OncoLog2014年2月号◆House Call「食品と薬の相互作用を避ける」

MDアンダーソン OncoLog 2014年2月号(Volume 59 / Number 2)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

食品と薬の相互作用を避ける

食品と薬が合わないことも

食べたものが薬の効き方に影響を与えるということをご存知でしょうか。食品、飲料、ビタミン剤、サプリメントの中には薬と相互作用を持つものがあります。相互作用によって薬の効果が落ちたり、副作用が出たり、重大な健康上の問題が生じることもあります。ここではよくある食品と薬の相互作用を挙げて、それを避けるためのこつを解説します。

薬と相互作用する食品

アルコール:抗ヒスタミン剤や、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOI)という精神安定剤などの抗うつ薬を服用している場合、アルコールは極度の眠気を催すことがありますので避けましょう。アセトアミノフェン、アスピリン、イブプロフェンなどを服用する場合は肝障害を生ずるおそれがあるのでアルコールを控えましょう。癌治療薬の中にもアルコールと相互反応して肝障害や嘔吐をもたらすものがあります。

カフェイン:サルブタモールやテオフィリンなどの喘息治療薬はカフェインと相互作用して興奮や心拍数増加をもたらすことがあります。

果物:グレープフルーツジュースは一部の薬で体内への吸収を速めることがあるほか、他の薬では体内での代謝を妨害することもあります。こういった相互作用は健康に悪影響をもたらす可能性があります。抗うつ薬やスタチン(コレステロールを低下させる薬)を服用中にグレープフルーツやグレープフルーツジュースを摂取する場合は薬剤師または医師に相談しましょう。癌治療薬の中にもグレープフルーツジュースと相互作用するものがあります。グレープフルーツ、りんご、オレンジジュースはフェキソフェナジン(抗ヒスタミン薬)の効果を弱める可能性があります。

ヘパリンやワルファリンなどの抗凝血剤を服用している場合は、クランベリージュースやクランベリー系のサプリメントを避けるべきか医療機関に相談しましょう。抗凝血剤の効果を弱める、あるいは出血リスクを高めるといった報告が出されています。

ビタミンおよびサプリメント:抗凝血剤を服用している場合、ニンニク、朝鮮ニンジン、銀杏も出血傾向を強めるため避けるべきです。その他のビタミンやサプリメントにより薬の効果が弱まる場合があります。例えばセイヨウオトギリソウはハーブのサプリメントですが、ジゴキシン(不整脈治療薬)やイマチニブ(白血病治療薬)など多くの処方薬の効果を弱めてしまいます。

カリウム:カプトプリルやリシノプリルなど高血圧の薬を服用している場合は、バナナやサツマイモなどカリウムを多く含む食品は控えましょう。薬の服用中にこれらの食品を過剰に摂取すると血中カリウム濃度が一時的に上昇し、動悸や不整脈を起こすことがあります。

相互作用を避けるこつ

上記リストは数多くの薬と相互作用する食品やサプリメントをいくつか挙げたにすぎません。それでは、あなたが使う特定の薬と食品との相互作用を避けるにはどうすればよいのでしょうか。そのこつをこれからお話しします。

しっかり管理する:処方薬を受け取る薬局は1つに決め、薬剤師が処方歴をチェックして相互作用の可能性について注意喚起ができるようにしましょう。薬、ビタミン剤、サプリメントは必ず元の容器包装に入れて保管し、容易に識別できるようにしておきましょう。期限を過ぎた薬は捨て、現在処方されていない古い薬は服用しないでください。

表計算ソフトを用いて薬やビタミン剤、サプリメントの服用履歴をつけて管理するという方法もあります。錠剤の大きさや形、起こりうる副作用や相互作用、薬やビタミン剤、サプリメントを服用し始めた日付などを入れておきましょう。受診時にすぐ参照できるようこの記録を持っていきましょう。

情報をつかんでおく:薬の添付文書はよく読んで食品との相互作用に関する記載を確認し、疑問点があれば医療従事者に問い合わせましょう。食品と薬の相互作用に関する詳しい情報は下記のウェブサイトに掲載されています。

・米国食品医薬品局が(FDA)が公表している食品と薬の相互作用に関する総合ガイド(PDF)はこちら。
・こちらの医療記録フォーム(PDF)を使えば服用履歴の記録をつけることができます。
 ・Medline Plusには個々の薬やサプリメントについて使用量、副作用、安全上の注意など有用な情報があります。
 ・このウェブサイト(www.drugs.com)は公的機関ではありませんが薬の相互作用をチェックできます。

主治医と話し合う:上記の情報源から役に立つ情報が得られるかもしれませんが、主治医と相談せずに薬の服用をやめたり服用量を変えたりしてはいけません。

主治医と薬剤師には服用しているビタミン剤、処方薬、市販薬、サプリメントをすべて知らせておきましょう。また、特別な食事をしている、あるいは検討しているという場合も主治医に話しておきましょう。

新しい薬を服用する場合、あるいは現在服用している薬の頻度や量を変えるよう指示があった場合、相互作用の可能性について必ず主治医または薬剤師に聞いてください。もらった薬が食品や飲料、市販薬、他の処方薬と相互作用するか質問しましょう。

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翻訳担当者 橋本 仁

監修 金田澄子(薬学)

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原文掲載日 

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