若年性大腸がんにさらなる積極的治療は不要

49歳以前に発症した大腸がんは、50歳以降に発症した大腸がんと臨床的にも生物学的にも類似していることが、若年性大腸がんと平均的な発症年齢の大腸がんを比較した最大かつ最も包括的な評価により明らかになった。

したがって「大腸がん診断時の年齢のみに基づく積極的な治療レジメンは必要ありません」と、スローンケタリング記念がんセンター(ニューヨーク市)のAndrea Cercek医師らは述べる。

若年性大腸がんの発症率は増加しているが、その理由は明らかでない。先行研究では、若年性大腸がんは本質的に悪性度が高いことが示されていたが、若年患者にさらに治療を加えても生存率は向上しなかった、とCercek医師らはJournal of the National Cancer Institute誌で言及している。

若年性大腸がんは平均的な発症年齢の大腸がんと異なるのかを調べるため、35歳から49歳で診断された若年性大腸がん患者759人と、50歳以降に診断された大腸がん患者687人を比較し、臨床的、病理組織学的、遺伝学的特徴について検討した。

若年性大腸がん患者では、大腸の左側に腫瘍がある、直腸出血や腹痛を伴う、大腸がんの遺伝的素因を受け継ぐ可能性が高い、という傾向があることがわかった。

しかし、腫瘍の遺伝子構造および治療反応性に関して、2群間で差がないことから、若年性大腸がんに対する積極的治療は不要であることが示唆された、とCercek医師らは結論付けている。

「先行報告とは対照的に、既知の交絡因子を調整しても、腫瘍のゲノムプロファイルや臨床転帰に関するデータは、散発性若年性大腸がんが平均的な発症年齢の散発性大腸がんと生物学的に異なるという仮説を支持するものではなかった」と報告している。

出典:https://bit.ly/3sqNLPZ Journal of the National Cancer Institute誌 オンライン版 2021年8月18日

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 北丸綾子(分子生物学)

原文掲載日 

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