで治療した複数のマウスで左室拡張に至る左室機能不全を起こす心毒性がみられたことも報告している。マウスの心臓の細胞では、グリベックによりミトコンドリア機能が失われ、細胞死がもたらされた。研究者らはAblキナーゼの阻害が心臓に作用するのだと推測している。

 

研究者らは、グリベックを服用する患者の心不全の兆候を、注意深く観察すべきであると推奨している。

 

韓国からは、グリベックが関与するうっ血性心不全を発症した2例について報告された。この報告では心不全はBNP値の上昇によるものとしている。

 

コメント

これら2つの研究は、グリベックによる治療を受けた患者は重篤なうっ血性心不全を発症する可能性があると指摘している。正確な発生率ならびに、投与量が関与するか否かを解明するためには、さらなる研究が必要である。この副作用はCML患者がグリベックを服用することを妨げるものではないが、この潜在的な副作用に対しては今まで以上の注意を払わねばならない。

 

参考文献:
[1] Kerkela R, Grazette L, Yacobi R, et al. Cardiotoxicity of the cancer therapeutic agent imatinib mesylate. Nature Medicine. 2006;12:908-916.
[2] Park YH, Park HJ, Kim BS, et al. BNP as a marker of the heart failure in the treatment of imatinib mesylate. Cancer Letter. 2005; December 30 ahead of print. (abstract available on PubMed).

 


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳Okura 

監修林 正樹(血液・腫瘍科)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他