HER2陽性転移乳がんのトラスツズマブ+ペルツズマブ維持療法にツカチニブ追加は無増悪生存を改善
トラスツズマブ(販売名:ハーセプチン)、ペルツズマブ(販売名:パージェタ)およびタキサンによる一次治療で疾患進行が認められなかった HER2陽性転移乳がん患者を対象に、トラスツズマブ+ペルツズマブ維持療法にツカチニブ(販売名:Tukysa)を追加することで、プラセボにトラスツズマブ+ペルツズマブを加えた対照群に比べ、無増悪生存期間(PFS)が統計学的にも臨床的にも有意に延長したことが示された。
この結果により、トゥカチニブの追加が病勢進行や死亡リスクを低減しうることが確認され、第3相試験「HER2CLIMB-05」の主要評価項目を達成した。
実験群の治療は忍容性があり、治療の安全性も概ね良好で、既存の薬剤単独使用時の安全性プロファイルと一致していた。
本試験は、無作為化・二重盲検・プラセボ対照による国際的な第3相試験であり、HER2陽性転移性乳がん患者の維持療法に、ツカチニブをトラスツズマブ+ペルツズマブ療法に併用する効果をプラセボに追加した場合と比較検証した。対象は、2018年ASCO-CAPガイドラインに基づきHER2陽性と確認され、トラスツズマブ、ペルツズマブ、タキサンによる初回治療で病勢進行を認めなかった患者である。脳転移に関しては、無症候性かつ非進行性の未治療または治療済みの脳転移を有する患者が登録可能であった。一方で、HER2標的薬やEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を使用した患者や、造影脳MRIが実施できない患者などは除外された。
脳転移に症状が認められたり、進行性の患者に加え、デキサメタゾン換算で1日合計2mgを超えるコルチコステロイドの継続投与を受けている患者、患者に危険を及ぼす可能性のある未治療の脳病変を有する患者、既知または疑われる髄膜播種を有する患者、制御不良のてんかん発作やその他の慢性的な神経症状を有する患者は登録から除外された。
導入療法を4〜8サイクル完了した後、患者は実験群(326人)またはプラセボ群(328人)に無作為に割り付けられた。治療は21日サイクルで行われ、ツカチニブは1回300mgを1日2回経口投与した。トラスツズマブとペルツズマブは静脈内または皮下投与され、固定用量(各600mg、ヒアルロニダーゼ20,000単位併用)による皮下投与も認められた。ホルモン受容体陽性患者には、地域の方針に従って内分泌療法が併用可能であった。
導入療法を4〜8サイクル完了した後、患者は実薬群(326人)またはプラセボ群(328人)に無作為に割り付けられた。治療は21日サイクルで行われ、ツカチニブは1回300mgを1日2回経口投与した。トラスツズマブは静脈内投与で6 mg/kgまたは皮下投与で600 mgを投与し、ペルツズマブ420 mgをサイクルごとに投与した。固定用量(各600mg、ヒアルロニダーゼ20,000単位併用)による皮下投与も認められた。ホルモン受容体陽性患者には、地域の方針に従ってホルモン療法が併用可能であった。
主要評価項目は医師によるPFSであり、副次評価項目には全生存期間(OS)、盲検下中央判定によるPFS、中枢神経系におけるPFS(CNS-PFS)、健康関連QOLの悪化までの期間、安全性、薬物動態解析が含まれた。
この結果は、ツカチニブがHER2陽性転移性乳がんの維持療法において、化学療法を行わない新たな選択肢として重要な役割を果たす可能性を示している。
- 監修 東海林洋子(薬学博士)
- 参考原文
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