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ダナファーバー、ASCO2020にて主要研究を発表

ダナファーバーがん研究所の研究者らが、2020年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で多くの研究発表を行う。これらの研究は、5月29日~31日に開催されるバーチャル科学会議の間、オンラインで発表される。ASCOは世界最大の臨床がん研究集会であり、世界中から3万人を超える腫瘍専門医が参加する。

研究成果の発表は、乳がん、肺がん、リンパ腫、腎臓がん、その他多くのがんにおける新しい治療法や診断の進歩、また、ビデオ教育を用いた診療のガイド、がん診療における人種・民族間の格差を取り上げている。研究のハイライトは以下のとおり。

ZUMA-5試験の中間解析:再発/難治性の低悪性度非ホジキンリンパ腫患者を対象としたaxicabtagene ciloleucelの第2相試験 
著者:Caron Jacobson, MD   アブストラクト:8008

最近の臨床試験で、大多数の濾胞性リンパ腫または辺縁帯リンパ腫(増殖の遅い、2種類の非ホジキン白血病)患者において新しいCAR-T細胞療法が奏効し、有益性が示されたと、ダナファーバーがん研究所の研究者らが報告している。中央値で3回の前治療歴を有する患者140人(濾胞性リンパ腫124人、辺縁帯リンパ腫16人)が、ZUMA-5試験に参加し、腫瘍細胞上のCD19受容体を標的とするCAR-T細胞療法であるaxicabtagene ciloleucel[アキシカブタゲン シロロイセル](販売名:Yescarta)による治療を受けた。ZUMA-5試験では、93%の患者で奏効が得られ、80%の患者に完全奏効(治療後に腫瘍が検出されないこと)が認められた。初回完全奏効が得られた患者では、80%が中央値15.3カ月の追跡期間後も奏効を維持した。治療において、最も頻度が高かった副作用は、好中球減少症、貧血、好中球数減少であり、ほとんどの場合、管理可能であった。重度の神経毒性の発現率は15%であった。濾胞性リンパ腫患者のうち、23%はサイトカイン放出症候群を発症せず、発症までの期間の中央値は4日であったことから、将来的には外来での投与が可能になる可能性があると考えられた。

ツカチニブ(翻訳略)Tucatinib vs placebo added to trastuzumab and capecitabine for patients with previously treated HER2+ metastatic breast cancer with brain metastases (HER2CLIMB)

関連: FDAがHER2陽性転移乳がんにツカチニブを承認

 

リヒター症候群を対象としたベネトクラクス+用量調整R-EPOCH療法(VR-EPOCH療法)の多施設共同第2相試験

著者:Matthew S. Davids, MD, MMSc  アブストラクト:8004

リヒター症候群において、標準的な化学免疫療法レジメンに比較的新しい分子標的薬であるベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)を併用すると有望な活性が示されたと、ダナファーバーの研究者らは述べている。リヒター症候群では、比較的悪性度の低い疾患である慢性リンパ性白血病が、悪性度の高い種類の非ホジキンリンパ腫(NHL)に転化し、極めて不良な予後となる。標準治療はなく、一般的に、R-EPOCH療法という、4つの化学療法剤と、モノクローナル抗体免疫療法薬のリツキシマブ(販売名:リツキサン)を併用したレジメンが使用されている。R-EPOCH療法は一部の非ホジキンリンパ腫に対しては高い効果を示すが、リヒター症候群での完全奏効率は約20%、平均生存期間は3~6カ月にとどまっている。

第1相試験におけるリヒター症候群患者の小規模コホートで、初のBCL2阻害薬であるベネトクラクスの単剤での奏効率は43%であった。今回の第2相試験では、ベネトクラクスは化学療法の効果を増強する「化学療法の増感」剤として働く可能性があるという根拠に基づいて、同剤がR-EPOCH療法に併用された(VR-EPOCH療法)。この単群、第2相、研究者主導、多施設共同試験では、ダナファーバー、MDアンダーソン、およびオハイオ州立大学で26人の患者が登録された。併用療法を開始した20人のうち、16人(80%)で奏効が得られ、13人(65%)で最良効果として完全奏効が得られた。患者8人が同種幹細胞移植を受け、そのうち最初の1人は移植後2年半が経過した現在も完全奏効状態にある。移植候補ではなかった患者は、ベネトクラクスの維持療法を継続することができ、そのうち最も長く投与を受けた患者は、試験の化学療法部分を終了してから2年以上経過した現在も完全奏効状態にある。副作用は、感染症や血球数の低下など、R-EPOCH療法単独でみられる典型的なものであった。

本試験の責任医師であり研究の筆頭著者であるMatthew S. Davids医師(医科学修士)は、VR-EPOCH併用療法を開始した患者の約3分の2で完全奏効が達成され、これは、R-EPOCH療法単独で過去に達成された20%よりもはるかに高い割合であると述べた。この化学療法増感法は、この患者集団を対象としてさらに研究が進むであろう。

 

再発/難治性多発性骨髄腫患者におけるBCMA標的CAR-T細胞療法、idecabtagene vicleucel:KarMMa試験の初期成績

著者:Nikhil Munshi, MD  アブストラクト:8503 

腫瘍細胞上に存在する主要な形質細胞抗原を標的とする、有望なCAR-T細胞療法が、いくつかの前治療歴を有する再発/治療抵抗性多発性骨髄腫患者において、深く持続的な奏効を示したことが、ダナファーバーがん研究所の研究者らによる国際共同臨床試験の初期データで明らかになった。KarMMa試験の患者128人が、自家T細胞を遺伝子改変したCAR-T細胞療法である、idecabtagene vicleucel(イデカブタジェンビクルーセル)による治療を受けた。このCAR-T細胞療法は、骨髄腫細胞上のB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする。中央値13.3カ月の追跡期間後、73.3%で部分奏効または完全奏効が得られ、増悪までの期間の中央値は8.6カ月で、いずれも投与量を増やすと高くなった。最も頻度が高かった副作用は、血球減少症(赤血球数の低下)と、CAR-T細胞療法において多くみられる副作用であるサイトカイン放出症候群であった。

 

前立腺がんの男性を対象としたビデオ教育または対面の遺伝カウンセリングのランダム化比較試験

著者:Huma Q. Rana, MD  アブストラクト:1507

この研究では、生命に影響を及ぼす可能性のある前立腺がんを有する男性患者を対象に、遺伝子検査より先に実施する、ビデオ教育という新しい方法と、対面での遺伝カウンセリングが比較された。患者の遺伝子検査に対する受容度に有意な差は認められなかった。研究はまだ終了していないが、このランダム化試験は、コロナウイルスのパンデミックなど、さまざまな理由で対面での遺伝カウンセリングを受けられない患者にとって、ビデオ教育の利用により、がんの遺伝学的教育や遺伝子検査が受けやすくなることを示唆している。

Huma Q. Rana医師、およびMary-Ellen Taplin医師らによる、ProGenと呼ばれるこの試験では、命にかかわる可能性のある前立腺がんを有する患者が募集された。試験の対象者は、転移性疾患、高グリーソンスコア、局所療法後の前立腺特異抗原(PSA)の上昇がみられる患者や、55歳以下で診断された患者などであった。Rana医師は、対象者の13%で、がん感受性遺伝子に病的あるいはその疑いのある変異があり、陽性者の32%でBRCA1、BRCA2にこうした変異があることを発見した。遺伝子検査による、こうした変異体の同定は、分子標的療法につながる場合があり、がんの監視(サーベイランス)における指標にもなり得る。遺伝子検査は、こうした患者に推奨されるが、遺伝カウンセリングや遺伝子検査は、リソースのひっ迫により、受けられる機会が制限されている。ProGen試験では、従来、がん遺伝子クリニックで十分な医療を受けられていない患者や代理人が伴わない患者に遺伝子検査の機会を提供することを目的とした、新しいビデオによる検査前モデルが検討された。

2年間にわたり、患者662人がビデオ教育または対面での遺伝カウンセリングに3対1の割合で無作為に割り付けられた。介入時、ほとんどの患者が、割り付けられた群における介入(ビデオ教育または対面での遺伝カウンセリング)が有用であることに同意または強く同意した。研究者らは、ビデオ教育という新しい様式と従来の遺伝カウンセリングは、いずれも「遺伝子検査の利用率が高く、受容度と満足度の評価項目において双方に有意な差はなかった」と結論づけた。

 

終末期の予後不良ながん患者のオピオイド入手における米国の傾向と人種・民族間格差

著者:Andrea Enzinger, MD  アブストラクト:7005

オピオイド中毒の危機を緩和しようとする取り組みは、終末期のがん患者、特に黒人患者やその他の人種的/民族的少数派にとって、意図しない結果をもたらす可能性がある。がん患者の終末期におけるオピオイドの入手は2007年以来大幅に減少しており、アフリカ系アメリカ人では、さらに大きな減少となっていることが、最近のダナファーバーの研究で明らかになった。

Andrea Enzinger医師は、2007~2016年の間に死亡した、メディケア加入、予後不良のがん患者243,124人を対象としたこの研究の筆頭著者である。解析の結果、死亡またはホスピス入院前の30日間にオピオイド処方を受けたがん患者の割合は、研究期間中に41.7%から35.7%に減少し、黒人患者(39.3%から29.8%)の方が、白人患者(42.2%から36.5%)よりも、大幅に減少していることが明らかになった。重度のがん疼痛の管理に重要な長時間作用型オピオイドの使用も、2007年の17%から2016年には12%に減少した。また、黒人患者は、白人患者に比べて長時間作用型オピオイドを処方される傾向が有意に低く、オピオイド処方量は有意に低かった。終末期の疼痛による救急外来の受診率は、研究期間中に13.2%から18.8%に増加した。ここでも、黒人患者は白人患者に比べて、疼痛による救急外来の受診率が有意に高かった。

研究者らは、がん患者の終末期におけるオピオイド入手は2007年から2016年にかけて大幅に減少し、一方で、痛みに関連した救急外来の受診は増加したと結論づけた。この傾向に加えて、オピオイド入手における人種・民族間の有意な格差があり、黒人患者では、オピオイドの処方数、用量ともに少なく、終末期の疼痛による救急外来診療が多いと、研究者らは報告している。

翻訳竹原順子

監修吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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