B細胞枯渇療法を受けたリンパ腫患者はCOVID-19転帰不良の可能性

重症COVID-19(新型コロナウイルス感染症) で入院したリンパ腫患者のうち、過去12カ月以内にB細胞枯渇療法を受けた患者では、入院期間長期化と死亡リスクの上昇がみられた。この結果は、2月3-5日に開催されたAACRバーチャル会議「 COVID-19とがん」で発表された。

「リンパ腫患者は、その病気の特定の特徴あるいは治療レジメンが原因となって免疫不全を起こすことがあり、その結果、感染症の発生率と重症度が高まる可能性がある」と、研究上級著者である Caroline Besson医学博士(血液内科医、ベルサイユ病院センター、ベルサイユ・サン・クエンタン・アン・イヴリーヌ大学、フランス)は述べた。「COVID-19パンデミックという状況で、われわれの患者におけるこの感染症の臨床経過を分析し、転帰を悪化させる要因を特定する必要があると思われた」。

リンパ腫患者はしばしば、リツキシマブ(販売名:リツキサン)やオビヌツズマブ(販売名:ガザイバ)などのB細胞枯渇抗体による治療を受ける。これらの薬剤は、B細胞の表面にあるCD20というタンパク質を標的とする。「20 年以上前、抗 CD20 モノクローナル抗体は、この疾患で最もよくみられるサブタイプであるB細胞非ホジキンリンパ腫の患者の生存率を改善することが示された 」と、代表著者の Sylvain Lamure医師(血液内科医、モンペリエ大学病院センター、フランス)は言う。「しかし、これらの治療法は、急速なB細胞枯渇を誘発し、新しい病原体に対する抗体反応の起こり方を変化させ、COVID-19の臨床経過に影響を与える可能性がある」。

この患者集団におけるCOVID-19転帰不良に関連する要因の究明を目的として、研究者らは、2020年3月から4月にかけて、フランスの病院16施設のうちいずれかに重症COVID-19で入院したリンパ腫患者111人のデータを評価した。研究者らは、入院期間長期化(30日超)および何らかの原因による死亡に関連する要因を特定することに焦点を当てた。

111人の患者のうち、63人(57%)がB細胞枯渇療法の治療歴があった。全患者の29%が重症COVID-19の症状により長期入院を必要とした。中央値191日の追跡調査の結果、この患者集団の6カ月全生存率は69%であった。

年齢、併存疾患、再発・難治性疾患の有無を調整した分析の結果、過去12カ月以内にB細胞枯渇療法を受けていると、入院期間が長期化する可能性が2倍近くになり、死亡リスクが2倍超になることが判明した。全生存率の低下と入院期間の長期化に有意に関連するその他の要因は、再発・難治性リンパ腫を有すること、または70歳以上であることであった。

「抗CD20療法がCOVID-19の経過に及ぼす影響に関するわれわれの知見は、パンデミック時のリンパ腫患者管理のガイドラインに貢献する可能性がある」とBesson氏は述べている。「また、われわれの導いた結果は、B細胞が枯渇したCOVID-19患者に対する特定の治療法の必要性や、この特定集団におけるワクチン接種の有効性と接種時期を評価することの必要性を強調している」。

「最近B細胞枯渇療法を受け、COVID-19に罹患した患者は、主治医に相談し、注意深く観察してもらう必要がある」とLamure氏は言う。

この研究の限界には、研究が後ろ向きなものであることが含まれる。

Besson氏はロシュ社から資金援助を受けて、COVID-19の原因となるウイルスであるSARS-CoV-2に対するリンパ腫患者の免疫反応を研究している。Lamure氏は利益相反がないことを宣言している。

翻訳担当者 青葉かお里

監修 吉原 哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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