カーフィルゾミブは多発性骨髄腫の無増悪生存期間を延長

キャンサーコンサルタンツ

第3相臨床試験ASPIREの計画的中間解析の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は基準を満たすことがわかったと、Amgen社から発表があった。レナリドミド(レブラミド)および低用量デキサメタゾンに加えてカーフィルゾミブ(Kyprolis)を併用して治療した多発性骨髄腫の患者では、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンで治療した患者に比べて、病気の進行なしでの生存期間が有意に延長された。

多発性骨髄腫は形質細胞のがんである。形質細胞は身体の免疫系の一部である白血球の特殊な型である。米国では現在約70,000人が多発性骨髄腫に罹っており、毎年新たに約24,000人がこの病気と診断される。多発性骨髄腫の患者では、血中や尿中で検出可能な機能不全免疫抗体を増加させる異常な形質細胞が増えている。多発性骨髄腫患者がレナリドミドおよびボルテゾミブ(ベルケイド)に対して不応性または抵抗性を示すようになると治療の選択肢は限られる。これらの患者に対する標準的な治療法はなく、予後は不良である。

カーフィルゾミブはプロテアソーム阻害剤として知られる薬剤の一種であるが、これらの薬剤は癌細胞のタンパク質の分解を阻害して癌細胞の死を引き起こす。研究者らは以前に、再発進行性多発性骨髄腫の患者52人に対して、1サイクルを28日とし、カーフィルゾミブ、レナリドミドおよびデキサメタゾンを週1回40mg投与した試験結果を報告している。カーフィルゾミブ、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用は、ボルテゾミブおよびレナリドミドに不応性を示す患者に対しても、持続する奏効があり忍容性に優れていた。今回のASPIRE臨床試験により、こうした初期観察結果が裏付けられた。カーフィルゾミブ、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用療法を受けた患者は、病状が悪化することなく平均26.3カ月生存したが、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用療法を受けた患者では17.6カ月であった。また、カーフィルゾミブの追加により、客観的奏効率は87%(追加しない場合、67%)、全奏効率は32%(追加しない場合、9%)と大幅に上昇した。毒性が有意に高まることもなく、患者の健康に関連した生活の質も向上した。

ASPIRE試験について

国際ランダム化第3相試験であるASPIRE(CArfilzomib, Revlimid, and DexamethaSone versus Revlimid and Dexamethasone for the treatment of PatIents with Relapsed Multiple MyEloma)試験は、1〜3種の治療後に再発した多発性骨髄腫患者を対象とし、カーフィルゾミブ、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用療法と、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用療法とを比較評価した。試験の主要評価項目は、治療開始から病状の進行または死亡までの期間と定義する無増悪生存期間とした。副次的評価項目は全生存期間、全奏効率、奏効期間、疾患制御率、健康関連QOL(生活の質)、および安全性とした。患者は、レナリドミド(21日間は毎日25mgを投与し、続く7日間は投与せず)および低用量デキサメタゾン(1サイクル4週間で、1週当たり40mg)の標準投与スケジュールに加えて、カーフィルゾミブ(1サイクル目のみ1日目と2日目に20mg/m2、以降は27mg/m2)を併用投与する群と、レナリドミドおよび低用量デキサメタゾンのみを投与する群とに無作為に割り付けた。調査では、北米、欧州およびイスラエルの施設で792人の患者を無作為に選んだ。

ASPIRE試験の結果は、2015年上半期以降、世界中でカーフィルゾミブに関して規制当局に提出される資料の基礎になるであろう。米国では、今回のデータが迅速承認から通常承認への変更の裏付けとなり、現行の適応が拡大されるとみられる。ASPIRE試験結果は、年内に行われる第56回米国血液学会年次総会において発表される予定である。

参考文献:
Wang M, Martin T, Bensinger W, et al. Phase 2 dose-expansion study (PX-171-006) of carfilzomib, lenalidomide, and low-dose dexamethasone in relapsed or progressive multiple myeloma.Blood. 2013; 122(18):3122-3128.


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翻訳担当者 大木勝弥

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院 )

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