オキサリプラチンのFDA承認

原文 2004/01/09掲載 2013/07/03更新

商標名: Eloxatin™

ステージ3結腸直腸癌術後療法(2004/11/04)
結腸直腸癌初回治療(2004/01/09)

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ステージ3結腸直腸癌術後療法
2004年11月4日、米国食品医薬品局(FDA)はオキサリプラチン注射薬(Eloxatin™、サノフィ=サンテラボ社の商標)の持続静注5-フルオロウラシル/ロイコボリン(5-FU/LV)との併用を、原発巣の完全切除を受けたステージ3の大腸癌患者の術後療法として承認しました。 この承認は、無病生存期間の改善が示されたことに基づくもので、フォローアップ期間の中央値が4年間であるため全生存期間に対する有効性は明らかではありません。

安全性および有効性は、多国間での多施設無作為化非盲検試験において示されました。原発巣の完全切除を受けた、ステージ2または3の大腸癌患者2,246人の患者は、等しく2つの治療群のいずれかに無作為化されました。 すなわちオキサリプラチン+持続静注 5FU/LV (FOLFOX 4レジメン)群と、持続静注 5FU/LV(De Gramontレジメン)群です。治療は、2週間ごとの投与で12サイクル(6カ月間)行われました。

中央値4年間のフォローアップにおいて、主要評価項目であるDFS(無病生存期間)は、オキサリプラチン併用では持続静注5FU/LVに比べ、全対象患者(4年DFS: 76 % vs. 69%HR= 0.76、95% CI: 0.65、0.90、p=0.0008)および、ステージ3の患者のみのサブグループ(4年DFS: 70% vs. 61%、HR=0.75、95% CI: 0.62、0.90、p=0.002、N=1347)において、統計的に有意な改善が見られました。生存に関しては、この分析時点ではフォローアップ期間の中央値が47カ月であることから、データとして完全とは言えません。 全対象患者でもステージ3のみの患者でも、全生存期間について両群間に統計上有意な差は見られません(HR=0.89、95% CI: 0.72、1.09、p=0.236)。 ステージ2の患者においては、DFSにも生存期間にも、統計上有意な差は見られませんでした。

グレード3または4の事象の発生頻度はオキサリプラチン併用群で70%、持続静注5FU/LV群で31%でした。顆粒球減少、知覚障害、下痢、嘔吐、吐き気が、最も多く見られたグレード3または4の有害事象でした。オキサリプラチン併用群患者の92%に知覚障害が見られ、18カ月後のフォローアップで、21%に知覚障害が残っていました。18カ月後フォローアップ時点で、グレード2の知覚障害が3%、グレード3が0.5%見られました。

グレード3または4の知覚過敏は3%に見られ、治療中止を必要としたケースもありました。肝毒性(肝臓への悪影響)は、オキサリプラチン併用群に、より多く見られました(トランスアミナーゼ値の上昇57% vs. 34%、アルカリ・フォスファターゼ値の上昇42% vs. 20%)。ビリルビン値上昇の頻度は両群で同等でした。肝機能検査での異常値や門脈圧亢進症(腸と肝臓を結ぶ静脈の静脈圧上昇)があり、それらが肝転移その他の病因で説明がつかない場合は、肝臓の血管障害を考え検査を行わねばなりません。

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葉っぱ訳
平 栄(放射線腫瘍科)監修 
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結腸直腸癌初回治療
2004年1月9日、米国食品医薬品局は、進行した結腸直腸癌に対する最初の治療として、持続静注フルオロウラシル(5-FU)とロイコボリン(LV)との併用、注射用オキサリプラチン(Eloxatin™、Sanofi-Synthelabo商標)を承認しました。

オキサリプラチンは2002年8月9日に既に優先承認を受けました。そのときの効能としては急速静注による5-FU/LVとイリノテカンの併用による第一選択療法の治療中または終了後6カ月以内に再発、又は進行した結腸または直腸の転移性癌の患者の治療のための静注5-FU/LVとの併用使用です。

米国国立癌研究所(NCI)の支援による、North Central Cancer Treatment Group主導のグループ共同試験として、1つの多施設無作為化対照臨床試験が行われ安全性と有効性が示唆されました。試験中の異なる時期に7群の治療が行われ、そのうちの4群は標準療法の変更、毒性、又は単純化のため中止されました。

試験中に対照群はイリノテカンと急速静注5-FU/LV投与群に変えられました。531人の未治療の局所進行又は転移結腸直腸癌が、オキサリプラチン + 持続静注 FU/LV治療法とイリノテカン + 急速静注5-FU/LVの承認済み対照治療法に無作為に並列して割り振られ比べられました。患者は、ステージ2かステージ3で腫瘍切除後補助治療を受けていても12カ月間再発なしであれば登録できました。組み入れ終了後、毒性のためイリノテカン+5-FU/LVの投与量は減らされました。

オキサリプラチン + 持続静注FU/LV治療法はイリノテカン+急速静注FU/LVの治療法と比べ、生存期間が長く、生存期間の中央値はそれぞれ19.4カ月と14.6カ月(p=0.0001)でした。また、腫瘍の無増悪期間と腫瘍奏効率もオキサリプラチン + 持続 静注FU/LV治療法のほうが優れた結果となりました。

疲労、神経障害、吐き気、嘔吐、下痢、口内炎、好中球減少、および血小板の減少は、より多い有害事象でした。イリノテカン+急速静注5FU/LVに比べ、発熱を伴う好中球減少や、血小板輸血の必要性は増加しませんでした。

オキサリプラチンは致命的となりうる肺線維症(対象例の1%以下)を併発します。抗凝血剤の投与を受けている時オキサリプラチン+5-FU/LVの投与を受けた患者で時折出血を伴うINRとプロトロンビン時間の延長が試験と市販後サーベイランスの結果から報告されています。経口の抗凝血剤の投与を受けている患者はより綿密なモニターを必要とします。

過敏症(グレード3、4が2%以下)が臨床試験で見られ通常、標準のエピネフリン、副腎皮質ホルモン、抗ヒスタミン剤療法で治療されますが時には治療を中止する必要もあります。

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HAJI 訳
林 正樹(血液・腫瘍科)監修 
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この薬剤情報のサマリーは、FDA抗腫瘍薬製品室長のRichard Pazdur医師により作成されています。米国食品医薬品局(FDA)とは米国保健社会福祉省(HHS)の一部門で、新薬その他の製品の安全性と有効性を確保するための機関です。 (FDA:医薬品・医療機器の承認方法の理解(原文)を参照。
FDAの使命は、安全かつ有効な製品の迅速な市場流通を促し、流通後も継続的に製品の安全性を監視することによって、国民の健康を守り、推進することです。

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