2007/04/03号◆注目の臨床試験「化学療法誘発性神経障害の予防」

2007/04/03号◆注目の臨床試験「化学療法誘発性神経障害の予防」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年4月3日号(Volume 4 / Number 14)

NCIキャンサーブレティン顧問:古瀬清行
●2007/4よりNCI隔週発行となりました
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◇◆◇注目の臨床試験 ◇◆◇

化学療法誘発性神経障害の予防

臨床試験名

シスプラチンまたはオキサリプラチンを含む化学療法レジメン(MDA-CCC-0327)で治療中の癌患者において、アルファリポ酸がプラチナ製剤による末梢神経障害を予防するかどうかを調べる第3相ランダム化試験。プロトコルの要旨はhttp://cancer.gov/clinicaltrials/MDA-CCC-0327を参照のこと。

臨床試験責任医師

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター Ying Guo医師

試験の概要

末梢神経症とは、通常、手や足から発症する痛みのほか、チクチクする、熱くなる、痺れ、脱力などの感覚をいう。糖尿病など一部の疾患によっても起こるが、プラチナベースの化学療法剤による治療の副作用としても起こりうる。

化学療法誘発性の末梢神経障害には急性と慢性があり、急性末梢神経障害は、プラチナを含む薬剤投与中または投与後すぐに発症することが多く、数日で自然に軽快する。慢性末梢神経障害は、化学療法を受けてから数週間、数ヶ月経過後発症し、治療が非常に困難である。一部の患者においては不可逆的である場合もある。

この試験では、プラチナ製剤シスプラチンとオキサリプラチン誘発の末梢神経障害におけるアルファリポ酸の予防効果を調べる。アルファリポ酸は体内で自然に生産される抗酸化物質であり、食物やサプリメントとしても入手可能である。糖尿病患者においては、神経障害の症状を緩和することが示されている。

「末梢神経障害はプラチナ製剤の治療を受けた癌患者にとって日常に支障をきたしうる状況を生む。アルファリポ酸がシスプラチンやオキサリプラチン治療中の患者のこの症状を予防する一助となることを期待している。」と、Guo医師は述べた。

患者は経口アルファリポ酸またはプラセボを1日3回24週以上にわたり服用するよう無作為に割り付けられる。

試験の参加基準

癌の治療にシスプラチン、またはオキサリプラチンベースの化学療法を受ける予定のある患者で、かつ、これまでに末梢神経障害の経験がない患者224人を組み入れる。適格基準についてはhttp://cancer.gov/clinicaltrials/MDA-CCC-0327を参照のこと。

試験を行っている施設と問合せ先

米国の臨床試験施行施設でこの試験に参加する患者を募集している。問合せ先一覧はhttp://cancer.gov/clinicaltrials/MDA-CCC-0327を参照するか、詳細はNCIの癌情報サービス1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)に電話のこと。このフリーダイヤルへの通話内容については秘密厳守である。過去の『注目の臨床試験』一覧は、http://cancer.gov/clinicaltrials/ft-all-featured-trialsで閲覧可能。

翻訳担当者 野中 希 、

監修 林 正樹(血液・腫瘍医)

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原文掲載日 

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