オシメルチニブ(タグリッソ)が肺がんの脳転移を抑制

【ロイター】タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)は、英国の製薬会社アストラゼネカ社の売上首位の製品であるが、早期に診断された肺がんの特定の組織型において、脳への転移を遅らせると土曜日に発表された。

外科切除が可能な早期に診断され、いわゆるEGFR遺伝子変異を有している肺がん患者を対象とした試験の結果、タグリッソは肺がんの脳転移リスクを82%抑制したことが明らかになった。

週末に開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)バーチャル会議で発表された第3相後期試験の結果は、この薬剤の可能性を明確に示しており、患者がタグリッソの利益を受けられるように肺がんの早期診断が推進されると思われるとアストラゼネカ社は述べた。

ADAURA試験と呼ばれる同試験の先行知見が本年5月に発表されており、それによれば、タグリッソには、EGFR変異を有する早期肺がんに対して抑制効果があり、製品売上高が数十億ドル上乗せされる可能性があるとのことである。

タグリッソによる収益は本年上半期に43%増の20億ドルに達し、同社のがん領域売上高の伸びを牽引しているが、その治療対象の大半は、すでに他の部位に遠隔転移が発生してしまった段階で診断されるEGFR変異陽性の肺がんである。

EGFR遺伝子変異は世界の肺がん症例の約4分の1にみられるが、アジアでは40%以上になることもある。

これまでアストラゼネカ社は各国の規制当局と、同疾患の早期ステージ病勢に対するタグリッソ使用の追加承認取得の可能性について議論してきた。アナリストは、ADAURA試験の結果を受けて、同剤の追加売上見込みは10億ドルから30億ドルになると予測している。

出典: https://bit.ly/2RP3xSY The New England Journal of Medicine誌、2020年9月20日オンライン版

翻訳担当者 山本哲靖

監修 川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)

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