アスピリンおよび難消化性デンプンはリンチ症候群患者の大腸癌発生に影響を及ぼさない | 海外がん医療情報リファレンス

アスピリンおよび難消化性デンプンはリンチ症候群患者の大腸癌発生に影響を及ぼさない

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アスピリンおよび難消化性デンプンはリンチ症候群患者の大腸癌発生に影響を及ぼさない

キャンサーコンサルタンツ
2009年3月

国際的多施設共同試験に参加した研究者は、アスピリンまたは難消化性デンプンの使用はリンチ症候群患者の大腸癌(結腸直腸癌)発生に影響を及ぼさないことを報告した。この試験の詳細はNew England Journal of Medicine 2008年12月11日号に発表された[1]。

 

遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)としても知られるリンチ症候群は、DNAミスマッチ修復遺伝子に変異を生じる事による遺伝性疾患である。この変異は結腸直腸癌発症のリスクを著しく増加させる。HNPCC変異保有者では結腸直腸癌の診断年齢が平均44歳であるのに対し、一般集団では64歳である。全体として全結腸直腸癌の3~5%がHNPCC変異に由来すると考えられる[※監訳者注1]。HNPCC 家系に多く認められるその他の癌として子宮内膜癌、卵巣癌、小腸癌、尿管癌、腎盂癌などがある。

 

過去の試験で、アスピリンやその類似薬の常用により大腸ポリープおよび結腸直腸癌のリスクが減少することが明らかになっている[2]。難消化性デンプンは消化されずに小腸を通過するデンプンである。そのため、食物繊維の一種に分類されることがあり、繊維と同様の利点を有す可能性があると研究者は推定している。難消化性デンプンは穀物類、マメ類、未加工全粒粉、未熟果など多くの食品に含まれ、また様々な化学反応により製造することもできる。

 

研究者はランダム化プラセボ対照多施設共同臨床試験を実施し、HNPCC変異保有者の結腸直腸癌発生に対するアスピリンや難消化性デンプンの影響を評価した。試験では43施設の746人の患者が以下の投与法のいずれかに無作為化された。すなわち、アスピリン + プラセボ群、アスピリン + 難消化性デンプン群、難消化性デンプン + プラセボ群、プラセボ + プラセボ群の4群である。難消化性デンプンはNoveloseとして1日30g、アスピリンは1日600 mg投与された。

 

最長4年間の追跡調査を行ったが、アスピリンおよび難消化性デンプンのいずれも顕著な効果を証明できなかった。平均29ヵ月の期間に141人の被験者に大腸ポリープまたは癌が発生した。被験者693人でアスピリンとプラセボを比較すると、癌性増殖が認められたのはアスピリン投与群の66人(18.9%)に対し、プラセボ投与群65人(19.0%)であった。同様に被験者727人でデンプンとプラセボを比較すると、癌性増殖が認められたのはデンプン投与群67人(18.7%)に対しプラセボ投与群68例(18.4%)であった。

 

研究者は「アスピリン、難消化性デンプン、またはその両方を最長4年間使用しても、リンチ症候群患者における結腸直腸腺腫または癌腫発生の抑制効果を示さない 」と結論付けた。

 

コメント:

著者らはリンチ症候群患者の大腸腺腫または癌の発生に対するアスピリンまたはデンプンの影響を最終的に評価するためにはより長期間必要なのかもしれないと指摘している。さらにリンチ症候群患者を対象にして予防臨床試験を実施できる可能性も指摘している 。この疾患は比較的まれな疾患であるため、正確な結果を得るためには多施設共同試験を行う必要がある。

 

※監訳者注1:日本の某がん施設ではHNPCCに由来する割合は10%

 

参考文献:
[1] Burn J, Bishop T, Mecklin JP, et al. Effect of aspirin or resistant starch on colorectal neoplasia in the lynch syndrome. New England Journal of Medicine. 2008; 359: 2567-2578.
[2] Jacobs E, Thun M, Bain E, et al. A large cohort study of long-term daily use of adult-strength aspirin and cancer incidence. Journal of the National Cancer Institute. 2007; 99: 608-615

 


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翻訳榎 真由

監修鵜川 邦夫(消化器内科)

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