2011/12/13号◆癌研究ハイライト「併用療法が進行乳癌の治療に有望」「一般的な成人期筋ジストロフィーの多くが癌リスク上昇と関係」「1つの標的に打撃を与える2剤併用は転移性乳癌に有効」「前立腺癌の臨床試験でアンドロゲン除去療法と心臓死の関連示されず」 | 海外がん医療情報リファレンス

2011/12/13号◆癌研究ハイライト「併用療法が進行乳癌の治療に有望」「一般的な成人期筋ジストロフィーの多くが癌リスク上昇と関係」「1つの標的に打撃を与える2剤併用は転移性乳癌に有効」「前立腺癌の臨床試験でアンドロゲン除去療法と心臓死の関連示されず」

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2011/12/13号◆癌研究ハイライト「併用療法が進行乳癌の治療に有望」「一般的な成人期筋ジストロフィーの多くが癌リスク上昇と関係」「1つの標的に打撃を与える2剤併用は転移性乳癌に有効」「前立腺癌の臨床試験でアンドロゲン除去療法と心臓死の関連示されず」

同号原文NCI Cancer Bulletin2011年12月13日号(Volume 8 / Number 24)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~
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◇◆◇ 癌研究ハイライト ◇◆◇

・併用療法が進行乳癌の治療に有望
・一般的な成人期筋ジストロフィーの多くが癌リスク上昇と関係
・1つの標的に打撃を与える2剤併用は転移性乳癌に有効
・前立腺癌の臨床試験でアンドロゲン除去療法と心臓死の関連示されず
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併用療法が進行乳癌の治療に有望

ホルモン療法に反応しなくなった閉経後進行乳癌患者に対し、エキセメスタンエベロリムス(アフィニトール)を併用したところ、エキセメスタン単剤治療より無増悪生存期間が4カ月長くなった。BOLERO 2と呼ばれるこの試験の結果は、先週開催されたサンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された。

テキサス大学M.D.アンダーソンがんセンターのDr. Gabriel Hortobagyi氏は、併用療法群の患者の無増悪生存期間中央値は7.4カ月であったのに対し、エキセメスタン単剤治療群は3.2カ月であったと、シンポジウムで公表した。9月に開催された欧州合同癌学会(European Multidisciplinary Cancer Congress)で公表した暫定結果を更新したこの最新のデータは、12月7日付New England Journal of Medicine(NEJM)誌電子版に掲載された。

この併用療法によって全生存期間が改善するかどうかのデータは現段階では明らかではないが、研究者らは、2012年の終わり頃には判明すると見込んでいる。無増悪生存期間が改善されたとの中間解析結果を受けて、BOLERO2試験のランダム化の段階は、7月に早期中止となった。アフィニトールの製造メーカであるノバルティス社が支援をしている本試験には、前治療で複数の治療を受けた患者が多数含まれていた。

エベロリムスは、細胞の成長と増殖を促進するシグナル伝達経路において重要な役割を果たしているmTORと呼ばれるタンパク質を阻害する。アロマターゼ阻害剤のエキセメスタンは、転移性乳癌の治療薬である。

「エキセメスタンにエベロリムスを併用することで、ホルモン受容体陽性の閉経後転移性乳癌患者の病勢コントロール期間が大幅に改善された」と、Hortobagyi氏は発表した。この恩恵は、疲労や口腔粘膜炎といったエベロリムスに伴う副作用と比較して検討すべきである、と本試験の著者らはNEJM誌の記事に記した。

一般的な成人期筋ジストロフィーの多くが癌リスク上昇と関係

進行性の筋肉の消耗および筋力低下を特徴とする遺伝性疾患である筋緊張性ジストロフィー(MMD)を呈する成人は、発癌のリスクが高い可能性があることが新たな研究により示唆された。NCI癌疫学・遺伝学部門の臨床遺伝学科に所属するDr. Mark H. Greene氏およびDr. Shahinaz M. Gadalla氏の率いる研究チームによると、2つの独立した集団のMMD患者は、一般集団の人と比べて癌の全リスクが2倍高かった。リスク上昇のある癌は主に、大腸癌脳腫瘍子宮内膜癌、および卵巣癌であった。この結果は12月14日付JAMA誌で報告された。

MMDは、成人期に発症する筋ジストロフィーの中で最も一般的な疾患である。MMDにはタイプ1とタイプ2の2種類があり、どちらも複数の体組織に影響を及ぼすが、その発症は異なる遺伝子の変異に起因する。2種類のMMDの兆候および症状は部分的に一致するが、タイプ1の方が比較的重度である。

「本研究の動機は、[共著者である]Dr. Richard Moxley氏の、MMD患者における癌の発生は予想を上回ったという臨床所見によるものであった」とGreene氏は述べた。そのような癌はMMD症候群の一部であるのか、あるいは偶発的な所見であるのかが問題であった。

この問題に取り組むために、研究者らは、スウェーデンとデンマーク2カ国の患者登録簿のMMD患者1658 人のカルテを、各国で対応する全国癌患者登録簿にリンクさせた。その結果、スウェーデンとデンマークのMMD集団のどちらにおいても、同パターンの癌リスクの上昇が認められたことから、「われわれの見解が正しかったことが十分に再確認できた」と、研究の著者らは記した。

「本試験は、これまで癌感受性疾患とみなされていなかったMMD患者の癌リスクについて定量的評価を正式に行った最初の試験である」とGreene氏は述べた。

「今の段階では、MMD患者の癌リスクが高い理由についてはまだはっきりしていない。MMD症状を引き起こす遺伝的変化のいくつかが、癌リスクの上昇と関与している可能性がある」とGadalla氏は補足した。関連の可能性のある機序を検討するための今後の研究により、発癌機序を理解する上での新たな手掛かりとなるものが見出されると同氏は述べた。

Greene氏らは、研究手段を追求することに加え、タイプ1とタイプ2のMMD患者において癌リスクに違いがあるかどうか、および過剰リスクは癌の既知のリスク要因により解明されるかどうかなどの、本試験では解答を得ることができなかった問題について研究を行っている。

当面の間、「臨床医は、MMD患者における癌リスク上昇の可能性について認識することが重要である」とGreene氏は述べた。

1つの標的に打撃を与える2剤併用は転移性乳癌に有効

大規模臨床試験の結果により、HER2タンパクを標的とする、トラスツズマブ(ハーセプチン)と試験薬ペルツズマブ〔pertuzumab〕の2製剤を化学療法に併用する治療法は、HER2陽性の転移性乳癌患者にとって新たな治療選択肢になるかもしれないことが明らかになった。

一次治療として、化学療法剤のドセタキセルに2種類のHER2標的薬を併用する方法と、ドセタキセルにトラスツズマブのみを併用したものを比較したところ、無増悪生存期間が6カ月延長したことが、このCLEOPATRA第3相試験で示された。この結果は、サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表され、また、先週のNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

異なる2剤によりHER2を標的とすることは、複数の試験で有効であることが示されていると、本試験の主任研究員であるハーバード大学医学部およびマサチューセッツ総合病院のDr. José Baselga氏は記者会見で述べ、「HER2の二重遮断は、間もなく実現して日常診療で用いられることになると思う」と続けた。

両剤は共に癌細胞表面のHER2タンパクを標的とするが、その作用の仕方は異なっている。基礎研究で、HER2シグナル伝達に「依存している」HER2陽性腫瘍に対し、両剤の相乗効果があるかもしれないことを示したと、Baselga氏は説明した。

このランダム化試験には800人以上の患者が参加し、半数には3剤(ドセタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ)を投与、残りの半数にはHER2陽性転移性乳癌の標準一次治療である2剤(ドセタキセル+トラスツズマブ)にプラセボを加えたものを投与した。3剤群の無増悪生存期間は18.5カ月であったのに対し、2剤+プラセボ群は12.4カ月であった。2剤+プラセボ群の患者と比べて、3剤群ではより多くの患者で腫瘍の大幅な縮小が認められたと、Baselga氏は報告した。

ペルツズマブ群の患者の全生存期間に良い傾向が示されているが、現時点ではこの試験は3剤併用により患者の生存が延長されるかどうかを明確に判定するだけの十分な期間行われていないとBaselga氏は述べた。

トラスツズマブは一部の患者で重大な心疾患と関連しているが、2剤のHER2標的薬を投与した患者での同様な副作用の増加は認められなかった。

ペルツズマブとトラスツズマブの製造メーカであり本試験を支援したジェネンティック社は、米国食品医薬品局に対し、HER2陽性転移性乳癌患者の一次治療としてペルツズマブの承認を求める申請を行った。

前立腺癌の臨床試験でアンドロゲン除去療法と心臓死の関連は示されず

前立腺癌の治療のためにアンドロゲン除去療法(ADT)を受ける患者は、心血管を原因とする死亡リスクが上昇する可能性があることが数々の研究により示唆されている。しかしながら、臨床試験結果の新たな解析により、高リスクの非浸潤前立腺癌の男性患者において、ADTにより心血管系死亡数が増加するというエビデンスは得られなかった。

8件のランダム化臨床試験メタアナリシス解析による結果が、12月7日付JAMA誌に掲載された。男性ホルモンの産生を抑制するアンドロゲン除去療法は、前立腺癌治療の中心的存在である。ゴナドトロピン放出ホルモン作動薬を使用するとして知られているADTの一種の療法は、すべてではないがいくつかの臨床試験で心疾患との関連性が示されてきた。

米国食品医薬品局は昨年、これらの試験を引証してこの種類の薬剤に対する安全性警告を発した。また数々の医学団体においても、ADTと心血管系事象および死亡との関連性について述べた科学勧告が出されてきた。

この問題をさらに検討するために、ダナファーバー癌研究所のDr. Paul Nguyen氏らは、ADT試験に参加した4000人以上のデータを解析した。ADTの治療を受けた男性患者2200人中、心血管系死亡は255人に認められた(全発症率は11.0%)。一方、対照群の男性患者1941人中の死亡は252人であった(11.2%)。

またその試験では、ADTを受けた男性は受けなかった男性と比べて、前立腺癌およびその他の死因による死亡リスクが低いという利点も示された。「われわれの試験は、ADTを検討している高リスクの前立腺癌患者の大多数にとって安心感を与えるものになるだろう」とNguyen氏は語った。

本試験について注意すべき点は、心血管系疾患リスクが高いといった特定の患者集団において、心臓死のリスクを評価することができなかったことである。そのため、「われわれの試験は、心疾患の既往がある男性がADTの悪影響を受ける可能性を除外することはできなかった」とNguyen氏は言及した。

重大な心疾患の既往がある男性に対して、本試験の著者らは、心臓専門医による検査を行い、ADTのリスクと利点について話し合うことを推奨している。

ADTは新しい治療法ではないが、医師はそのリスクと利点についてまだ学んでいる過程であると、付随論説の著者は指摘した。例えば、ある研究によると、ADTは心血管系事象の発現までの時間を短縮させることが示唆されている(本研究ではこの問題に取り組むことはできなかった)。

このような問題に対応するためには、ADTを含む今後の前向き試験にて、試験の開始時の心血管リスク要因に従って患者を分類する必要があると、本試験の統括著者であるダナファーバー癌研究所のDr. Toni Choueiri氏は述べた。

「ADTによる心臓への副作用の可能性に対して高い認識を持つことは重要であるが、ADTが命を救ってきたことが示されている高リスクの男性患者に対して、ADTの使用を止めるのは行き過ぎと思われる」とChoueiri氏はEメールで述べた。

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栃木和美、野川恵子 訳
後藤 悌 (呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)、
原野謙一(乳腺、婦人科/日本医科大学武蔵小杉病院) 監修
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