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RET融合遺伝子標的薬Selpercatinibが脳転移を有する肺がんに奏効

複数の前治療歴を有する患者および複数の前治療歴を有する脳転移患者に対して、標的治療が有効であることが、第1/2相試験において示された。

RET遺伝子融合を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、分子標的治療薬であるselpercatinib[セルパーカチニブ](販売名:RETEVMO)は忍容性が高く、第1/2相試験であるLIBRETTO-001試験に参加した多くの患者で奏効の持続または腫瘍縮小が得られたことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究で明らかになった。

前治療歴のない患者の奏効率(ORR)は85%であり、プラチナ製剤を含む化学療法の前治療歴(1レジメン以上)を有する患者の奏効率は64%であった。脳転移を有する患者の奏効率は91%であった。

2020年8月26日にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたLIBRETTO-001試験の結果に基づき、セルパーカチニブは、RET変異を有する肺がんおよび甲状腺がんに対する治療薬として、5月に米国食品医薬品局(FDA)より承認された。

「遺伝子情報に応じてがんを治療する方法により、マルチキナーゼにより誘発されるがんの治療に変化が生じており、肺がんはその典型例である。しかし、これまで、RET融合陽性の非小細胞肺がんを適応症とした治療薬は承認されていなかった」と、筆頭著者であり、Investigational Cancer Therapeutics(実験的がん治療科)の准教授であるVivek Subbiah医師は述べた。「ヒトに初めて投与した第1相臨床試験から3年未満でFDAの承認を取得したことは、患者がセルパーカチニブにより大きな恩恵を受けたということ、また、有効な治療選択肢がこれまでになかったということを証明している」。

重大なアンメットニーズを解消する選択的RET阻害薬の評価

がんの増殖を促進する融合タンパク質を産生するRET融合は、RET遺伝子を含む染色体の一部が壊れて他の染色体の断片と再結合することにより生成される。RETの変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)の約2%、甲状腺乳頭がん(PTC)の10%~20%、甲状腺髄様がん(MTC)の大部分にみられる。RET融合陽性のがん全体の約半数が脳に転移する。

カボザンチニブやバンデタニブのようないくつかの標的薬は、RETの変異に対して補助的活性を有するが、臨床試験では、これらの標的薬の効果は非小細胞肺がん患者に対して限定的なものにすぎなかった、と本試験の共同研究責任者であるSubbiah医師は説明している。

本試験は複数の国で実施された非盲検試験であり、本試験に登録された進行性非小細胞肺がん患者144人の結果が報告された。主要評価項目は、独立した評価判定委員会が評価した奏効率であり、副次評価項目は、安全性、頭蓋内反応、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)などであった。試験担当医師が評価した結果に、独立した評価判定委員会が評価した結果との有意差は認められなかった。

本試験には、前治療歴のない患者(39人)とプラチナ製剤を含む化学療法の前治療歴(1レジメン以上)を有する患者(105人)が含まれた。前治療歴を有する患者が受けた前治療のレジメン数の中央値は3レジメンであり、半数を超える患者が免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けていた。両コホートを合計した全体の人種の内訳は、白人57.6%、アジア人32.6%、黒人5.6%、その他2.8%、不明1.4%であった。年齢の中央値は61歳であり、性別は女性が58.3%、男性が41.7%であった。

前治療歴を有する患者では、完全奏効2%、部分奏効62%、病勢安定29%であった。奏効期間の中央値は17.5カ月であり、奏効が認められた患者の63%は奏効が12カ月間(中央値)持続した。無増悪生存期間の中央値は16.5カ月であった。

前治療のない患者では、部分奏効85%、病勢安定10%であった。6カ月後の時点で、奏効が認められた患者の90%は奏効が持続しており、解析時点において、奏効期間と無増悪生存期間のいずれも中央値に達していなかった。

本試験では、測定可能な脳転移が11人に認められた。11人中10人(91%)の脳内病変に奏効が認められ、このうち3人は完全奏効であった。中枢神経系(CNS)病変の奏効期間の中央値は10.1カ月であった。

高頻度で発現したグレード3以上の有害事象は、高血圧(14%)、アミノトランスフェラーゼ増加(13%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加(10%)、低ナトリウム血症(6%)、リンパ球減少症(6%)であった。試験治療に関連した有害事象により、4人がセルパーカチニブの投与を中止した。

甲状腺がん患者でも高い抗腫瘍活性を示した

LIBRETTO-001試験の追加コホートにおいて、セルパーカチニブは、RET変異を有する甲状腺髄様がん、およびRET融合を有する甲状腺乳頭がん/甲状腺未分化がんなどのRET変異陽性甲状腺がんに対しても抗腫瘍活性を示し、同様の安全性プロファイルを示した。

甲状腺髄様がん患者の奏効率は、前治療のない患者で73%、標的治療による前治療歴を有する患者では69%であった。また、前治療を有する甲状腺乳頭がん/甲状腺未分化がん患者では奏効率は79%であった。これらのデータも2020年8月26日にNew England Journal of Medicine誌に掲載され、Subbiah医師と、内分泌新生物・ホルモン疾患部門の教授であるMaria Cabanillas医師が共同著者となっている。

「本データは、これらの患者がセルパーカチニブの恩恵を受けており、セルパーカチニブがマルチキナーゼ阻害薬や化学療法よりも安全であることを示しています」とSubbiah医師は述べている。「肺がんや甲状腺がんでは、セルパーカチニブのような特異的標的治療の恩恵を受ける可能性のある患者を特定するために、RETやその他の遺伝子融合を検出することができる信頼性の高い最先端の分子スクリーニング検査を継続的に実施することが重要になるでしょう」。

本研究は、Eli Lilly社の完全子会社であるLoxo Oncology社の支援を受けている。共著者および開示事項の全リストは本論文の全文とともにこちらにて閲覧可能である。

翻訳伊藤友美

監修小宮武文(腫瘍内科・Parkview Cancer Institute)

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