低所得および低学歴地域の若年大腸がん患者は死亡リスクが高い

ASCOの見解

「私たちは、近年若年成人の大腸がんの発生が増加しているという、懸念される動向を確認しました。居住地が若年成人の大腸がんの予後に大きな影響を及ぼしているという本研究の知見と併せて、この問題には大いに注目する必要があります。住む場所に関わりなく、1人1人のがん患者が質の高いがんケアを受けるべきです」とFACP, FSCT, FASCO, ASCO 医局長および副代表であるRichard L. Schilsky医師は述べた。

40歳以下の若年成人患者26768人の後ろ向き解析では、低所得(38000米ドル未満)および低学歴(高校卒業率79%未満)の地域に住んでいる患者は、都市部に住んでいる患者と同様に、予後が悪く、死亡リスクが高かった。この結果は、1月23~25日にカリフォルニア州サンフランシスコで開催される消化管がんシンポジウム2020で発表される。

米国内では毎年50歳未満の16,000人を超える人々が大腸がんと診断されている。この集団の発生率は1994年以来51%上昇し、20歳から29歳の人々の間で最も急激な上昇が認められた。

「健康管理には多くの格差があります」と筆頭著者でノースカロライナ州シャーロットのレビーンがん研究所のAshley Matusz-Fisher医師は述べた。「より多くを学び、格差を除去できるように、社会統計学的格差を考察することが重要です」。

本研究について

これまでの研究では、大腸がんなどのがん患者の社会統計学的格差を調査してきたが、筆者によれば、本研究は若年成人大腸がん患者を対象に社会統計学的格差を調査し、居住地域が全生存率のような転帰に関係するのかを初めて研究したものであるという。研究者はNational Cancer Databaseによる、2004年から2016年の間に大腸がんと診断された若年成人26768人のデータを用いた。患者の半分は男性(51.6%)、半分が女性(48.4%)であり、大多数が白人(78.7%)、14.6%が黒人、6.6%が他の人種だった。

研究者は、居住地の収入および教育の高低をもとに患者を分類した。患者の約32%が最高収入地域(平均収入$68000以上)に、また18.4%が最低収入地域(平均収入$38000以下)に住んでいた。また患者の約4分の1(23%)が高校卒業率が最も高い地域(少なくとも学生の93%が卒業)に、20%が最も低い地域(高校卒業が79%未満)に住んでいた。さらに、約32%が大都市圏に、18.4%が都市部に住んでいた。

主な知見

低所得、低学歴地域の若年成人患者は、高所得、高学歴地域の患者と比べて死亡リスクが24%高かった。

さらに人種、保険の状態、がんの病期、併存疾患について調整した後、収入に関わらず都市部の患者は大都市圏の患者と比べて死亡リスクが10%高いことがわかった。

ステージ4を診断された低収入地域の患者は、同じ診断の高収入地域に住む患者と比べて、全生存中央値も低かった。

最期に、最低収入地域の患者は黒人であることが多く、民間の健康保険に加入しておらず、併存疾患があり、進行がんであることが多いことがわかった。

次のステップ

「格差は必ずしも民族や人種の違いにつながるものではありません。私たちの患者の間には多くの他の形の格差が生じています。それらの格差はがんケアの利用の可能性や機会に影響を与え、患者の転帰に影響を及ぼす可能性が高いでしょう」と、ノースカロライナ州シャーロットのレビーンがん研究所消化器腫瘍医および内科准教授であり統括著者であるMohamed E. Salem医師は述べた。「ヘルスケアの格差に関する認識は高まっていますが、憂慮すべき知識のギャップが、特に若年成人がん患者の間に今なお存在しています。そのため、ケアを受ける機会を提供し、ケアへの障害を除去するために、ヘルスケアの格差に関する認識を高めるよう、さらに努力が必要です。その結果、格差をなくし、健康の公平性を実現することができるのです」。

本研究は、あらゆる追加援助を受けていない。

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 小宮武文(腫瘍内科・Parkview Cancer Institute)

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