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腹膜カテーテルを留置した患者によくみられる低ナトリウム血症

悪性腹水の排液のために腹膜カテーテルを留置した患者では低ナトリウム血症がしばしば認められることが、後ろ向き研究で示された。

「われわれが驚いたのは、80%を超える患者が腹膜カテーテル留置後に低ナトリウム血症になったこと、そしてかなりの割合の患者のナトリウム値が低いのに、それが認識も治療もされていなかったことです」と、ボストンにあるハーバード大学医学部のブリガム&ウィメンズ病院のShruti Gupta医師はロイターズ ヘルスへのメールで述べている。「これは問題の重大さを際立たせています」。

低ナトリウム血症はがん患者によくみられ、対処が難しいことがある。腹膜カテーテルを介した悪性腹水の排液によって、ナトリウム損失が1日あたり数百mEqまで増加する可能性がある。

Gupta医師らは、腹膜留置カテーテルレジストリのデータを用いて、腹膜カテーテル留置後の低ナトリウム血症(最低血清ナトリウム値が135 mEq/L未満と定義)の発症率とリスク要因を評価した。

この研究の対象となった309人の患者のうち161人(52.1%)が腹膜カテーテル留置前の時点で低ナトリウム血症であった。そのうちの9人は重度の低ナトリウム血症(最低血清ナトリウム値が120 mEq/L未満)であった。

腹膜カテーテル留置後の低ナトリウム血症発症率は84.8%で、うち21人は重度の低ナトリウム血症であった。52人(16.8%)は腹膜カテーテル留置後に血清ナトリウム値が10 mEq/L以上低下したと、JAMA Network Open誌に掲載された論文で報告された。

他の要因を調整後、腹膜カテーテル留置後の低ナトリウム血症の発症率は、肝臓・胆道・膵臓悪性腫瘍患者で5.1倍高く、血清ナトリウムのベースライン値が低い患者では7.9倍高く、BMI(体格指数)が高い患者では10%低かった。

「今回の研究結果は、こういった患者の管理に有用です。おそらくこれらのリスク要因のある患者においては腹膜カテーテル留置後、目標の範囲内かどうか、より注意深い観察が必要です」と、論文共同執筆者であるブリガム&ウィメンズ病院のMaria Clarissa Tio医師はロイターズ ヘルスへのメールで述べている。

腹膜カテーテル留置後の低ナトリウム血症患者262人のうち、61.2%は低ナトリウム血症の治療を受けていないか、治療の記録がなかった。治療を受けた患者のうち、静脈内輸液を受けたのはわずか4分の1強(28.6%)、水分制限を受けたのは3.8%、利尿薬を投与されたのは3.4%、腎臓科の診察を受けたのは8.8%だった。

「われわれの経験から、腹膜カテーテルにより腹水を排液しすぎて低ナトリウム血症になったがん患者でも静脈内輸液によって回復することを強調したいと思います」とTio医師は述べる。「このことを知り、ナトリウム値を改善することで患者の生活の質(QOL)が改善する可能性があります」。

腹膜カテーテル留置後の生存期間は、重症低ナトリウム血症患者とナトリウム値120 mEq/L以上の患者とでは同等だった(中央値はそれぞれ35日、38日)。

尿検査をした57人の患者のうち、21人(36.8%)は循環血液量減少性の低ナトリウム血症であった。その他の患者のほとんどは低ナトリウム血症の原因が特定できなかった。

「腹膜カテーテル留置は緩和的処置であることが多いのですが、通常この状況での低ナトリウム血症は静脈内輸液に反応します」とGupta医師は述べる。「症候性低ナトリウム血症での再入院を阻止することによって、患者のQOLが改善する可能性があるということです」。

「われわれの願いは、こうした複雑な問題を抱える患者を管理するために認識を高め、腫瘍科医と腎臓科医とともに集学的アプローチを発展させることです」とGupta医師は述べる。

引用:https://bit.ly/34HhyJL、 JAMA Network Open誌、2020年10月26日オンライン版

翻訳外山ゆみ子 

監修加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)

原文掲載日

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