大腸左側原発の転移性大腸がんは、右側と比べ生存期間が長い

結腸の左側に発生するがんは、右側に比べ長期生存につながる

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解

「本研究は大腸がんの腫瘍位置に関するこれまでで最大規模の研究で、この予想外の因子によって、なぜ特定の患者は他の患者より良い結果を示すのかといういくつかの長年の疑問が解明される可能性を強く示唆しています」と、ASCO会長のJulie M. Vose医師(MBA、FASCO)は述べた。「高精度医療(precision medicine:プレシジョン・メディシン)に関心が高まる昨今において、がんがどのように研究され治療されるべきかという見識の源がゲノム学に留まらないことを再認識させる重要な研究でもあります」。

連邦政府資金による大規模臨床試験データのレトロスペクティブ解析によって、結腸内の原発腫瘍位置から生存が予測されること、また転移性大腸がん患者における最適な治療法選択がわかるかもしれないことが確認されている。本研究は本日の記者会見で取り上げられており、シカゴで開催される2016年ASCO年次総会で発表される予定だ。

データでは、結腸の左側(下行結腸、S状結腸、および直腸)に原発腫瘍が発生した患者は原発腫瘍が右側(盲腸および上行結腸)に発生した患者に比べ、生存期間が有意に長いことが示されている。

「過去の研究によって腫瘍の位置が臨床大腸がんの転帰に影響を及ぼしうることは示唆されていましたが、当解析で認められた作用はわれわれの予想をはるかに上回るもののようです」と、筆頭研究著者でありカリフォルニア大学サンフランシスコ校内科学教授のAlan P. Venook医師は述べた。「左側のがんと右側のがんとで結果に違いをもたらす生物学についてわれわれはさらに理解を深めようと努めていますが、これらの研究結果はおそらく大腸がんの治療と研究に対するわれわれの取り組み方を変えるでしょう」。

研究について

研究者らは、転移性大腸がんの一次治療として化学療法との併用におけるセツキシマブとベバシズマブを比較することを目的とした連邦政府資金による臨床試験、第3相CALGB/SWOG 80405臨床試験のデータをレトロスペクティブに解析した。

一次解析では、右側に原発腫瘍のある患者293人と左側に原発腫瘍のある患者732人のデータを識別した。この解析では、特定の大腸がん治療に対する反応のバイオマーカーとして知られる、変異したKRAS遺伝子を有しない患者のみを対象とした(セツキシマブはKRAS野生型腫瘍の治療に対してのみ承認されている)。

主な所見

この患者集団における全生存期間の中央値は、左側に腫瘍のある患者(33.3カ月)の方が右側に腫瘍のある患者(19.4カ月)より長かった。セツキシマブ投与患者のうち、左側に腫瘍のある患者は36カ月生存したのに対し、右側に腫瘍のある患者は16.7カ月の生存であった。もう一方のベバシズマブ治療を受けた患者の間でも同様の傾向が認められ、左側、右側に腫瘍のある患者の全生存期間はそれぞれ、31.4カ月と24.2カ月であった。

位置により最適な治療法選択を予測できる可能性

最初の試験では、ベバシズマブやセツキシマブ治療を受けた患者において全生存期間または無増悪生存期間の顕著な優位性は認められなかった一方、この解析により、セツキシマブとベバシズマブの相対的有効性は原発腫瘍の位置によって異なる可能性のあることが示唆されている。研究者らは、これらの結果の根底にあると思われる分子生物学の分析をすすめている。

右側に腫瘍のある患者においては、ベバシズマブ治療の方がセツキシマブ治療に比べて生存期間が長かった(24.2カ月対16.7カ月)。反対に、左側に腫瘍のある患者においては、セツキシマブ治療の方がベバシズマブ治療に比べて生存期間が長かった(36カ月対31.4カ月)。

KRAS変異腫瘍においても、左側の腫瘍が生存の改善に関連する

CALGB/SWOG試験は、KRAS変異状態がセツキシマブを使用する上での重要な要因であることが知られる以前に開始されたため、KRAS変異のある患者数は少なかった(追加の213人)。この個別解析においても、左側に腫瘍のある患者が、右側に腫瘍のある患者より長く生存することが確認された(全生存期間の中央値:30.3カ月対23.1カ月)。

本研究は国立がん研究所の協力のもと、BMS社、Genentech社、Imclone社の支援を受けた。

翻訳担当者 田中深代

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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原文掲載日 

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