ニンニクと癌予防

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米国国立がん研究所(NCI)ファクトシート

ニンニクと癌予防

原文日時:2008年1月22

キーポイント========

l 複数の予備試験において、ニンニクを摂取することで、いくつかの癌種(特に消化管系の癌)の発症リスクを低減させる可能性が示されています(Questions 34参照)。大半の試験で、使用されたニンニク加工食品の種類は異なっており、その使用量もさまざまです(Question 5参照)。

l ニンニクを摂取することで癌の発症リスクが低減されるとしても、そのための必要量は明らかになっていません(Question 7参照)。

l 普通にニンニクを摂取していて問題が起こることはめったにありませんが、大量に摂取すると胃腸障害などの副作用が起こることがあります(Question 8参照)。

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このファクトシートに記載されている情報を栄養機能表示の根拠として用いることはできません。

1. ニンニクとは?

ニンニク(学名:Allium sativum)は、球状の植物で、ネギ属の野菜です。タマネギ、チャイブ、セイヨウネギ、エシャロットなどもこのネギ属に入ります。ニンニクは、料理の香味付けに利用され、硫黄を多く含んでいるため、その香味は独特なものです。硫黄に加え、アルギニン、オリゴ糖、フラボノイドおよびセレンを含んでおり、そのどれもが健康に良い可能性があります(1)。

ニンニクの独特な臭いと味は、アリシンから作られる硫黄化合物からきています。アリシンは、ニンニクの生理活性化合物の主たる前駆体で、ニンニクの球根が切り刻まれたり、砕かれたり、すなわち細胞が壊されたときに作られます(2)。生理活性化合物とは、食品や栄養サプリメントに含まれ、基本的な栄養必要量を満たす用途以外に、健康状態を変化させる原因となる物質と定義されています。

2. ニンニクの加工食品にはどんなものがありますか?

ニンニクのサプリメントには、ガーリックのエッセンシャルオイル(精油)、ガーリックオイル漬け、ガーリックパウダー、ニンニク抽出液の4種類があります。

・ガーリックのエッセンシャルオイルは、ニンニクに蒸気を通すことで得られるオイルです。市販されているガーリックオイルカプセルには、通常は植物油が含まれており、その強い臭気のためにガーリックのエッセンシャルオイルは少量しか含まれていません。

・ガーリックオイル漬け製品は、ニンニクの鱗片全体をすりおろして植物油にし、カプセル化した混合物から作られます。

・ガーリックパウダーは、ニンニクの鱗片をスライスするか、砕いて乾燥させ、粉状にすり潰して作られるものです。調味料や食品の香り付けに利用され、生のニンニクと同じ成分を保持していると考えられています。

・ニンニク抽出液は、丸ごとそのまま、またはスライスしたニンニクの鱗片を、アルコール溶液(抽出溶液)に浸したものから作られます。浸す時間はさまざまです。抽出液をパウダー状にしたものもあります(34)。

3. 集団研究の結果から、ニンニクが癌予防に良いというエビデンスは得られていますか?

複数の集団研究の結果から、ニンニクの摂取量増加と特定の癌腫(胃癌、結腸癌、食道癌、膵臓癌および乳癌など)のリスク減少との間に、相関があることが示されています。集団研究とは、ある集団における疾患の原因、発症率、蔓延率について調査するほか、健康に関する介入効果、食事・栄養摂取の効果、または環境曝露の影響を検討する学際的研究です。集団研究7件のデータを解析したところ、生ニンニクや加熱済みのニンニクを摂取する量が多いほど、胃癌および結腸直腸癌のリスクが低下することがわかりました(5)。

欧州癌および栄養の予想調査(The European Prospective Investigation into Cancer and NutritionEPIC))は、現在進行中の10カ国の男女を対象とした多国籍試験です。本試験は、癌に対する栄養摂取の効果を調査しています。本試験からは、タマネギとニンニクの摂取量が多いほど、腸癌のリスク減少がみられました(6)。

米アイオワ州女性健康調査(The Iowa Women’s Study)は、高齢女性を対象として、食事や体脂肪の分布およびその他の危険因子と、癌の発症率との関連性を調査した大規模な前向き試験です。本試験の結果によると、ニンニクの摂取量と結腸癌リスクの間に強い相関が認められました。ニンニクの摂取量が最も多かった女性群では、最も少なかった女性群と比べて、遠位結腸癌のリスクが50%減少しました(7)。

中国でも、ニンニクの摂取量と癌リスクに焦点をあてた集団研究がいくつか実施されています。ある試験ではニンニク、さまざまな種のタマネギおよびチャイブの頻回摂取が、食道癌および胃癌リスク減少と関連しており、その摂取量が多いほどリスクの減少率も高くなりました(8)。同様に別の試験でも、ネギ属の野菜を摂取すると(特にニンニクとタマネギ)、胃癌のリスク減少と関連がみられています(9)。3件目の試験では、ネギ属の野菜(特にニンニクとエシャロット)の摂取量の増加(110gvs. 12.2g未満)により、前立腺癌のリスクが約50%減少しました(10)。

また、ニンニクの摂取量の増加が、膵臓癌リスクを減少させるとするエビデンスもあります。サンフランシスコ・ベイエリアで実施された試験によれば、ニンニクを大量に摂取した人では、少量しか摂取しなかった人に比べて、前立腺癌のリスクが54%減少しました(11)。

このほか、フランスで実施された試験では、ニンニク摂取量の増加と乳癌リスクの減少との間に、統計的に有意な関連がありました。総カロリー摂取量および他の確立された危険因子を考慮しても、食物繊維、ニンニクおよびタマネギの摂取量が多いほど、乳癌リスクは減少しました(12)。

4.臨床試験の結果から、ニンニクが癌予防に良いというエビデンスは得られていますか?

ニンニクの抗癌効果について検証した臨床試験(人に対する調査研究)は、わずかしかありません。

3件のランダム化臨床試験で、胃癌リスクに対するニンニク摂取効果が検証されています。1件目の試験では、高い胃癌リスクを有する中国人男女5000人超を対象に、5年間にわたって合成allitridum(中国で3000年以上にわたり、薬として用いられているニンニク抽出液)1200㎎およびセレン100㎍を隔日で投与する併用群と、プラセボ群(有効な薬と同じ外見の無効な物質や、有効な治療法と同じ方法で無効な治療方法)の効果を比較しました。allitridumおよびセレン併用群では、プラセボ群と比較して、全腫瘍を組み合わせた発症リスクが33%減少し、胃癌リスクは52%減少しました(13)。

それに対し、胃に前癌病変のある患者を対象とした2件目のランダム化試験では、ニンニクのサプリメント(1日あたりニンニク抽出液800 mg+水蒸気蒸留したニンニクオイル4 mg)を投与しても、胃の前癌病変の有病率(存在している症例数)の改善はみられず、胃癌の罹患率(新たな症例数)の減少も認められませんでした(14)。

3件目のランダム化試験は日本で実施され、大腸腺癌(非癌性腫瘍)のある患者に対して、6カ月および12カ月間にわたって、熟成したニンニク抽出液を高用量(2.4 mL/日)および低用量(0.16 mL/日)で摂取した効果を比較しました。12カ月後、新たな腺癌の発症が、低用量群では67%、高用量群では47%に認められました(15)。

小規模、非ランダム化試験の結果からは、皮膚腫瘍にニンニク抽出液を塗布すると有効である可能性が示唆されています。試験では、基底細胞癌の患者21人に対して1カ月間、皮膚にアホエン(ajoene:ニンニクに含まれる硫黄化学物質)を塗布したところ、17例の腫瘍でサイズが著明に縮小し、腫瘍サイズが拡大したのは3人、その他1人で変化なしという結果になりました(16)。腫瘍サイズの変化は、88%の縮小から69%の拡大まで幅がみられ、全体の中央値は47%の縮小でした。

5.癌予防に対するニンニクの利用をめぐる最近の問題・論争にはどのようなものがありますか?

ニンニクの摂取量や摂取頻度に関する報告の正確さなど、試験に限界があることや、試験によってニンニク製品および量が異なるため試験間でデータを比較できないことが、ニンニクと癌予防について総合的な結論を出すのを極めて困難にしています。ニンニクの利用と癌予防を検証した多くの試験では、多成分の製品を使用しているため、最も効果があるのはニンニク単体なのか、それとも他の栄養成分との組み合わせであるのかは不明です。

効果が期待できる摂取法を検証するためには、ヒトを対象にして、あらかじめニンニクの量を定めておき(介入試験)、十分に計画された食事試験が必要です。また、さまざまなニンニク加工食品を直接比較した試験も必要でしょう。

6.ニンニクの癌予防に対する作用機序は何ですか?

ニンニクによる予防効果は、その抗菌特性(17)、または癌を引き起こす物質の形成阻害(18)、癌を引き起こす物質の活動停止(19)、DNA修復の亢進(20)、細胞増殖の低下、細胞死の誘導(10)などの能力によると考えられます。

7.癌予防に有効なニンニク量はどのくらいですか?

米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国国立癌研究所(NCI)は、癌予防としていかなる栄養サプリメントも推奨していませんが、ニンニクを抗癌特性を持つ可能性のある野菜の一つとして認めています。どのニンニク加工食品も同じではありませんので、癌リスクを減らすために必要なニンニクの正確な量を決めることは困難です。また、ニンニクに含まれる活性化合物は、時間、扱い方および加工によって効力を失う可能性もあります。世界保健機構(WHO)による成人の一般的な健康促進ガイドラインでは、生ニンニクの一日用量は25 g(だいたい一片)、ドライガーリックパウダーで0.41.2 g、ガーリックオイルで25 g、ニンニク抽出液では3001,000 mg、またはその他の形式であればアリシン25 mgに匹敵する量とされています。

8.安全性の面ではどのような考察がなされていますか?

ニンニクは料理で安全に利用されているとはいえ、過剰に摂取すると、強い口臭および体臭のほかにも何らかの副作用を起こすことがあります(421)。軽度な刺激作用から命を脅かす可能性のあるものまで、時としてさまざまなアレルギーを引き起こすのです。生ニンニクの球根、抽出液、またはオイルを空腹状態の胃に摂取すると、胸やけ、悪心、嘔吐および下痢を起こす場合があります。動物およびヒトに対する試験の中には、ニンニクは血糖値を下げ、インスリン量を増加させると示唆しているものもあります。

ニンニクは、いくつかの処方箋薬の作用を阻害することが示されており、とりわけ抗HIV薬サキナビル(商品名 Invirase® およびFortovase®)もその一つで、サキナビルの血清中濃度を50%まで減少させます(22)。またニンニクは、天然の抗凝血剤としても作用するため、妊娠中の女性、手術を控えている人、ワルファリン(商品名 Coumadin®)などの抗凝血剤を投与中の人は、ニンニクの摂取を避けるべきです。

ニンニクの球根は、時に細菌ボツリヌス菌に汚染されていることがあります。ボツリヌス菌は、冷蔵されておらず、抗菌物質を含まないニンニク含有のオイル製品の中で繁殖し、ボツリヌス毒素を産生します。

このほかにも、ニンニクを皮膚に塗布すると、化学的熱傷、接触性皮膚炎および気管支喘息が起こることがあります。また、潰瘍など胃の調子を崩しがちな人は、悪化する恐れや新たに引き起こす可能性があるため、ニンニクを避けたほうがよいでしょう(4)。

参考文献

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翻訳担当者 濱田 希

監修 朝井鈴佳(獣医学・免疫学)

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