2008/10/07号◆スポットライト「次世代のPSA(前立腺特異抗原)となる新たなマーカーは何か」 | 海外がん医療情報リファレンス

2008/10/07号◆スポットライト「次世代のPSA(前立腺特異抗原)となる新たなマーカーは何か」

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2008/10/07号◆スポットライト「次世代のPSA(前立腺特異抗原)となる新たなマーカーは何か」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2008年10月7日号(Volume 5 / Number 20)

~日経「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

次世代のPSA(前立腺特異抗原)となる新たなマーカーは何か

[読者リクエスト記事]

先日、米国予防医療専門委員会は75歳以上の男性の前立腺癌のスクリーニングに前立腺特異抗原(PSA)検査の標準的な実施を行わないようにとする新たな推奨を行い、少なからぬ論争を巻き起こした。しかし、その推奨の核心部分は重要な事実を強調している。すなわち、PSA検査は最も広く用いられている癌のスクリーニング検査の一つ(過去2年間で50歳~74歳の男性のおよそ3人に2人の割合でPSAスクリーニングが実施)であるが、PSAスクリーニングが実際に生命を救えるという確固たる証拠が未だ存在しないという事実である。

さらに、NCI癌予防管理部門の前立腺癌および泌尿器癌研究班の責任者Dr. Howard Parnes氏の説明によれば、NCIが資金援助した前立腺癌予防試験(PCPT)からは、「前立腺癌の実際の有病率は 従来考えられていたよりもはるかに高く、生検が推奨されるPSAの閾値を下げれば下げるほど、過剰診断が増えることが明らかになった」という。過剰診断とは、生涯臨床的に明白になりそうにない癌を発見することを指している。多くの場合、しばしば手術による治療が行われ、重篤かつ生涯続くかもしれない副作用を伴うことになる可能性がある。

「前立腺癌の検出に用いる次世代バイオマーカーを開発する際には、正確であることと有効であることは同義ではないと心に留めておくことが重要です」とParnes氏は強調する。

この過剰診断にかかわる難問は、前立腺癌の新たなスクリーニング検査法を探る推進力のひとつであった。その方面の前進は着実ではあったが、緩慢なものであった。しかし、この研究成果によると、PSA検査が近い将来なくなるわけではないと研究者らは注意を促している。しかしながら、いずれは新たな数種類の検査と組み合わせられることになるだろうとみられる。

理想としては、新規の検査は、最も早い段階でこの疾患を検出するにとどまらず、患者の予後を知る機会をもたらすものであってほしいと多くの前立腺癌研究者は言う。つまり、すぐに治療が必要な進行の早い癌なのか、生命に影響を及ぼすとは考えにくいため「積極的な経過観察(ないし待機療法)」で監視すればいい癌なのかということである。

前立腺癌の潜在的なマーカーとして文献に記載があるものは、遺伝子やRNAやタンパク質の略語がほとんどで、例えばPCA3、EPCA-1、EPCA–2、 B7-H3およびAMACRなどがある。その略語の海の中に見出すべき傾向があるとすれば、信頼性の高い癌の検出および予想される臨床経過の的確な知見を得るためには1種類のマーカーでは、不十分であるということであろう。

当初は単独で機能する可能性があるとされた数種類のマーカーが、実際は一群のマーカーを用いた検査の「アンカー」として使用したほうが効果的に機能するのではないかとみられるものがある。その中には、新規の融合遺伝子産物TMPRSS2-ERG(新規である理由のひとつは固形腫瘍に初めて発見された融合遺伝子のひとつであるため)およびGSTP1遺伝子の非発現型、すなわちメチル化型がある。

両マーカーとも、尿検体のスクリーニングに基づいた検査法の開発が支持された。例えば2月には、TMPRSS2-ERGを発見したミシガン大学のDr. Arul M. Chinnaiyan氏のグループが試験成績を発表し、TMPRSS2-ERGの存在とこれ以外の3つのマーカーが、前立腺癌の存在を2/3の感度で正確に予測し3/4の特異度で癌を正確に除外したことを示した。

「将来的にはマーカーをさまざまに組み合わせることになるでしょう。そうすれば、必要な感度および特異度が達成できるとともに、2種類以上のマーカーを観察することによる安全性を確保できます。現在のアレイ技術をもってすれば、これは明らかに実現可能です」とChinnaiyan氏は語る。

過剰メチル化GSTP1をアンカーとするさまざまなマーカー群を検証した試験では、現在までのところ一定の成績が出ている。例えば、そのようなマーカー群を用いてこれまでで最も厳正に実施された試験のひとつでは、感度が53~55%、特異度では80%にも上ったことが示された。

このほか、このような検査で臨床医が求めているものが手に入る可能性が示唆されるデータもある。すなわち臨床的な意思決定の際の手がかりである。例えば、上記のGSTP1試験のデータからは、検査結果をほかの一般的な臨床因子と組み合わせれば、医師がPSA値の上昇に伴う生検を実施すべきかどうかを見きわめる一助になる可能性が示唆されている。4月に米国癌研究学会年次総会で発表された研究からは、TMPRSS2-ERG陽性の癌は特定の分子亜型の前立腺癌で、ほかの型よりも進行が早いことが明らかになった。

TMPRSS2-ERGおよびGSTP1に基づいた検査はすでに大手診断企業とライセンス契約が交わされている。これは新規の検査を臨床応用に結びつけるために非常に重要な要素であると、両バイオマーカーの試験を支援したNCIの早期発見研究ネットワーク(EDRN)の所長Dr. Sudhir Srivastava氏は述べる。

EDRNの仕事の一部は、研究を助成して厳密に計画された試験でこのようなマーカーの有効性を確立することである。しかし、最終的には、「到達目標は、こういった有効性試験からさらに前進するための支援が得られる企業パートナーをみつけることです」とSrivastava氏は付け加える。

Chinnaiyan氏は「バイオマーカーを確実に市場に届けるにはそれが最善の方法」と賛同する。「すべてを学究機関でやろうとすれば、遅々として進まないことがあり、市販可能レベルの品質の試薬が製造できません。これではFDAの承認にまで進むのは困難です」

前立腺癌症例の多くが長い臨床経過をたどるため、前立腺癌のスクリーニング検査に関する前向きランダム化臨床試験は実施が困難である。とはいえ、前立腺の新規のマーカーやマーカー群が前立腺癌の死亡率を低下させるかどうかを明らかにするためにはそのような試験の実施が必要であるとParnes氏は述べる。

そのような試験には時間も費用もかかるため、従来に比して短期かつ迅速に新規の前立腺癌スクリーニング検査が臨床現場にもたらされるような新しい方法または試験計画が、特にこの疾患のハイリスク男性のために開発されることを期待しているとSrivastava氏は語った。

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片岡  訳

榎本 裕 (泌尿器科医)監修

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