ASCO消化器がんシンポジウム最新の11研究発表

2023年1月19日から21日までカリフォルニア州サンフランシスコのモスコーンウェストビル(Moscone West Building)で開催される「2023 ASCO消化器がんシンポジウム(Gastrointestinal Cancers Symposium)」で消化器がんの新たな治療法と管理方法を探る注目すべき試験が11件発表される。

2023年1月19日(木)

アブストラクトLBA294:INTEGRATE IIa:難治性進行胃食道がん(AGOC)のレゴラフェニブとプラセボのランダム化二重盲検第3相試験-オーストララシア消化管試験グループ(AGITG:Australasian Gastro-intestinal Trials Group)が主導の試験
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アブストラクトLBA292:HER2陰性Claudin-18.2陽性の局所進行性で切除不能か転移性胃または胃食道接合部(mG/GEJ)腺がん患者に対する一次治療として採用するゾルベツキシマブとmFOLFOX6の併用:SPOTLIGHTの第3相試験の一次結果
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「ゾルベツキシマブと初回化学療法(mFOLFOX6)の併用により、claudin 18.2(CLDN18.2)陽性HER2陰性の切除不能か転移性の胃または胃食道接合部腺がん患者の無増悪生存期間および全生存期間が有意に延長した。ゾルベツキシマブと化学療法の併用は、このような患者の新たな標準治療となる可能性があります」と試験の筆頭著者である設楽紘平医師は語る。


2023年1月20日(金)

アブストラクト494:前治療歴のある進行難治性胆道がん(BTC)患者に対するL型アミノ酸トランスポーター(LAT1)阻害剤であるNanvuranlat:ランダム化二重盲検第2相プラセボ対照試験の主要評価項目結果

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「LAT1阻害剤であるNanvuranlatは、前治療歴のある進行難治性胆道がん患者の無増悪生存期間の改善が統計学的に有意であることを証明しました。胆道がんに対する化学療法のうち後期の治療法は非常に限られています。Nanvuranlatは、標準的な治療に反応しない胆道がん患者の生存率を改善するのに役立つ可能性があります」と試験の筆頭著者である古瀬純司医師は語る。

「Lat1はL型アミノ酸のトランスポーターであり、Lat1の発現は予後不良と関連する。有望なLAT1阻害剤であるNanvuranlatは最良の支持療法と比較して、難治性胆道がん患者の無増悪生存期間を改善することがこの第2相試験で示され、新たな治療選択肢となる可能性があります。しかし、このような試験結果は、有効性と治療関連毒性の検証を可能にするより多様な患者集団で評価する必要がありそうです」-Cathy Eng医師(FACP:米国内科学会フェロー)、FASCO:ASCOフェロー、ASCOの消化器がんエキスパート)

アブストラクト550:第3相TOPAZ-1試験でデュルバルマブまたはプラセボにゲムシタビンとシスプラチンを併用する治療を受けた進行胆道がん患者の抗生物質使用の転帰
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「免疫チェックポイント阻害剤による治療中の抗生物質の使用は予後がより不良であることに相関があった。進行胆道がん患者の死亡リスクやがんが増殖、転移、悪化するリスクは、デュルバルマブをベースにした治療を受けると同時に抗生物質を使用した患者と使用しなかった患者との間で有意な差はないことを今回の結果は裏付けている。進行胆道がんの患者は、デュルバルマブと化学療法との併用による治療の恩恵を受けながら、抗生物質による治療を安全に受けることができます」と試験の筆頭著者のAiwu Ruth He医学博士は語る。

アブストラクト489:NRG/RTOG 1112:肝細胞がん(HCC)のソラフェニブ療法と体幹部定位放射線治療(SBRT)後に実施するソラフェニブ療法を比較するランダム化第3相試験
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「ソラフェニブ単独療法と比較して個別化された体幹部定位放射線治療は、有害事象の増加を伴わず、QOLの向上が強く示唆され、治療成績の改善につながることが今回の試験結果で示されています。外照射療法は肝細胞がんの治療に有効な治療法であり、今後、世界中の多くの患者、特にこれまで治療の選択肢が限られていた大血管浸潤の患者に恩恵をもたらすはずである。体幹部定位放射線治療は特に、チロシンキナーゼ阻害剤による治療が予定されている患者や全身療法の候補でない患者、全身療法で進行した患者、または全身療法に忍容性のない患者に対し標準治療の選択肢に含まれるべきです」と試験の筆頭著者のLaura A. Dawson医師(FASTRO:米国放射線種学会フェロー、FRCPC:カナダ専門医協会フェロー)は語る。

アブストラクトLBA492:カナダがん試験グループ(Canadian Cancer Trials Group)HE1:症候性肝細胞がんおよび肝転移の症状緩和を目的とした放射線療法の第3相試験
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「局所進行性の原発または転移性肝がんによる肝臓痛のある患者にとって、低線量放射線治療は痛みを和らげる標準的な緩和的介入として検討されるべきです。この緩和的介入は世界中で広く利用できる簡単な治療選択であり、肝がんの痛みを抱える世界中の患者の生活を改善するはずです」と試験の筆頭著者のLaura A. Dawson医師(FASTRO:米国放射線種学会フェロー、FRCPC:カナダ専門医協会フェロー)は語る。

2023年1月21日(土)

アブストラクト132:無症候性同時性切除不能の大腸がんの肝臓限定の転移に対する原発腫瘍切除前の術前化学療法:施設共同ランダム化比較試験
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アブストラクト100:第3相FIRE-4試験(AIO KRK-0114):化学療法のみを1サイクル受けているRAS-WT型mCRC患者を対象にしたFOLFIRIとセツキシマブの初回治療の効果を検証
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「RAS野生型転移性左側大腸がん患者は、一次治療として抗EGFR薬(セツキシマブまたはパニツムマブ)と2剤併用化学療法(FOLFOXまたはFOLFIRI)の併用で治療を開始すべきと米国国立包括癌ネットワーク(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインに記載されています。ベバシズマブと2剤併用化学療法による併用治療と比較した複数の第3相試験で生存期間が改善することを同ガイドラインは示しています。また、全身治療開始時にRAS遺伝子変異解析の結果が未確定の場合があります。第3相FIRE-4試験内でいずれの抗体も投与しない1サイクルのFOLFIRIがプロトコルにより認められました。最初のサイクルからセツキシマブで治療した患者と比較した場合、腫瘍反応率と生存期間のいずれにも悪影響が見られませんでした。したがって、モノクローナル抗体を使用しない2剤併用化学療法を開始し、その後のサイクルでRAS検査の結果に応じて抗EGFR抗体またはベバシズマブを追加するほうが実用性の高い可能性があります」と試験の筆頭著者のSebastian Stintzing医師は語る。

「臨床試験をランダム化する前に標準化学療法を1サイクル実施しても主要評価項目である無増悪生存期間を短縮させることはないことをFIRE-4試験は実証しています。標準治療を採用するあらゆる臨床試験でこの臨床試験デザインの柔軟性を考慮すべきです。この治療法は患者と医療提供者が未確定のRAS状態に対して抱く懸念を軽減し、臨床試験への患者登録を増加させるのに役立ちます」-Cathy Eng医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー、ASCOの消化器がんエキスパート)

アブストラクト10:直腸がんの臓器温存と全身術後補助療法:長期の化学放射線療法と短期の放射線療法の比較研究

アブストラクト全文はこちら(アブストラクトは1月21日(土)午前7時(太平洋時間)に開始するセッションの一部で発表)
「短期の放射線治療により臓器(括約筋)温存の可能性が低下することが今回の後ろ向き解析で示唆されています。このような結果は検証する必要があり、現在、欧州で前向き第3相試験が実施されています」-Cathy Eng医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー、ASCOの消化器がんエキスパート)

アブストラクト4:難治性転移大腸がんの三次治療で採用するトリフルリジンとチピラシルにベバシズマブを併用する療法:第3相ランダム化SUNLIGHT試験
アブストラクトの全文はこちら(アブストラクトは1月21日(土)午前11時(太平洋時間)に開始するセッションの一部で発表)
「SUNLIGHT試験において、トリフルリジンとチピラシルをベバシズマブで併用する療法により全生存期間中央値が3.3カ月改善しました。年齢、性別、原発疾患の部位、転移箇所の数、RAS変異状態に関わりなく、すべてのサブグループで生存期間の延長が認められました。今回の試験は、難治性転移大腸がん患者の既存の積極的治療に関する有効性の向上を示した最初の試験の一つです。さらに、確認した有効性は他の試験で確認したものよりも大きく、またRAS変異などの予後不良因子を有する患者を含む集団でも有効性は大きいことが確認されました」と試験の筆頭著者であるJosep Tabernero医学博士は語る。

「事前に一次~二次の化学療法を受けた欧州の患者を対象とした今回のランダム化第3相試験は、トリフルリジンとチピラシルの単独療法と比較してトリフルリジンとチピラシルにベバシズマブを併用する治療により全生存期間が改善したことを示す以前実施されたデンマークの第2相試験データを確証するものです」-Cathy Eng医師、FACP、FASCO、ASCO消化器がんの専門家

アブストラクト5:ステージ1〜3の大腸がん切除患者の術後循環無細胞DNAの動態と微小残存病変検出率への影響
アブストラクトの全文はこちら(アブストラクトは1月21日(土)午前11時(太平洋時間)に開始するセッションの一部で発表)
「われわれの解析では、原因となるcfDNA濃度にかかわらず術後3週目(15日目以降)から確実にctDNAの評価が可能です。ctDNAが陽性の場合、無再発生存率が低いことと高い相関があります。医学的な意思決定にctDNAを含めようと努める患者にctDNAの早期検査が可能であることをこの試験結果は示唆しています。早期検査により結果が出るまでの時間を短縮することでctDNA検査の実現性を高めることができる可能性があります」と試験の筆頭著者のStacey A. Cohen医師は語る。


  • 監修 加藤 恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
  • 翻訳担当者 松長 愛美
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  • 原文掲載日 2023/01/21

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