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イピリムマブが転移性去勢抵抗性前立腺癌の全生存期間を延長

【ロイター】ドセタキセル販売名:タキソテール)の投与を受けたことのある転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者を対象とした、骨転移への放射線治療後のイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)での治療が全生存期間の改善と関連していることが、CA184-043試験の最終結果により示された。

「これにより、転移性去勢抵抗性前立腺がんにおける免疫療法の再検討を開始するべきである」と仏ヴィルジュイフにあるパリ・サクレイ大学グスタフ・ルッシー癌研究所のKarim Fizazazi医師は電子メールでReuters Health誌に述べた。「免疫療法を用いた試験は2つの第3相試験で全生存期間の改善が立証できなかったため、5年前にほぼ中止された。データからは一部の患者には明らかに効果が認められるが、同時に生存期間を早期に評価することが免疫療法の効果判定には不適切であることを示していた」。

モノクローナル抗体であるイピリムマブは、CTLA-4を介する抑制性シグナルを遮断することにより、免疫関連の副作用が発生するものの抗腫瘍免疫を高める。043を含む従前の試験ではイピリムマブにより無増悪生存期間は有意に改善したが、全生存期間は改善しなかった。

今回の試験では、一次解析に加えさらに2年間の追跡調査を行った043試験の長期結果が、Fizazi医師らにより評価された。

試験の解析には799人全員が対象となり、うちイピリムマブ群が399人、プラセボ群が400人であった。

全体としてはイピリムマブ群では49人、プラセボ群では29人が生存しており、生存者の追跡期間中央値は50カ月であったと研究者らがEuropean Urology誌に報告した。

全生存期間の曲線は7~8カ月間で交差したが、その後イピリムマブ群の生存期間はプラセボ群よりも優位であった。全生存期間の中央値は、プラセボ群が10.0カ月であったのに対し、イピリムマブ群では11.0カ月であった。

全生存率はイピリムマブ投与群がプラセボ投与群よりも、2年後(25%対17%)、3年後(15%対7.9%)、4年後(10%対3.3%)、5年後(7.9%対2.7%)と有意に高い値を示した。

イピリムマブの安全性の特徴はこれまでに報告されたものと同様であり、免疫関連の有害事象は主に消化管、皮膚、また比較的程度は低いが肝臓、内分泌器官に発生した。有害事象の大半はイピリムマブの最初の4回投与期間に発生した。

「免疫療法の効果を予測するバイオマーカーを同定することが重要になりつつある」とFizazi医師は述べた。「今回の長期的な解析では、CTLA-4を標的とした免疫療法によって長期的に大きな効果が得られるのは、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者の約10%に過ぎないことを示唆している」。

「この治療の副作用を考えると、1人の効果を得るために10人の患者を治療するのは理にかなわない 」とFizazi医師は述べた。「幸い、有望なバイオマーカー(MSIの状態、cdk12の損失、おそらく腫瘍遺伝子変異量など)が出現しているようだ」。

「このため製薬業界と学術界に対して、転移性去勢抵抗性前立腺がんの全患者を対象としたランダム化試験実施の中止を求め、さらにはバイオマーカーに基づくサブグループを事前に選択しさらに有意義な改善結果を示すよう促すべきである」とFizazi医師は結論づけた。

前立腺がんを専門とする米国ミズーリ州セントルイスのワシントン大学のRussell Pachynski医師は、Reuters Health誌に以下のように電子メールで述べた。「前立腺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬による治療は(米国や欧州で)承認されていないため、(今回の新たな知見により)大半の医療提供者が行う、あるいは行うべき業務が実際に変わるものではない」。

「しかしながら前立腺がんで唯一承認されている免疫療法薬であるシプロイセルTの後ろ向き試験のデータがあり、それによると免疫療法薬の早期使用(より低いPSA値での使用など)が生存期間の大幅な改善につながったことを示唆している。つまり『予後良好』の患者を対象としたデータは、免疫療法を早期に導入するという一般的な概念を裏付けるものだ」と同氏は付け加えた。

「転移性前立腺がんにおいて免疫チェックポイントによる治療を検討する試験を数多く実施した結果、さほど効果が認められなかった。その結果、これらの薬剤に一般的により反応性の高いがん種の方に多くの注目が集まった」と同氏は説明した。「今回の報告では、これらの患者において単剤による免疫療法はわずかではあるが長期的な生存効果があることを示している」。

「今後の課題は複数の薬剤を併用して生存期間を改善させることであり、現在多くの試験が行われている。前立腺がんの免疫療法には課題が多いが、効果がいくつか見られ始めている」とPachynski医師は述べた。

「転移性前立腺がんにおける免疫チェックポイント阻害薬による治療にわずかでも効果が認められたからには、前立腺がんの免疫療法を至適化するために一層賢明になる必要がある。T細胞を用いた治療よりも骨髄系や自然免疫系を標的とした治療に焦点を当て、転移巣の大半を占める骨腫瘍の微小環境をいかに改善させるかを考える必要があるだろう」と同氏は加えた。

前立腺がんの研究者でもある、ボストンハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のGuru P. Sonpavde医師は、Reuters Health誌へ電子メールで次のように述べた。「これらのデータは、転移性去勢抵抗性前立腺がん患者の一部がイピリムマブによって長期の効果を享受している可能性を示している。しかし初期解析が否定的であったことを考慮すると、今回の最終解析も実際の臨床業務を変えるようなものではない」。

「本データは明らかに興味をそそるものである。また、精密医療で蓄積したデータから割り出し合理的に選択した転移性去勢抵抗性前立腺がん患者を対象としたイピリムマブや他の免疫療法薬が、さらに合理的に開発されるべきだろう」と同氏は述べた。

「免疫治療薬(およびその他薬剤)となるものの開発は、有益性のある予測バイオマーカーの開発と並行して進めるべきである」Sonpavde医師は付け加えた。なお、本研究には参画していない。

本試験はブリストル・マイヤーズスクイブ社が助成し、同社とは著者のうち2名が雇用関係にあり、Fizazi医師を含む他の数名の著者並びにSonpavde医師とは様々な関係があった。

出典: https://bit.ly/34OiVXP  European Urology誌、2020年8月15日オンライン版 

翻訳原久美子

監修榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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