初期ホルモン療法にドセタキセルを併用することで、転移性のホルモン感受性前立腺癌患者の生存が大幅に改善

 ASCO年次大会で注目された乳癌、前立腺癌、大腸癌の治療に関する重要な進展(ASCO2014プレナリーセッション)
(折畳記事)

*この要約には演題抄録に含まれない更新情報が含まれています。

連邦政府資金による第3相研究(E3805)から得られた研究結果によると、標準的なホルモン療法に、化学療法薬であるドセタキセルを併用することで、新たに診断されたホルモン感受性前立腺癌患者の生存期間が約13カ月延長される。延命効果は、特に広範囲に進展した癌患者のグループで顕著であった。

「ホルモン療法は1950年代から前立腺癌患者の標準治療であった。これは新たに転移性前立腺癌と診断された患者の生存期間を延ばす治療戦略を特定した最初の研究である。その延命効果は多大であり、高度進展型の癌で化学療法の適用に適した患者に対して新たな標準治療とするに値するものだ」と、筆頭著者であり、マサチューセッツ州ボストンのダナファーバー癌研究所内のLank Center of Genitourinary Oncology(Lank泌尿器癌センター)の腫瘍内科医Christopher Sweeney医学博士は述べた。

アンドロゲンホルモンは、前立腺癌の成長を加速させる。ホルモン療法(アンドロゲン遮断療法、ADTとも呼ばれる)は単独で用いられ、ホルモン感受性前立腺癌の標準的な一次治療法である。ADTは効果的ではあるが、ほとんどの患者において、最終的に癌はこの治療に抵抗性を示すようになる。毎年、米国では、約3万人の患者がホルモン抵抗性の前立腺癌により死亡する。化学療法は、標準的にはADTを行ったにもかかわらず癌が進行した後にのみ開始される。

国立癌研究所(NCI)主導のこの研究では、新たに転移性前立腺癌と診断された790人の患者に、ADT単独、またはADT18週以上にわたるドセタキセルを併用した治療のどちらかを受ける群に無作為に割り当てた。患者の約3分の2は高度に進展した癌であった。つまり、癌は主要な臓器に転移しているか、骨転移を有していた。ADTとドセタキセルを併用した患者のうち45人は、癌が進行したときにドセタキセルが追加で投与された。ADT単独治療のグループでは123人の患者が癌の進行によりドセタキセルを投与された。

追跡期間中央値29カ月の時点で、ADT単独グループで136人が、ドセタキセルを併用したグループでは101人が死亡した。全生存期間中央値はADT単独グループで44カ月であったのに対し、ドセタキセルを併用したグループでは57.6カ月であった。全生存の中央値の相対的な改善は、高度進展型の癌である520人の患者においてより顕著であった(ADT単独で32.2カ月、ドセタキセル併用で49.2カ月)。軽度に進展した患者群ではADTによりよく反応するので、全生存の中央値に達するのに時間を要し、生存期間中央値にはまだ達していない。

ドセタキセルは、前立腺特異抗原(PSA)の上昇や新たな転移の出現、症状の悪化によって判定される癌の進行を遅らせた。治療開始1年の時点で、PSAレベルが0.2 ng/mL 以下(PSAレベルが0.2以下ということは、より良い寛解状態にある徴候と考えられる)の患者の割合は、ADTのみのグループでは11.7%であるのに対し、ADTにドセタキセルを併用したグループでは22.7%であった。臨床的進行(新たな症状または、スキャンによって検出された新規転移)までの期間の中央値は、ADTのみのグループでは19.8カ月であったのに対し、ドセタキセルを併用したグループでは32.7カ月であった。

この新たな治療パラダイムは、通常前立腺癌患者の治療にあたる泌尿器科医と癌専門医の協働を含む、集学的治療をより早期から必要とするだろう」と、Sweeney医師は述べた。軽度に進展した患者の延命効果を評価するため、患者の追跡調査は継続される。この研究から得られたQOL(生活の質)のデータはのちに分析・報告される予定である。

この研究は、NCIおよび国立衛生研究所(NIH)に支援を受けた。

ASCOの見解:「この研究は、進行性前立腺癌患者の生存の顕著かつ意味ある延長を示している。この研究はわれわれが従来の治療についてであっても、さらに学び続けられることを示している。重要なことは、この研究は連邦政府の資金による研究システムが大きなインパクトを示したもう一つの例であるということだ」とASCOの代表で米国内科学会の会員のClifford A. Hudis医師は話した。

翻訳担当者 池上紀子

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

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