バーキットリンパ腫成人患者に毒性の低い用量調整EPOCH-R療法

バーキットリンパ腫成人患者に対し、すべての年齢群かつHIV感染状況を問わず、標準的な用量強化化学療法より毒性の低い代替治療レジメンが高い有効性を示すことが新たな研究により明らかになった。用量調整(DA)EPOCH-R(エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン+リツキシマブ)と呼ばれるこのレジメンは、すでにびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する治療選択肢の1つであり、忍容性が高く、外来診療でも投与可能である。

この研究結果は2020年5月26日にJournal of Clinical Oncology誌に発表された。この研究は米国国立衛生研究所(NIH)に属する米国国立がん研究所(NCI)がん研究センターの研究者らによって主導され、NCIのがん治療評価プログラムから資金援助を受けた。研究は米国各地の22の研究センターで実施された。DA-EPOCH-Rレジメンを最初に開発したのは、メリーランド州ベセスダにあるNIH臨床センターの、Wyndham Wilson医学博士をリーダーとするNCIの研究チームである。

本研究の筆頭著者の一人であるNCIリンパ系腫瘍支部のMark Roschewski医師は、「バーキットリンパ腫が用量強化化学療法で治療できることはわかっていましたが、この療法により成人患者に急性毒性が現れる場合があります。今回の結果により、成人患者に対する毒性が低い根治的治療選択肢が得られる可能性があります。それだけでなく、標準的治療を受けられない高齢患者やHIVなどの共存疾患がある人を含めてほとんどの成人患者にも有効な選択肢となり得ます」と述べた。

バーキットリンパ腫は、まれではあるが悪性度の高いB細胞性リンパ腫で、成人よりも小児が多く発症する。バーキットリンパ腫の小児患者を治療するために開発された用量強化化学療法は、成人よりも小児で忍容性が高い。成人の場合、特に高齢者やHIV感染など健康状態が重篤な場合は、重度の副作用が発生する可能性がある。HIV/AIDS感染者はバーキットリンパ腫の発症リスクが高い。

NCIの研究者らは、毒性が低い治療法でもバーキットリンパ腫成人患者に対して有効かを見極めるために、いくつかの方法を試してきた。30人の成人患者を対象にNCIのみで実施した初期パイロット試験では、DA-EPOCH-R化学療法レジメンが有効性を示した。DA-EPOCH-Rレジメンは、個々の患者の化学療法に対する忍容性に応じて個別に調整される。このレジメンでは各サイクルで96時間超にわたり化学療法剤を注入するが、「用量調整」とは、化学療法に対する忍容性が良好であれば、後のサイクルほどより高い用量を投与できることを意味する。これは、全患者に最初から極めて高用量を投与する「用量強化」化学療法とは対照的である。

研究者らはこの結果を確認するために、より大規模な多施設共同第2相試験を実施し、113人の患者を組み入れた。患者らは、腫瘍の大きさや全身状態などの特性に基づいて低リスク患者と高リスク患者に識別された。年齢中央値は49歳で、62%が40歳以上であった。研究者らは、中央値ほぼ5年の追跡期間で、4年の無イベント生存率を84.5%と算定した。これは、この割合の患者にがん再発の徴候がみられなかったことを意味する。全生存率は87%であった。低リスク患者の無イベント生存率は100%であり、高リスク患者の無イベント生存率は82%であった。EPOCH-R療法は、70代、80代の患者を含む全年齢群に対して、HIV感染状況を問わず有効であった。この療法は忍容性良好であり、用量強化化学療法で頻発する重度の副作用を発現した患者は比較的少なかった。

この結果は、高用量の強化化学療法は必ずしも治癒に必要ではなく、厳密な定義により低リスクと判定された患者に対しては用量を抑えた化学療法で治療可能であることを示唆している。さらに、用量強化化学療法を受けるには長期の入院が必要とされるのに対して、EPOCH-Rは外来診療で受けることができる。

本研究で発生した治療関連死は5人であった。本研究では、中枢神経系、特に脳脊髄液(CSF)の疾患を有する患者は治療関連死または治療不成功のリスクが最も高いことが明らかになった。脳脊髄液疾患を伴う患者に対する最良の治療法を見極めるために、さらなる研究が必要であると、研究者らは語った。

翻訳担当者 角坂 功

監修 北尾 章人(大学院医学研究科腫瘍・血液内科学 /神戸大学)

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