急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の臨床試験での除外基準の再検討をー2017年1月

MDアンダーソン OncoLog 2017年1月号(Volume 62 / Issue 1)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の臨床試験での除外基準の再検討を

併存疾患を有するため従来の臨床試験では除外対象となっていた急性骨髄性白血病(AML)および骨髄異形成症候群(MDS)患者でも、低強度の介入試験に参加することで利益を得る可能性があることが新たな研究から示された。

「AMLとMDSを対象にした臨床試験の大半では併存疾患を有する患者、未治癒の悪性腫瘍や新たに発生した悪性腫瘍を有する患者、臓器障害を有する患者や全身状態が良くない患者を除外しています」とテキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病学教授 Guillermo Garcia-Manero 医師は語る。「ですが、患者を守るのうえで、こうした基準がどう関わっているのかはよく分かりません。臨床推論にもとづく部分もありますが、こうした基準の中には患者というよりむしろ試験対象の薬剤や治療介入を守るために存在するものもある気がします」。

Garcia-Manero 医師の研究班は、そうした理由により従来の研究では除外対象となる患者でも臨床試験に参加させ治療が行えるのか、検証を行った。研究は2段階で行い、生存率、寛解率、毒性などを基準とした終了ルールを設けた。

第1段階の単一群試験では30人の患者(MDS患者16人、AML患者14人)に対し低用量のアザシチジンとボリノスタットを投与した。全生存率は40%で、完全寛解率は27%であった。 60日後の全生存率は83%であった。全生存期間は7.8カ月で無イベント生存期間の中央値は5.1カ月であった。主な有害事象は Grade 1 ないし 2 の消化管毒性であった。

第2段階のランダム化試験では79人の患者(MDS患者47人、AML患者32人)に対し低用量のアザシチジン単剤(27人)、もしくは低用量のアザシチジンおよびボリノスタット(52人)を投与した。単剤療法群と併用療法群を比較すると、60日生存率は単剤療法群で67%、併用療法群で85%、全寛解率は単剤療法群で48%、併用療法群で46%、全生存期間は単剤療法群で6.1カ月併用療法群で7.6カ月、 無イベント生存期間は単剤療法群で3.0カ月、併用療法群で5.5カ月であり、両者に有意差はみられなかった。この試験でも主な有害事象は Grade 1または2の消化管毒性で、併用療法群の発生率(81%)の方が単剤療法群の発生率(56%)よりも高かった。

単変量解析を行ったところ、パフォーマンススコア3以上、クレアチニン濃度とビリルビン濃度のいずれかが2mg/dL 以上、また他の悪性腫瘍の存在といった項目が、60日生存率、全生存期間、無イベント生存期間の低下に影響しないことが分かった。また、Adult Comorbidity Evaluation-27インデックスが2点および3点であっても生存期間は低下しなかった。

Garcia-Manero医師の研究班は、AML患者とMDS患者を対象とした臨床試験で用いられている標準的な除外基準は再検討されるべきであると結論づけた。研究班によると、基準を緩和することで最も利益を得やすい予後不良の患者に対しても試験薬の投与が可能となる。

研究結果は12月開催の第58回米国血液学会年次総会で発表された。

原文

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

翻訳担当者 渋谷武道

監修 佐々木裕哉(血液内科・血液病理/久留米大学病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

白血病に関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
【米国血液学会(ASH)】進行した急性骨髄性白血病に新規メニン阻害薬が有望の画像

【米国血液学会(ASH)】進行した急性骨髄性白血病に新規メニン阻害薬が有望

MDアンダーソンがんセンター特定の遺伝子変異を有する白血病に有望な効果が、MDアンダーソン主導の2つの臨床試験で示されるテキサス大学MDアンダーソンがんセンター主導の2つの臨床...
再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望の画像

再発した白血病、リンパ腫にネムタブルチニブが有望

オハイオ州立大学総合がんセンターオハイオ州立大学総合がんセンター・アーサーG.ジェイムズがん病院リチャードJ.ソロベ研究所(OSUCCC – James)の研究者らが研究している新しい...
初発AMLへの高用量シタラビン併用療法は安全かつ奏効を改善の画像

初発AMLへの高用量シタラビン併用療法は安全かつ奏効を改善

MDアンダーソンがんセンター初めて急性骨髄性白血病(AML)と診断された若くて体力のある患者には、通常、シタラビンとアントラサイクリンの化学療法が投与されるが、最近、シタラビンの高用量...