T-VECワクチンは進行メラノーマにおける遠隔部位の腫瘍縮小も促進

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試験的癌ワクチンtalimogene laherparepvec(T-VEC)が、進行メラノーマ患者の腫瘍縮小を促進し、全身性免疫反応を誘発したという試験結果が、アリゾナ州フェニックスで開催された2014年米国外科腫瘍学会シンポジウムにて発表された。

毎年新たに診断される100万件以上の皮膚癌のうち、およそ76,000件がメラノーマを伴い、米国では毎年9,000人以上がメラノーマによって死亡している。メラノーマは他の皮膚癌よりも体内の他の部位に転移しやすいために危険である。近年ではこの疾患への治療における有意義な進展がみられるが、研究者らはより効果的な新薬を探求し続けている。

T-VECは、癌細胞を破壊する目的で作成されたウイルスを用いる免疫療法の一種である。同薬は腫瘍に直接注入され、腫瘍の中で局所的に作用した後、体内の他の部位にある癌細胞に対して免疫反応を引き起こす仕組みになっている。

2013年に米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表された第3相試験のデータを用いて、研究者らは、T-VECの投与を受けた患者286人の腫瘍病変3,219個を分析し、T-VECを注入した腫瘍と注入しなかった腫瘍における薬剤奏効を調べた。その内訳は、T-VECを少なくとも1回注入した病変2,043個、注入しなかった内臓以外の病変1,022個、注入しなかった内臓病変154個であった。

その結果、注入を受けた腫瘍のうち64%が半分に縮小し、直接注入を受けていない腫瘍では、内臓以外の腫瘍の32%、内臓腫瘍の16%が半分に縮小した。

患者6人においては、T-VEC投与後に手術不可能なメラノーマが手術可能に転化した。試験期間中に実施された手術は計37件で、このうち15人が無病生存状態(NED)となり、3人に病理学的完全奏効が認められた。

T-VECを直接注入した腫瘍だけではなく、直接注入していない腫瘍でも縮小が認められたことから、T-VECは免疫系を誘発して遠隔腫瘍に対抗することがわかる。研究者らは、この有望な新薬のさらなる試験が必要であると結論づけている。

参考文献
Andtbacka RH, Ross MI, Delman K, et al: Responses of injected and uninjected lesions to intralesional tal-imogene laherparepvec (T-VEC) in the OPTiM Study and the Contribution of Surgery to Response. Presented at the Society of Surgical Oncology Cancer Symposium in Phoenix, Arizona March 12-15, 2014. Abstract 52.


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翻訳担当者 遠藤微子

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

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