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脳幹高悪性度神経膠腫の成人患者は、外科手術により数カ月から数年延命の可能性

  • 2020年3月16日
  • 発信元:ジョンズホプキンス大学

診療録の研究は、医師と患者がより多くの情報に基づいて治療法を決定するのに役立つ

ジョンズホプキンス・キンメルがんセンターの研究者らが主導する診療録研究の結果によると、脳幹高悪性度神経膠腫(稀少性、致死性ともに最も高い脳腫瘍の1種)の成人患者に関して、腫瘍全体を外科的に摘出すると、放射線療法や化学療法を選択した場合より、数カ月間、場合によっては数年間も延命する可能性があるという。

これらの腫瘍の生存率は依然として低く、生検のみを受けた患者の診断後の生存期間の中央値は8カ月であると指摘されている。しかしながら、完全な外科的摘出が可能である場合には、調査された記録のデータによれば、中央値が16カ月以上まで増加する可能性があることを示している。

「こうした手術でできることを知れば、脳神経外科医、神経腫瘍医、および患者が期待できることをより理解できるようになるため、私たちは、このようなまれで重篤な腫瘍に対する標準治療の改良に向けて前進することができます」と、ジョンズホプキンス大学医学部の脳神経外科助教でジョンズホプキンス・キンメルがんセンター所属の研究リーダーDebraj Mukherjee医師(公衆衛生学修士)は述べる。

この研究結果は、10月16日にJournal of Neuro-Oncology電子版で報告された。

毎年、米国の患者約1万人が高悪性度神経膠腫と診断されるが、この悪性度の高い腫瘍は、脳の「足場」を形成しているグリアと呼ばれる脳細胞から発生する。心拍、呼吸、意識など、生命に必要なほとんどすべての機能に不可欠なコア構造である脳幹でこうした腫瘍が生じるのは、きわめてまれである。

脳幹は生命維持に必要な性質をもつため、脳幹高悪性度神経膠腫は従来、化学療法と放射線療法のみにより治療が行われてきた。しかしながら、近年、ジョンズホプキンスや世界中の複数の大学病院等では、いわゆる「脳幹安全進入ゾーン」を介して腫瘍に安全にアクセスすることができるようになり、以前は手術不可能だった腫瘍の手術が可能になった。

その結果として、より多くの患者が腫瘍を一部摘出または全摘出されるようになったと研究者らは述べる。しかしながら、神経膠腫は希少疾患であるうえ、外科治療が受けられるようになったのは比較的最近であるため、治療を比較することは難しく、手術がどのような延命効果をもたらしているかは不明であった。

これを解明するために、Mukherjee医師は、ジョンズホプキンス・キンメルがんセンターの博士研究員Adham M. Khalafallah医師(医学・外科)らと共同で、米国国立がん研究所のSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Result)のデータベースを使用して調査を行った。このデータベースは、米国の約35%をカバーする19の地理的地域における記録から収集された、がん患者に関する広範な情報群である。1973年~2015年の期間における、このデータベースの調査により、腫瘍に対して生検(15%)またはなんらかの外科的介入(85%)を受けた脳幹の高悪性度神経膠腫患者103人が見つかった。手術を受けた患者のうち、約19%が外科的完全摘出を受けた。

SEERの記録には、治療介入に関する情報以外に、これらの患者に関する他の大量のデータ(年齢、人種、配偶者の有無、腫瘍の大きさ、進展の程度、術後放射線治療の有無、診断後の生存期間など)が含まれていた。

これらの情報を解析したところ、外科手術を受けた患者の生存期間が有意に長いことがわかった。生検のみを受けた患者では診断後の生存期間の中央値が8カ月であったのに対して、部分摘出術を受けた患者の生存期間は約11カ月、完全摘出術を受けた患者の生存期間は約16カ月であった。年齢が若いこと、配偶者があることなど、より長い生存と関連する他の要因をもつ患者の一部では、完全摘出後の生存期間中央値が生検のみを受けた患者と比べて最高で4倍となった。

将来的には、最も利益をもたらす可能性がある治療法を患者ごとに選定するのに役立つバイオマーカーを特定することによって、生存期間をさらに延長することができるかもしれないとMukherjee医師は言う。

この研究に参加したジョンズホプキンスの他の研究者は以下のとおりである:Joshua Doyle, Wuyang Yang, Yi Sun and Chetan Bettegowda

翻訳畔柳祐子

監修西川 亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

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