FDAが頭頸部扁平上皮がんの一次治療にペムブロリズマブを承認

2019年6月10日、米国食品医薬品局(FDA)は、転移または切除不能の再発頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者の一次治療にペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ、Merck & Co. Inc.社)を承認した。

ペムブロリズマブは、患者全員に対してはプラチナ製剤およびフルオロウラシル(FU)との併用療法として、また、FDAに承認された検査で腫瘍細胞にPD‑L1発現(Combined Positive Score [CPS] ≥1)が確認された患者に対しては単剤療法として承認された。さらにFDAは、PD-L1 IHC 22C3 pharmDxキットの使用目的に、ペムブロリズマブ単剤療法を受けるHNSCC患者を選択するためのコンパニオン診断法としての使用を含むよう拡大した。今回の承認は、転移HNSCCに対する全身療法歴がないか、または局所療法では治癒不能とみなされる、転移・再発頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)患者882人を対象としたランダム化、多施設共同、3群比較、非盲検、実薬対照比較臨床試験であるKEYNOTE-048(NCT02358031)試験に基づいている。

患者をペムブロリズマブ単剤投与群、ペムブロリズマブ、カルボプラチンまたはシスプラチン、およびFUの併用投与群、あるいはセツキシマブ、カルボプラチンまたはシスプラチン、およびFUの併用投与群のいずれかの群に無作為に割り付けた(1:1:1)。無作為化は、腫瘍のPD-L1発現率(Tumor Proportion Score [TPS]、50%以上対50%未満)、p16 IHCによるHPVの状態(陽性対陰性)、およびECOG全身状態(0対1)により層別化して行われた。PD-L1発現率(TPSおよびCPS)は、PD-L1 IHC 22C3 pharmDxキットを使用して測定された。

主要有効性評価項目は、CPSが20以上のHNSCC患者サブグループ、CPSが1以上の患者サブグループ、および全体集団において順に評価した全生存期間(OS)とした。

本試験では、事前に規定された中間解析において、ペムブロリズマブと化学療法の併用群に無作為に割り付けられた患者集団全体の方が、セツキシマブと化学療法の併用群よりも統計的に有意なOSの改善を示した。全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブと化学療法の併用群で13カ月、セツキシマブと化学療法の併用群で10.7カ月であった(ハザード比[HR]0.77、95%信頼区間[CI]:0.63~0.93、p=0.0067)。結果は、CPSが20以上の患者サブグループ(HR 0.69、95%CI:0.51~0.94)と、CPSが1以上の患者サブグループ(HR 0.71、95%CI:0.57~0.88)において同様であった。

また、本試験では、ペムブロリズマブ単剤群に割り付けられたPD L1 CPSが1以上の患者サブグループおよびPD‑L1 CPSが20以上のHNSCC患者サブグループの方が、セツキシマブと化学療法の併用群よりも統計的に有意なOSの改善を示した。CPSが1以上のサブグループでは、全生存期間(OS)中央値は、ペムブロリズマブ群で12.3カ月、セツキシマブと化学療法の併用群で10.3カ月であった(HR 0.78、95%CI:0.64~0.96、p=0.0171)。CPSが20以上のサブグループでは、OS中央値はペムブロリズマブ群で14.9カ月、セツキシマブと化学療法群で10.7カ月であった(HR 0.61、95%CI:0.45~0.83、p=0.0015)。中間解析時点では、全集団において、ペムブロリズマブ単剤群とセツキシマブと化学療法の併用群の間でOSに有意差は認められなかった。

すべての集団において、セツキシマブと化学療法の併用群と比較して、ペムブロリズマブを含むいずれの群でも無増悪生存期間に有意差は認められなかった。

KEYNOTE-048試験で、ペムブロリズマブ単剤投与群の20%以上で報告され、最も多くみられた副作用は、疲労、便秘、および発疹であった。同試験で、化学療法との併用でペムブロリズマブを投与された患者の20%以上で報告され、最も多くみられた副作用は、悪心、疲労、便秘、嘔吐、粘膜炎症、下痢、食欲不振、口内炎、および咳であった。

頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)に対するペムブロリズマブ推奨用量は、3週間に1回、30分間かけて行う200mg静脈内投与であり、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで、または疾患進行がない場合は24カ月まで継続する。

キイトルーダの全処方情報はこちらを参照。

FDAは本申請を優先審査に指定した。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム−医薬品およびバイオ医薬品(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)」に記載されている。

翻訳担当者 星野恭子

監修 山崎知子(頭頸部・甲状腺・歯科/宮城県立がんセンター 頭頸部内科)

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