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特定の免疫細胞が卵巣がんの生存期間改善と関連する可能性

卵巣がん患者の腫瘍内に存在するある種の免疫細胞が、一部の患者における生存期間の改善に関連していることが、大規模国際研究において示された。

 

卵巣腫瘍組織解析コンソーシアムの研究者らは、この解析のために5,500人超の患者の腫瘍において、細胞傷害性CD8陽性腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と呼ばれる免疫系細胞の計数を行い、結果をこれら患者の生存期間情報と比較した。

 

TIL数と全生存期間との間には相関があり、卵巣がんのなかで最も一般的かつ致死性の高い組織学型(あるいは組織型)である高悪性度漿液性卵巣がん患者において相関が最も強く、これら患者においては腫瘍内TIL数の増加に伴った生存期間の改善が認められた。

 

メイヨー・クリニックのEllen L. Goode医学博士らは、10月12日付JAMA Oncology誌において、得られた所見を報告している。

 

卵巣がんの主要な組織型としては、類内膜性、明細胞性、粘液性、低悪性度漿液性、そして高悪性度漿液性といった5つが挙げられる。

 

研究者らは、少なくとも一部の卵巣がん患者において腫瘍内TIL細胞の(存在の有無だけではなく)数が卵巣がんの全生存期間に関連している可能性があり、このことが新しい研究によって示されたとしている。

 

「この研究からのメッセージの1つは、腫瘍内の免疫細胞は多いほど良いということです」この研究は世界中の70の研究機関により実施されたが、その数十人の研究者のうちの一人で試験の共著者である、カルガリー大学のMartin Koebel医師の言葉である。

 

Koebel医師はさらに「これは検証試験であり、患者のサンプルサイズの大きさに主眼が置かれています」と述べているが、TIL数と生存期間の関連性は、卵巣がんの組織型により違うとも指摘している。

 

卵巣腫瘍における免疫細胞の計数

TIL細胞と全生存期間との間に相関があることは、これまでの研究において卵巣がんを含む数種類のがんに対しすでに認められていた。しかし卵巣がん試験の規模は比較的小さく、さまざまな組織型の卵巣がん患者について評価することができなかった。

 

コンソーシアムではこういった問題に対処するため、高悪性度漿液性卵巣がん患者およそ3,200人を含む9カ国から何千人もの患者データの収集および分析を行った。研究者らは卵巣腫瘍におけるCD8陽性免疫細胞レベルを、無、低、中、高に分類した。

 

そして分類されたレベルを、患者の生存期間情報と比較した。高悪性度漿液性卵巣腫瘍症例をすべて統合し調べたところ、生存期間中央値はCD8陽性TILが無しとされた患者では2.8年、低、中、高レベルとされた患者ではそれぞれ3年、3.8年、5.1年であった。

 

「注目すべきは免疫細胞の効果の大きさです」。「腫瘍内リンパ球が高レベルの群は、全生存期間の中央値が、腫瘍内リンパ球が無しである群のほぼ2倍です」とKoebel医師は述べている。

 

卵巣がんの組織型によって異なる結果

全体とすれば、CD8陽性TILレベルと卵巣がん生存期間との関連は、患者の有する卵巣がんの組織型や組織型内の分子サインといった特定の因子に依存する可能性があることが示唆された。

 

卵巣がんの組織型があまり一般的ではない患者において、同じような関連性がみられるかを研究者らが評価したところ、結果はさまざまであった。類内膜性および粘液性腫瘍を有する患者ではTILレベルが生存期間と関連したが、明細胞性および低悪性度漿液性卵巣がん患者においては関連が認められなかった。

 

高悪性度漿液性卵巣がん患者においては、がんのステージや術後に残存するがんの程度といった既知の予後因子を研究者らが考慮した場合でも、高レベルのCD8陽性TILと良好な転帰との間には関連があった。

 

しかしながら、BRCA2遺伝子の有害な突然変異を受け継いだ高悪性度漿液性卵巣がんの患者では、CD8陽性TILと生存期間との関連性はみられず、またこれに反してBRCA1遺伝子の突然変異を受け継いだ患者では関連性がみられた。

 

「この試験では患者さんの数が多いことが印象的です。そのため、CD8陽性TILの数が卵巣がん女性の全生存期間と相関性があるかどうか、あるとするなら卵巣がんの組織学的亜型間でどのように異なるかといった細かい質問にも研究者に答えることができます」この試験には参加していないNCIがん研究センターのChristina M. Annunziata医学博士の言葉である。

 

以前までの小規模な試験の結果に基づけば、明細胞性および粘液性がんにはCD8陽性細胞が全くない可能性が高く、このことはAnnunziata氏にとって驚くことではなかった。しかしこの所見は、以下Annunziata氏が説明する内容を示唆している。「CD8陽性細胞の存在は免疫療法感受性の信頼できるマーカーでない可能性があります。免疫チェックポイント阻害剤の試験において『有効例』は多くが明細胞性がんの女性患者でしたから」。

 

博士はさらにこう述べている。「CD8陽性細胞の存在は、卵巣がんの女性にとって明確な予後因子となる可能性があります」。「どの患者さんが免疫チェックポイント阻害剤に反応するかを予測できるようになるまでには、さらなる研究が必要です」。

 

浸潤に影響を及ぼす因子の研究

この試験の著者らは、卵巣腫瘍への免疫細胞の浸潤を誘導する因子を特定することで、このがんの転帰の多様性について知見が得られるだろうと述べている。この研究はまた、現在および将来の治療法において有効性の改善戦略につながる可能性もある。

 

「免疫システムが多くのがんで重要であることはわかっています」とメイヨー・クリニックのGoode医師は述べている。「がん患者の治療における免疫システムの利用に役立てるために、卵巣がんやその他のがんにおける免疫因子の研究が、さらに必要であることは明らかです」。

 

Goode医師らは現在、遺伝性因子、腫瘍微小環境の特徴、およびその他の免疫細胞といった、腫瘍およびその罹患者の特徴を含め、いかなる因子が腫瘍のTILレベルに影響を及ぼしているのかを把握しようとしている。

 

Goode医師はまた、以下のように述べている。「今回の研究で強調されるのは、卵巣がんの予後因子を明らかにするために、厳密な科学的手法を使用した世界的な研究が必要であるということです」。

翻訳岡部師才

監修廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

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